267 / 317
100.応急処置
2
しおりを挟む
「どういうことだ?」
「魔物と対峙する者と町中で生活する者では必要になる処置が別だろ。前者は止血や部位の固定がメインになる。街中では子供と老人でも必要な処置は変わってくる」
言われてみればごもっともなことだった
「ギルドの講習は騎士用の内容を易しくしたので問題ない。街中のものに関しては定期的に対象を絞って講習すればいいだろう。必要なら協力しよう」
「本当か?」
「ああ。私の望みは少しでも多くの命を救うことだ。その為には医師が頑張るだけでは間に合わん」
「そのための努力ならいくらでもするってことか?物好きな」
「お前たちに言われたくない。どうせ自警団も主導で動いてるんだろう?」
簡単に言い返されたダビアは笑い出す
「僕も教えて?」
「ん?応急処置か?」
伺う様に見上げたコルザに尋ね返す
「うん。遊んでる時よくケガするから」
「はは…そうか。なら怪我した時にその都度教えてやろうな」
「やった。約束だよ?」
満足げに頷くコルザをみんなが微笑みながら見ていた
「とにかく、この町に医師が増員出来たことも、この屋敷に人が増えたことも喜ばしいってことだよな」
「贅沢いうならもう一人いてくれた方がいい気はするがな」
「確かにどちらかがダウンしたら今までと変わらないってのは困るものね。その辺はタマリも納得してくれると思う」
「そうだな。ジルコットに当てがあるなら呼び寄せてもらってもいいんじゃないか?変に募集するより信用できるだろうし」
「そういえば感染症事件の時ジルコットの部下が2人いたよな?彼らはどうしたんだ?」
フロックスは側に控えていた青年たちを思い出す
「ああ、1人は家族とブロンシュに移った。母親がブロンシュ出身らしくてその伝手を辿るそうだ」
称号なし、平民の3国間の婚姻はよくあるという
特に国境沿いの町では出入りが激しいため割合も多くなる
実際その青年も国境沿いの町出身だった
「もう1人、アントは身寄りがないからカクテュスまでは一緒に行ったんだが亡命者のいる町で別れた。その後どうしてるかまでは分からんな」
「アント・スキャンか。カクテュスにいるならすぐに調べられる。候補として一度話を出してみよう」
「は?」
ロキの言葉にジルコットが呆然とする
「あ~ジルコット、クロキュスはこう見えてカクテュスの王族だったりするんだ。継承権は破棄してるらしいがな」
ダビアが苦笑しながらそう言った
「王族?ではオリビアも…確かシュロもクロキュスの…」
「身分の事は忘れてくれ。ここにいる上で俺は王族の身分を表に出すつもりは一切ないから。ただ、フジェの町と召喚されたオリビエに関する権限だけを貰ってるに過ぎないんだ」
「しかし…」
「ふふ…今更改まってしゃべられても困るわ」
「それはそうかもしれんが…」
ジルコットは困ったように顔を歪めた
「オリビエはオリビエだよ?」
コルザがそう言ってにっこり笑う
「あぁ、そうか。確かにそうだな。そう望まれるなら身分の事は忘れるよう努力しよう」
「そうしてくれると嬉しいわ」
「むしろそうしてくれる方がいい」
「そうそう。俺もただの冒険者だしね」
私たちがそう言うとジルコットも肩の力が抜けたのか表情を緩めた
「ジルコットにはアントに手紙を書いてもらいたい。その方が話が早そうだ」
「承知した。彼のこれからの事は気になっていたからありがたい」
「亡命者の今後の事に関しては3国とも考えることが山ほどある。働く場があるなら積極的に斡旋するのは当然だ」
「確かにそうよね。彼らにしてもその方が安心できるだろうし」
“亡命者=養われるだけの人”のままでは肩身も狭いだろう
ジルコットの手紙はシャドウを通じてアントに届けてもらう手はずを整えた
「魔物と対峙する者と町中で生活する者では必要になる処置が別だろ。前者は止血や部位の固定がメインになる。街中では子供と老人でも必要な処置は変わってくる」
言われてみればごもっともなことだった
「ギルドの講習は騎士用の内容を易しくしたので問題ない。街中のものに関しては定期的に対象を絞って講習すればいいだろう。必要なら協力しよう」
「本当か?」
「ああ。私の望みは少しでも多くの命を救うことだ。その為には医師が頑張るだけでは間に合わん」
「そのための努力ならいくらでもするってことか?物好きな」
「お前たちに言われたくない。どうせ自警団も主導で動いてるんだろう?」
簡単に言い返されたダビアは笑い出す
「僕も教えて?」
「ん?応急処置か?」
伺う様に見上げたコルザに尋ね返す
「うん。遊んでる時よくケガするから」
「はは…そうか。なら怪我した時にその都度教えてやろうな」
「やった。約束だよ?」
満足げに頷くコルザをみんなが微笑みながら見ていた
