[完結]召喚に巻き込まれたけど元の世界に戻れないのでこの世界を楽しもうと思います

真那月 凜

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「いらっしゃいませー」
ランチタイムが落ち着いた頃合いで扉が開いた
入ってきたのは1人の年配の男性
彼は店内を見回したもののその場から動こうとしなかった

「お好きな席にどうぞ」
「あ、いや、失礼…つかぬことをお尋ねしますが、こちらにフロックス・グリシーヌという方がおられるとお聞きしてきたのですが」
「フロックス、ですか?」
知り合いかしらと首を傾げながらロキを見る

「あぁ、医局長か」
伺う様に男性を見たロキがそう口にした

「な…クロキュス様…?!」
ロキは驚愕の表情を浮かべた彼に苦笑する

「もう様は不要ですよ。ジルコット殿」
「あ、いや…確かにそうですな。既にあの国は亡びたに等しい今、あの国の全てに意味はない。では私の事も殿は不要です」
ソンシティヴュが関係なくてもカクテュスの王族だけど…

「承知した。あぁ、紹介しますよ。俺の嫁でオリビエ」
「初めまして」
「こちらこそ初めましてですな。ジルコット・チャーム、ソンシティヴュでは医局長をしておりました」
「まぁ、では例の感染症の際にフロックスに協力いただいた方?」
「おや、そこまでご存知で?」
ジルコットは驚いたように言う

「ここは田舎なので話題が少ないんですよ。どうぞ中へ」
このまま入り口で話し続けるわけにもいかないのでテーブル席に案内した

「ロキ、フロックス呼んでくるからお相手お願いね」
「悪いな」
「気にしないで」
私はそう言ってジルコットに会釈してから屋敷の方に向かう
今日はサロンで本を読むって言ってたはず…
今朝聞いた予定を思い出して真っ先にサロンを確認した

「よかった」
「え?」
フロックスは驚いた顔を向けて来る

「フロックスにお客様が来てるの」
「客?俺に?」
心当たりがないんだが、とでも言うように首を傾げる

「ジルコット・チャーム」
「おぉ…医局長か」
「その様子だと約束してたの?」
「いや、約束って程のものでは無いんだけどな。王宮で別れる時に落ち着いたら顔を出してくれと言ってあった」
「そうだったんだ。今カフェでロキが相手してるんだけど来れそう?」
「ああ。行くよ」
フロックスは本をしまって立ち上がる

「確か称号なしの方なんだよね?」
「ああ。王宮を出る時はカクテュスの知り合いを訪ねると言ってたはずだ」
「気さくな方だよね?」
医局長というイメージが自分の中の物と一致しない
どちらかと言えば堅苦しい、気難しいイメージしかもっていなかったから

「そうだな。ある意味貴重だと思うよ」
「え?」
「ソンシティヴュで王宮の医局長だからな。本来なら称号持ちが付く役職」
「確かに…そういう意味ではよく医局長になれたね?」
その立場にいるだけでも風当たりは強そうだけど…

「腕は確かだからな。王族特有の病を初見で見抜いたと聞いてる」
「王族特有…そういうのあるんだね~」
別世界の話だとしか思えない…って実際私にとってここは別世界なんだけど
そんな話をしている間にカフェに着いた

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