290 / 317
113.消えた国
1
しおりを挟む
処遇の決まった翌日、魔術師団と騎士団は総動員で術を施すことになった
「お前たちは先にソンシティヴュに行ってくれ。これが対象者のリストだ」
スキットは紙の束を渡す
「念のため騎士と2人1組で動くように。もし抵抗を見せるなら騎士が抑えつけても構わん」
「施すのは逃走防止と反攻防止だけでよろしいので?」
「ブロンズとシルバーはそれでいい。ゴールドと元王族はそれに加えて後頭部にチップを埋め込む」
「承知しました」
「我々もこっちが済み次第合流する。頼んだぞ」
ソルトが集まっている者たちに向かって言うと皆が動き出す
普段からグループを組んで行動している為組む相手も自然と決まる
準備が出来た者から魔術師の転移で去っていった
「さて、こっちも始めよう」
「と言ってもこっちにいるのは当主の10人とナルシスだけだがな」
「そう言えば騎士は全てノルマをクリアしたんだったか」
「ああ。クリアした時点で取り込んでない者は壁の中に送り返した」
「討伐させられた上に土木作業を課せられるとは哀れだな」
「与えられたチャンスを生かせなかったのは本人の自己責任だろ」
「確かに」
ソルトとスキットはニヤリと笑う
実際チャンスを生かしてカクテュスの騎士になった者がいる以上、彼らに言い訳は出来ないのだ
「術を施せば今日の内に向こうに運ぶんだったな?」
「そうだ。各国の要人たちは王族が一気に転移させてくれるらしい」
「王族総出か?」
「いや、先代は残るそうだ。流石にここを手薄には出来んからな」
「なるほど。まぁ先代がいるなら問題ないか」
ソルトは納得したように頷く
先代とは言えまだまだ現役の実力を持っているのだ
ナルシスへのチップの埋め込みは3国の王が立ち会う中で行われた
拘束されて身動きが取れない中、喚き続けるナルシスを3人の王は蔑んだ目で見ていた
***
その日フジェでは屋台広場に巨大な映像が映し出されていた
私達もカフェを臨時休業して屋台広場に出てきた
「何があるの?」
コルザが不思議そうに尋ねる
「私たちの元いた国が無くなるのよ」
「元いた国?」
「そう。スタンピードが起きても何もしてくれなかった王様のいた国よ」
カメリアは少し悩んでからそう答えた
「そんな国ならいらないや。だって今の王様はちゃんと助けてくれるもん」
ナルシスたちが攻めてきたときの対応の早さは、子供達にもきちんと説明されていた
怪我人も、潰れた家も、いち早く対応して貰えたことに、大人たちはモーヴの事を讃え、感謝の念を口にし続けていた
詳しい説明など無くても子供たち自身がこれまでと違うのだと容易に理解した
映像の中では1か所に固められた王族と称号持ち達の前で、これ迄の非道な行いと、これからの処遇が淡々と告げられている
映像の中からの悲鳴や落胆とは対照的に、広場からは歓声と怒声が上がる
そして…
すさまじい轟音と土煙と共に王都を囲っていた塀が崩壊し、圧縮された空気弾
側にいた元特攻のセルトが呟いていた
この日、フーシアという世界から、ソンシティヴュという国が消えた
「お前たちは先にソンシティヴュに行ってくれ。これが対象者のリストだ」
スキットは紙の束を渡す
「念のため騎士と2人1組で動くように。もし抵抗を見せるなら騎士が抑えつけても構わん」
「施すのは逃走防止と反攻防止だけでよろしいので?」
「ブロンズとシルバーはそれでいい。ゴールドと元王族はそれに加えて後頭部にチップを埋め込む」
「承知しました」
「我々もこっちが済み次第合流する。頼んだぞ」
ソルトが集まっている者たちに向かって言うと皆が動き出す
普段からグループを組んで行動している為組む相手も自然と決まる
準備が出来た者から魔術師の転移で去っていった
「さて、こっちも始めよう」
「と言ってもこっちにいるのは当主の10人とナルシスだけだがな」
「そう言えば騎士は全てノルマをクリアしたんだったか」
「ああ。クリアした時点で取り込んでない者は壁の中に送り返した」
「討伐させられた上に土木作業を課せられるとは哀れだな」
「与えられたチャンスを生かせなかったのは本人の自己責任だろ」
「確かに」
ソルトとスキットはニヤリと笑う
実際チャンスを生かしてカクテュスの騎士になった者がいる以上、彼らに言い訳は出来ないのだ
「術を施せば今日の内に向こうに運ぶんだったな?」
「そうだ。各国の要人たちは王族が一気に転移させてくれるらしい」
「王族総出か?」
「いや、先代は残るそうだ。流石にここを手薄には出来んからな」
「なるほど。まぁ先代がいるなら問題ないか」
ソルトは納得したように頷く
先代とは言えまだまだ現役の実力を持っているのだ
ナルシスへのチップの埋め込みは3国の王が立ち会う中で行われた
拘束されて身動きが取れない中、喚き続けるナルシスを3人の王は蔑んだ目で見ていた
***
その日フジェでは屋台広場に巨大な映像が映し出されていた
私達もカフェを臨時休業して屋台広場に出てきた
「何があるの?」
コルザが不思議そうに尋ねる
「私たちの元いた国が無くなるのよ」
「元いた国?」
「そう。スタンピードが起きても何もしてくれなかった王様のいた国よ」
カメリアは少し悩んでからそう答えた
「そんな国ならいらないや。だって今の王様はちゃんと助けてくれるもん」
ナルシスたちが攻めてきたときの対応の早さは、子供達にもきちんと説明されていた
怪我人も、潰れた家も、いち早く対応して貰えたことに、大人たちはモーヴの事を讃え、感謝の念を口にし続けていた
詳しい説明など無くても子供たち自身がこれまでと違うのだと容易に理解した
映像の中では1か所に固められた王族と称号持ち達の前で、これ迄の非道な行いと、これからの処遇が淡々と告げられている
映像の中からの悲鳴や落胆とは対照的に、広場からは歓声と怒声が上がる
そして…
すさまじい轟音と土煙と共に王都を囲っていた塀が崩壊し、圧縮された空気弾
側にいた元特攻のセルトが呟いていた
この日、フーシアという世界から、ソンシティヴュという国が消えた
32
お気に入りに追加
595
あなたにおすすめの小説
捨てた騎士と拾った魔術師
吉野屋
恋愛
貴族の庶子であるミリアムは、前世持ちである。冷遇されていたが政略でおっさん貴族の後妻落ちになる事を懸念して逃げ出した。実家では隠していたが、魔力にギフトと生活能力はあるので、王都に行き暮らす。優しくて美しい夫も出来て幸せな生活をしていたが、夫の兄の死で伯爵家を継いだ夫に捨てられてしまう。その後、王都に来る前に出会った男(その時は鳥だった)に再会して国を左右する陰謀に巻き込まれていく。
[完結]異世界転生したら幼女になったが 速攻で村を追い出された件について ~そしていずれ最強になる幼女~
k33
ファンタジー
初めての小説です..!
ある日 主人公 マサヤがトラックに引かれ幼女で異世界転生するのだが その先には 転生者は嫌われていると知る そして別の転生者と出会い この世界はゲームの世界と知る そして、そこから 魔法専門学校に入り Aまで目指すが 果たして上がれるのか!? そして 魔王城には立ち寄った者は一人もいないと別の転生者は言うが 果たして マサヤは 魔王城に入り 魔王を倒し無事に日本に帰れるのか!?
暁にもう一度
伊簑木サイ
ファンタジー
成り上がり貧乏辺境領主の後継者ソランは、金策のため、「第二王子を王太子になるよう説得できた者に望みの褒美をとらす」という王の頼みごとを引き受けた。
ところが、王子は女嫌いということで、女とばれないよう、性別を隠して仕えることになる。
ソランと、国のために死に場所を探している王子の、「死なせない」と「巻き込みたくない」から始まった主従愛は、いつしか絶対に失いたくない相手へと変わっていく。
けれど、絆を深めるほどに、古に世界に掛けられた呪いに、前世の二人が関わっていたと判明していき……。
『暁に、もう一度、あなたと』。数千年を越えて果たされる、愛と祈りの物語。
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

無能だとクビになったメイドですが、今は王宮で筆頭メイドをしています
如月ぐるぐる
恋愛
「お前の様な役立たずは首だ! さっさと出て行け!」
何年も仕えていた男爵家を追い出され、途方に暮れるシルヴィア。
しかし街の人々はシルビアを優しく受け入れ、宿屋で住み込みで働く事になる。
様々な理由により職を転々とするが、ある日、男爵家は爵位剥奪となり、近隣の子爵家の代理人が統治する事になる。
この地域に詳しく、元男爵家に仕えていた事もあり、代理人がシルヴィアに協力を求めて来たのだが……
男爵メイドから王宮筆頭メイドになるシルビアの物語が、今始まった。
無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから――
※ 他サイトでも投稿中

俺のスキルが回復魔『法』じゃなくて、回復魔『王』なんですけど?
八神 凪
ファンタジー
ある日、バイト帰りに熱血アニソンを熱唱しながら赤信号を渡り、案の定あっけなくダンプに轢かれて死んだ
『壽命 懸(じゅみょう かける)』
しかし例によって、彼の求める異世界への扉を開くことになる。
だが、女神アウロラの陰謀(という名の嫌がらせ)により、異端な「回復魔王」となって……。
異世界ペンデュース。そこで彼を待ち受ける運命とは?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる