[完結]召喚に巻き込まれたけど元の世界に戻れないのでこの世界を楽しもうと思います

真那月 凜

文字の大きさ
上 下
279 / 317
108.アントの到着

1

しおりを挟む
「オリビエお客さん」
時間はまだ朝の8時
この時間から訪ねて来る知り合いはいないはずだけど…
そう思いながらもエントランスに向かう

「えっと…どちら様?」
そこに立っていた青年を見てもさっぱりわからない

「すみません。俺はアント・スキャンと言います。ジルコット医局長に手紙を貰って…」
「ジルコットに…?」
そう言えば一緒に働いてた人の名前がアントだったかしら
でもジルコットからは手紙を出した後のことは何も聞いてないんだけど

「実はすぐに返事を出そうと思ったんですけど、届けてくれた方がそのまま向かっても構わないと言ってくださったので…すみません。突然押しかけたら迷惑でしたよね…」
本当に申し訳なさそうにアントは頭を下げた

「そう言うわけじゃないの。ちょっと驚いただけだから気にしないで?」
「でも…」
「とにかく上がって?」
アントを促して応接室に通した

「ジルコットを呼んでくるのでかけてお待ちくださいね」
「あ、ありがとうございます」
戸惑いながらもソファにかけてくれたのを見てからジルコットを呼びに向かう

「あ、ロキ」
「どうした?」
「アントが来てるの」
「アント?あぁ、ジルコットが呼ぼうとしてた医師か?来たってここに?」
久々にロキの驚く顔を見た気がする

「手紙を届けた人が直接向かっても構わないって言ったそうなの。私はジルコット呼んでくるからフロックス呼んできてもらっていい?多分庭にいると思うんだけど」
「分かった。応接室でいいのか?」
「うん」
頷いて私は階段を駆け上がる

「ジルコット起きてる?」
ノックして尋ねるとすぐに扉が開いた

「朝から珍しいな?何かあったか?」
「おはよう。実はアントが来てるんだけど」
「アントが?」
「手紙を見てそのままこっちに来てくれたみたい。直接こっちに向かってもいいって言われたからって言ってたわ」
「それは有り難い」
ジルコットは嬉しそうに笑って言うと応接室に向かう
その間にロキがフロックスを呼びに行ったことも伝えておいた

「アント!久しぶりだな」
ノックしてドアを開けるなりジルコットはそう言った

「医局長!すみません。返事を出す前に来てしまって…」
「構わんさ。来てくれたということは引き受けてくれるということでいいのか?」
「俺で良ければぜひお願いしたいです。正直これからどうしようかと思ってたので」
苦笑しながらアントは言った

「亡命して、最低限の衣食住は確保できてはいたんですけど…」
「人数が人数だからな。受け入れる3国の方も体制を整えるのに必死だ」
ロキとフロックスが入ってきた

「クロキュス様!?それにフロックス様まで…?」
目をこれでもかと言うほど見開いていた
ここまで驚くとちょっとかわいそうになってしまうわね?

「様は不要だ。あの国の称号など今はもうゴミ以下だからな」
「しかし…」
「アント、本人が望んでるんだ。その希望に沿うのも礼儀だと思うぞ?」
「…わかりました。でも流石に呼び捨ては出来そうにないのでさん付けでもいいですか?」
2人は苦笑しながら頷いた

「まぁとにかくだ、体制を整えるのにもうしばらくかかるだろう。ただ、同時にアントのような技術職を洗い出してるところだ」
「技術職を?」
「経験者には仕事の対価として支援した方がいいだろ?」
「それは勿論です!できる事があるはずなのに施されるだけというのは、やはり心苦しいですし…」
その言葉にロキを見ると頷いて返される

「周りにも同じような考えの人が結構いて毎日頭を悩ませてました。でもそんな動きがあるならよかった」
「今すぐどうこうってのは難しいけどな」
「それは仕方ないですよ。1国の人間が単純に1/3ずつ流れてるんですから…それに衣食住の心配をせずに済むのは本当にありがたいですし」
「その日の食事もままならない者も多かったからな。そう言う意味ではソンシティヴュは滅んでよかったと言うべきか」
ジルコットがしみじみと言う

「これからお互いの意見をすり合わせながら、新しい体制を作って行けばいいのよね」
「そうだな」
ロキが優しい眼差しを向けて同意したのをアントが驚いたように見ていた

「クロキュスのデレた姿に驚いとるぞ?」
「…」
ジルコットの言葉にロキが顔を反らした

しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。

アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。 両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。 両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。 テッドには、妹が3人いる。 両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。 このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。 そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。 その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。 両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。 両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…   両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが… 母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。 今日も依頼をこなして、家に帰るんだ! この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。 お楽しみくださいね! HOTランキング20位になりました。 皆さん、有り難う御座います。

完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-

ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。 自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。 28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。 安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。 いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して! この世界は無い物ばかり。 現代知識を使い生産チートを目指します。 ※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

【完結】神スキル拡大解釈で底辺パーティから成り上がります!

まにゅまにゅ
ファンタジー
平均レベルの低い底辺パーティ『龍炎光牙《りゅうえんこうが》』はオーク一匹倒すのにも命懸けで注目もされていないどこにでもでもいる冒険者たちのチームだった。 そんなある日ようやく資金も貯まり、神殿でお金を払って恩恵《ギフト》を授かるとその恩恵《ギフト》スキルは『拡大解釈』というもの。 その効果は魔法やスキルの内容を拡大解釈し、別の効果を引き起こせる、という神スキルだった。その拡大解釈により色んなものを回復《ヒール》で治したり強化《ブースト》で獲得経験値を増やしたりととんでもない効果を発揮する! 底辺パーティ『龍炎光牙』の大躍進が始まる! 第16回ファンタジー大賞奨励賞受賞作です。

【完結】ポーションが不味すぎるので、美味しいポーションを作ったら

七鳳
ファンタジー
※毎日8時と18時に更新中! ※いいねやお気に入り登録して頂けると励みになります! 気付いたら異世界に転生していた主人公。 赤ん坊から15歳まで成長する中で、異世界の常識を学んでいくが、その中で気付いたことがひとつ。 「ポーションが不味すぎる」 必需品だが、みんなが嫌な顔をして買っていく姿を見て、「美味しいポーションを作ったらバカ売れするのでは?」 と考え、試行錯誤をしていく…

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します

怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。 本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。 彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。 世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。 喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

老女召喚〜聖女はまさかの80歳?!〜城を追い出されちゃったけど、何か若返ってるし、元気に異世界で生き抜きます!〜

二階堂吉乃
ファンタジー
 瘴気に脅かされる王国があった。それを祓うことが出来るのは異世界人の乙女だけ。王国の幹部は伝説の『聖女召喚』の儀を行う。だが現れたのは1人の老婆だった。「召喚は失敗だ!」聖女を娶るつもりだった王子は激怒した。そこら辺の平民だと思われた老女は金貨1枚を与えられると、城から追い出されてしまう。実はこの老婆こそが召喚された女性だった。  白石きよ子・80歳。寝ていた布団の中から異世界に連れてこられてしまった。始めは「ドッキリじゃないかしら」と疑っていた。頼れる知り合いも家族もいない。持病の関節痛と高血圧の薬もない。しかし生来の逞しさで異世界で生き抜いていく。  後日、召喚が成功していたと分かる。王や重臣たちは慌てて老女の行方を探し始めるが、一向に見つからない。それもそのはず、きよ子はどんどん若返っていた。行方不明の老聖女を探す副団長は、黒髪黒目の不思議な美女と出会うが…。  人の名前が何故か映画スターの名になっちゃう天然系若返り聖女の冒険。全14話+間話8話。

処理中です...