[完結]召喚に巻き込まれたけど元の世界に戻れないのでこの世界を楽しもうと思います

真那月 凜

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88.騎士達の処遇(side:カクテュス)

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操られていた騎士は魔物狩りの前日から時間を空けながら、2~3人ずつ牢から出されることになった
勿論逃走防止の魔道具が付けられている
最初に出されたのはシルバーの3人だ

「我々だけでしょうか?」
一人が困惑した表情を浮かべながら尋ねた
自身と共に出されたのは2人のシルバーの騎士のみ
それがいい意味で選ばれたのか、それともその逆か…

「そうだ」
先導する騎士は多くを語る気はないようだ

「…お…お前たち!オナグルの護衛だったな!?」
縋るような声に牢の中を見る

「王…!」
「お前たち…俺を助けろ!早くここから出せ!」
開口一番それなのかと先導する騎士は苛立ちを覚えた

「あんたは最後だ。もっとも、フジェ侵略の件が片付いても3国からの処罰が残っているがな」
「どういうことだ?歌姫の事はオナグルが…そうだ、オナグルはどうしてるんだ?!」
初めて思い出したのか焦りをあらわにした

「あんたの愚息は召喚に巻き込まれた者に対して刃を向けた。その意味が理解出来ないようだったがな」
「は?」
「あんたも知ってるように、ソンシティヴュが追い出したオリビエ・グラヨールはフジェの町に居た。その町を襲撃しただけでなくオナグルは切りかかったということだ」
「だから何だというんだ」
「召喚された者は丁重に扱う。この世界での決まり事だ」
「しかし彼女は召喚したのではなく巻き込まれた…」
「それはあんたの都合だ。それとも何か?あんたは同じ立場になった時に“それなら仕方ない”と思えるのか?」
「…」
ナルシスは言葉を飲んだ

「それにだ、オリビエ・グラヨールはクロキュス・トゥルネソルと結婚したことでカクテュスの王族の一員だ。わが国では継承権を放棄しても王族であることは変わらないからな」
「何?!ではあの女に刃を向けたオナグルは…」
青ざめるナルシスはようやく事態を把握したらしい
オリビエに刃を向けたということは国に刃を向けたと同義
国境の小競り合いとは比べ物にならないほどの事案となる

「なによりクロキュス様がお怒りだ。オナグルをこの王都に留め置くのすら嫌悪された」
「…ではオナグルは…私の息子は…」
「とりあえず鉱山に送られた」
「鉱山…王族に何という…」
ナルシスの声は震えていた

「あぁ、ただし、通常の労働より酷だろうがな」
「…息子に、オナグルに何をさせる気だ!?」
「オナグルは失った腕の痛みはそのままに採掘ノルマが課される」
「…どういうことだ?」
「ただでさえ過酷な鉱山での労働にノルマが課されることはまれだと言えばわかるか?やつはそのノルマを達成するまでその日の仕事を終えることは出来ない」
その言葉にはシルバーの3騎士も息を飲んだ
次はわが身かと全身がこわばっていく

「オリビエ様に手を出したことでクロキュス様が大層お怒りでな。その怒りを少しでも収めてもらうための暫定処遇でもある」
「クロキュスにそれだけの権力があるということか?!」
「オリビエ様に関することであれば王に次ぐ権力をお持ちだ。その事は他の2国も同意している」
「そんな…」
流石にそれが何を意味するかくらいは理解できたらしい
「ちなみに、逃亡した歌姫は既に3国で保護している。意志に反してオナグルに好き勝手されたと、それが嫌で逃げ出したと言っているそうだ。まぁ、嫌がっていないなら逃げ出すはずがないがな」
「…」
尤もな言葉にナルシスは黙り込む

「あいつは…息子はまだ生きているのか?」
「毎日地面を這いつくばってるが生きてはいるぞ?そう簡単に殺してやるはずがないだろう」
ニヤリと笑った騎士にナルシスは初めて恐怖を覚えた

「愚息の心配より自分の心配をしたらどうだ?召喚した者を王宮から追い出し、3国に隠した当人であるあんたにはどんな罰が下るんだろうな?」
ニタリと笑いながら言うと騎士は再び歩き出す
去り際牢の中を見るとナルシスは頭を抱えてうずくまっていた

「あんたたちはこっちだ」
さっきまでの雰囲気を一瞬で蹴散らし騎士は言う
強張っていた体が一気に緩んだのは言うまでもない
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