「とにかく、この町に医師が増員出来たことも、この屋敷に人が増えたことも喜ばしいってことだよな」
「贅沢いうならもう一人いてくれた方がいい気はするがな」
「確かにどちらかがダウンしたら今までと変わらないってのは困るものね。その辺はタマリも納得してくれると思う」
「そうだな。ジルコットに当てがあるなら呼び寄せてもらってもいいんじゃないか?変に募集するより信用できるだろうし」
「そういえば感染症事件の時ジルコットの部下が2人いたよな?彼らはどうしたんだ?」
フロックスは側に控えていた青年たちを思い出す
「ああ、1人は家族とブロンシュに移った。母親がブロンシュ出身らしくてその伝手を辿るそうだ」
称号なし、平民の3国間の婚姻はよくあるという
特に国境沿いの町では出入りが激しいため割合も多くなる
実際その青年も国境沿いの町出身だった
「もう1人、アントは身寄りがないからカクテュスまでは一緒に行ったんだが亡命者のいる町で別れた。その後どうしてるかまでは分からんな」
「アント・スキャンか。カクテュスにいるならすぐに調べられる。候補として一度話を出してみよう」
「は?」
ロキの言葉にジルコットが呆然とする
「あ~ジルコット、クロキュスはこう見えてカクテュスの王族だったりするんだ。継承権は破棄してるらしいがな」
ダビアが苦笑しながらそう言った
「王族?ではオリビアも…確かシュロもクロキュスの…」
「身分の事は忘れてくれ。ここにいる上で俺は王族の身分を表に出すつもりは一切ないから。ただ、フジェの町と召喚されたオリビエに関する権限だけを貰ってるに過ぎないんだ」
「しかし…」
「ふふ…今更改まってしゃべられても困るわ」
「それはそうかもしれんが…」
ジルコットは困ったように顔を歪めた
「オリビエはオリビエだよ?」
コルザがそう言ってにっこり笑う
「あぁ、そうか。確かにそうだな。そう望まれるなら身分の事は忘れるよう努力しよう」
「そうしてくれると嬉しいわ」
「むしろそうしてくれる方がいい」
「そうそう。俺もただの冒険者だしね」
私たちがそう言うとジルコットも肩の力が抜けたのか表情を緩めた
「ジルコットにはアントに手紙を書いてもらいたい。その方が話が早そうだ」
「承知した。彼のこれからの事は気になっていたからありがたい」
「亡命者の今後の事に関しては3国とも考えることが山ほどある。働く場があるなら積極的に斡旋するのは当然だ」
「確かにそうよね。彼らにしてもその方が安心できるだろうし」
“亡命者=養われるだけの人”のままでは肩身も狭いだろう
ジルコットの手紙はシャドウを通じてアントに届けてもらう手はずを整えた
32
お気に入りに追加
600
あなたにおすすめの小説
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

【完結】ポーションが不味すぎるので、美味しいポーションを作ったら
七鳳
ファンタジー
※毎日8時と18時に更新中!
※いいねやお気に入り登録して頂けると励みになります!
気付いたら異世界に転生していた主人公。
赤ん坊から15歳まで成長する中で、異世界の常識を学んでいくが、その中で気付いたことがひとつ。
「ポーションが不味すぎる」
必需品だが、みんなが嫌な顔をして買っていく姿を見て、「美味しいポーションを作ったらバカ売れするのでは?」
と考え、試行錯誤をしていく…
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

悪役令嬢に転生したので、ゲームを無視して自由に生きる。私にしか使えない植物を操る魔法で、食べ物の心配は無いのでスローライフを満喫します。
向原 行人
ファンタジー
死にかけた拍子に前世の記憶が蘇り……どハマりしていた恋愛ゲーム『ときめきメイト』の世界に居ると気付く。
それだけならまだしも、私の名前がルーシーって、思いっきり悪役令嬢じゃない!
しかもルーシーは魔法学園卒業後に、誰とも結ばれる事なく、辺境に飛ばされて孤独な上に苦労する事が分かっている。
……あ、だったら、辺境に飛ばされた後、苦労せずに生きていけるスキルを学園に居る内に習得しておけば良いじゃない。
魔法学園で起こる恋愛イベントを全て無視して、生きていく為のスキルを習得して……と思ったら、いきなりゲームに無かった魔法が使えるようになってしまった。
木から木へと瞬間移動出来るようになったので、学園に通いながら、辺境に飛ばされた後のスローライフの練習をしていたんだけど……自由なスローライフが楽し過ぎるっ!
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる