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120.体験してみた
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「この国の魔道具師は私達を含めて5人しかいないわ。その中の1人は年内に引退を決めてるの」
「…」
「4人…私たちは2人で1人前だから実質は3人かしらね。その中で弟子を取ってるのは1人だけ。一番年配の男性だけよ」
「あと2人の男性も私達より高齢だからいつまで続けられるかは分からない」
それはつまり、高齢の4人も引退してしまえば1人になってしまうということだ
「私たちは手紙でやり取りをしてるんだけどね、希望する者がいるならその技術を伝えて行ってもいいんじゃないかって話になってるのよ」
「でも…」
「特別な技術だけど秘匿すべきほどのものじゃないわ。それよりも魔道具を作れる人がいなくなる方が問題だと私達も思ってるの」
たしかになくなってしまったらとても困る
「私達2人は他の3人に比べて若い分動くことも出来るからね。だから色々挑戦してみようと思ってるのよ」
「その第一歩として、オリビエの料理教室のような魔道具教室を考えてるの」
「魔道具教室…」
それはとても魅力的だ
「オリビエ、ニヤケすぎだ」
すかさずロキから指摘された…
「オリビエなら料理に活かせるものも作れるんじゃないかと思うのよ?」
「!」
私は思わず立ち上がっていた
「ふふ…決まりみたいね」
リリーが笑いながら言う
「ウーとブラシュも参加するよ」
「…じゃぁ私も参加させてもらうわ」
「俺も」
ロキも興味があるようだ
「私もお願いしようかしらね」
カメリアも立ち上がる
こうして魔道具作りを体験することが決まった
「遅いよ!オリビエ」
庭に回るとウーとブラシュが既にスタンバっていた
「何か私が参加するの当然って聞こえたのは気のせいかしら?」
「間違ってないだろ?」
「まぁ…間違ってはいないけど」
「じゃぁいいじゃん」
ケラケラと笑いながら言うウーに苦笑しながら、私たちはリリーたちの作業場に入った
「まず、実際に作る前に注意事項からね」
レキシーがそう言うと一気に静まり返る
皆で耳を傾け、私はメモを取る
難しい話も多いのになぜかリラが理解しているのが不思議でならない
「…ねぇレキシー」
「なにかしら?」
「小難しい話も多いのにリラが理解してるのはなぜ?」
「あぁ…」
レキシーは苦笑する
「リラには前から物語として聞かせていたからよ」
「物語?」
「ええ。例えば…風の魔力を赤い魔石に流したら…」
「風は緑だからお家が吹っ飛ぶ!」
リラが得意げに言う
「その通りよリラ。だからどうするんだっけ?」
「魔石の色と魔力の色をちゃんと見る!」
「よくできました」
その言葉にリラがふにゃりと笑う
このくだりを私達に向けた言葉では“魔石と魔力の属性に相違があると反発が起こるため危険”となる
魔力の色というのは基本的には存在しない
でも属性により色で表現することは多い
水は青、火は赤、風は緑…と言った具合で、その色は魔石の属性と一致しているのは暗黙の了解ともいえる
リラに教えたのは同じ色ならOK、違う色はNGと言うごく単純なことだけど、“家が吹っ飛ぶ”という強烈な印象で危険なのだと認識させているということだ
「中々面白い教え方だな」
「本当にね。でもリラが理解できるってことは誰にでも可能性があるってことよね?」
「…次は何を考えてる?」
「被害にあった女性たちの新しい仕事に出来ないかなって」
「は?」
「何となくだけど、男性に頼るのは怖いんじゃないかなって」
「…」
「彼女たちが自分の仕事を持って、それを元に自立できるなら自信につながるんじゃないかなって」
思い浮かべたのは新しい町に住む女性たち
特に犯罪に巻き込まれた被害者の立場である女性たちは、簡単に他人を信用するなんてできないはずだから
「もちろんレキシーとリリーの判断にもよるんだけどね」
これは私達だけで決めていいことではない
誰かが強制されるようではだめだものね
「ま、様子を見ながら…だな」
「うん」
頷き再びレキシーの話に耳を傾けた
「…」
「4人…私たちは2人で1人前だから実質は3人かしらね。その中で弟子を取ってるのは1人だけ。一番年配の男性だけよ」
「あと2人の男性も私達より高齢だからいつまで続けられるかは分からない」
それはつまり、高齢の4人も引退してしまえば1人になってしまうということだ
「私たちは手紙でやり取りをしてるんだけどね、希望する者がいるならその技術を伝えて行ってもいいんじゃないかって話になってるのよ」
「でも…」
「特別な技術だけど秘匿すべきほどのものじゃないわ。それよりも魔道具を作れる人がいなくなる方が問題だと私達も思ってるの」
たしかになくなってしまったらとても困る
「私達2人は他の3人に比べて若い分動くことも出来るからね。だから色々挑戦してみようと思ってるのよ」
「その第一歩として、オリビエの料理教室のような魔道具教室を考えてるの」
「魔道具教室…」
それはとても魅力的だ
「オリビエ、ニヤケすぎだ」
すかさずロキから指摘された…
「オリビエなら料理に活かせるものも作れるんじゃないかと思うのよ?」
「!」
私は思わず立ち上がっていた
「ふふ…決まりみたいね」
リリーが笑いながら言う
「ウーとブラシュも参加するよ」
「…じゃぁ私も参加させてもらうわ」
「俺も」
ロキも興味があるようだ
「私もお願いしようかしらね」
カメリアも立ち上がる
こうして魔道具作りを体験することが決まった
「遅いよ!オリビエ」
庭に回るとウーとブラシュが既にスタンバっていた
「何か私が参加するの当然って聞こえたのは気のせいかしら?」
「間違ってないだろ?」
「まぁ…間違ってはいないけど」
「じゃぁいいじゃん」
ケラケラと笑いながら言うウーに苦笑しながら、私たちはリリーたちの作業場に入った
「まず、実際に作る前に注意事項からね」
レキシーがそう言うと一気に静まり返る
皆で耳を傾け、私はメモを取る
難しい話も多いのになぜかリラが理解しているのが不思議でならない
「…ねぇレキシー」
「なにかしら?」
「小難しい話も多いのにリラが理解してるのはなぜ?」
「あぁ…」
レキシーは苦笑する
「リラには前から物語として聞かせていたからよ」
「物語?」
「ええ。例えば…風の魔力を赤い魔石に流したら…」
「風は緑だからお家が吹っ飛ぶ!」
リラが得意げに言う
「その通りよリラ。だからどうするんだっけ?」
「魔石の色と魔力の色をちゃんと見る!」
「よくできました」
その言葉にリラがふにゃりと笑う
このくだりを私達に向けた言葉では“魔石と魔力の属性に相違があると反発が起こるため危険”となる
魔力の色というのは基本的には存在しない
でも属性により色で表現することは多い
水は青、火は赤、風は緑…と言った具合で、その色は魔石の属性と一致しているのは暗黙の了解ともいえる
リラに教えたのは同じ色ならOK、違う色はNGと言うごく単純なことだけど、“家が吹っ飛ぶ”という強烈な印象で危険なのだと認識させているということだ
「中々面白い教え方だな」
「本当にね。でもリラが理解できるってことは誰にでも可能性があるってことよね?」
「…次は何を考えてる?」
「被害にあった女性たちの新しい仕事に出来ないかなって」
「は?」
「何となくだけど、男性に頼るのは怖いんじゃないかなって」
「…」
「彼女たちが自分の仕事を持って、それを元に自立できるなら自信につながるんじゃないかなって」
思い浮かべたのは新しい町に住む女性たち
特に犯罪に巻き込まれた被害者の立場である女性たちは、簡単に他人を信用するなんてできないはずだから
「もちろんレキシーとリリーの判断にもよるんだけどね」
これは私達だけで決めていいことではない
誰かが強制されるようではだめだものね
「ま、様子を見ながら…だな」
「うん」
頷き再びレキシーの話に耳を傾けた
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