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128.受け継がれた歌
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何かあるはず
そう思いながら、だとすればどこに突破口があるのかと考える
この世界に来て手に入れたもの
ミルトゥのカギという称号、ラ・ミルトゥと言う名…
統率は何となくわかったけど元から持っていながら謎のままのスキル
「覇王…」
覇王は徳によらず武力や策略で諸侯を従えて天下を治める人のこと
ロキたちの力を武力としてもそれで解決することはきっとできない
この場で使えるのは私の声と歌
策略と呼べるかは疑問だけど、それでこの迷宮内を統べることができたとしたら…?
そもそもスキルの名前なんてアバウトなものが多いんだもの
明確な解があるとも思えない
「そうよ…歌…」
声だけなら歌でなくてもいいはずなのだ
実際一部の魔物は声だけで癒されると言っていた
でも歌えと伝えられてきた
ならばその歌に何かあるはず…
私は歌いながら初めて歌詞を読み解こうとした
中々覚えられず、すぐに間違う私に母は何度も言っていた
歌詞の意味を理解すれば間違うはずなんてないのにと
何としても覚えさそうとしたのには理由があるはずだとようやく気付いたからだ
『さらなる悲劇を生まぬためにこの歌をささげる』
『理解を示すものには救いが訪れるだろう』
『神に歪められしものを、あるべきすがたにもどせ』
『逆らえぬ弱き者を救うために歌う』
歌詞の一節一節を少しずつ読み解いていくとそんな感じの言葉が並んでいた
あぁ、この歌はこんな歌だったのかと初めて理解する
「だからイモーテルは鎮魂歌といったのね」
イモーテルのおかげで正しく読み解けた歌はまさしく鎮魂歌だった
母の言った通り、歌詞を理解すれば間違えようもないものでもあった
「くそっ…!」
何人かが既に傷を負い倒れこんでいた
命は有る者の重症の者もいる
もう時間は残されていない
この龍種を押さえられなければそれに従う魔物が共に迷宮から飛び出してしまう
でも防戦し続ける事さえ支障が出て来てる
倒すなんてとても無理なことだと誰もが理解していた
「お願い…」
私は生まれて初めて歌に心を乗せた
「え…?」
最初に気付いたのはイモーテルだった
そのとまどいの声に続くように周りの者だけでなく魔物まで動きを止めていく
私は目の前の魔物も含めてこの町を、世界を守りたい
その想いを込めて歌い切った
『…我はそなたに従おう』
全てが動きを止めた静寂を破ったのは龍種の魔物だった
『穴は塞がった。もう神が手を出すことは出来ない。我らへの強制力はそなたの歌が立ちきった。そなたは何を望む?』
穴が塞がった…?
その言葉に私たちは本当にミルトゥとは切り離されたのだと理解する
でも不思議と穏やかな気持ちでそれを受け容れていた
「私は…穏やかな日常を過ごしたい。迷宮は迷宮として存在して、私たちはこれまで通りの日々を送りたい。スタンピードで大切な人を無くすなんてこともあって欲しくない」
『従おう』
「え…?」
『我は迷宮核として最深層に戻る。数日で他の魔物も元の層に戻るだろう』
迷宮核?あの龍種が?
この人数で防戦もままならないのに踏破できる人いる?
何故か遠ざかっていく意識の中で、私そんな的外れなことを考えていた
そう思いながら、だとすればどこに突破口があるのかと考える
この世界に来て手に入れたもの
ミルトゥのカギという称号、ラ・ミルトゥと言う名…
統率は何となくわかったけど元から持っていながら謎のままのスキル
「覇王…」
覇王は徳によらず武力や策略で諸侯を従えて天下を治める人のこと
ロキたちの力を武力としてもそれで解決することはきっとできない
この場で使えるのは私の声と歌
策略と呼べるかは疑問だけど、それでこの迷宮内を統べることができたとしたら…?
そもそもスキルの名前なんてアバウトなものが多いんだもの
明確な解があるとも思えない
「そうよ…歌…」
声だけなら歌でなくてもいいはずなのだ
実際一部の魔物は声だけで癒されると言っていた
でも歌えと伝えられてきた
ならばその歌に何かあるはず…
私は歌いながら初めて歌詞を読み解こうとした
中々覚えられず、すぐに間違う私に母は何度も言っていた
歌詞の意味を理解すれば間違うはずなんてないのにと
何としても覚えさそうとしたのには理由があるはずだとようやく気付いたからだ
『さらなる悲劇を生まぬためにこの歌をささげる』
『理解を示すものには救いが訪れるだろう』
『神に歪められしものを、あるべきすがたにもどせ』
『逆らえぬ弱き者を救うために歌う』
歌詞の一節一節を少しずつ読み解いていくとそんな感じの言葉が並んでいた
あぁ、この歌はこんな歌だったのかと初めて理解する
「だからイモーテルは鎮魂歌といったのね」
イモーテルのおかげで正しく読み解けた歌はまさしく鎮魂歌だった
母の言った通り、歌詞を理解すれば間違えようもないものでもあった
「くそっ…!」
何人かが既に傷を負い倒れこんでいた
命は有る者の重症の者もいる
もう時間は残されていない
この龍種を押さえられなければそれに従う魔物が共に迷宮から飛び出してしまう
でも防戦し続ける事さえ支障が出て来てる
倒すなんてとても無理なことだと誰もが理解していた
「お願い…」
私は生まれて初めて歌に心を乗せた
「え…?」
最初に気付いたのはイモーテルだった
そのとまどいの声に続くように周りの者だけでなく魔物まで動きを止めていく
私は目の前の魔物も含めてこの町を、世界を守りたい
その想いを込めて歌い切った
『…我はそなたに従おう』
全てが動きを止めた静寂を破ったのは龍種の魔物だった
『穴は塞がった。もう神が手を出すことは出来ない。我らへの強制力はそなたの歌が立ちきった。そなたは何を望む?』
穴が塞がった…?
その言葉に私たちは本当にミルトゥとは切り離されたのだと理解する
でも不思議と穏やかな気持ちでそれを受け容れていた
「私は…穏やかな日常を過ごしたい。迷宮は迷宮として存在して、私たちはこれまで通りの日々を送りたい。スタンピードで大切な人を無くすなんてこともあって欲しくない」
『従おう』
「え…?」
『我は迷宮核として最深層に戻る。数日で他の魔物も元の層に戻るだろう』
迷宮核?あの龍種が?
この人数で防戦もままならないのに踏破できる人いる?
何故か遠ざかっていく意識の中で、私そんな的外れなことを考えていた
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