220 / 317
76.夢のような町(side:イモーテル)
2
しおりを挟む
「どういうこと?」
「歌姫がここに向かってると…着いたら丁重にもてなせと…ハッ!」
もてなさなければと思い至り目を見開いた
「少しお待ちください」
門番はそう言って走って行った
その少し後、年配の女性を連れて戻ってきた
「歌姫が来られたと…?」
「ええ。私がそうです」
私はその女性にステータスを開示した
「おぉ…本当に歌姫が…本当にこの町に望んでこられたと?」
「ええ。勿論」
「失礼ですが…この町がどのような町か本当にご存知で?」
「そうね。一妻多夫の町。沢山の夫を持つのが義務なんでしょう?」
「あなたは本当にそれを望むと?」
「そうよ。だから来たんだもの」
即答する私に2人は顔を見合わせた
一体なんだって言うの?
「…わかりました。歌姫、あなたを歓迎します」
「ありがとう」
開けられた門を通り抜けて私は町を見渡した
門の外の鬱蒼とした雰囲気は全くない
広大な敷地の中にかなり距離を空けて家が建っているのが見て取れた
敷地の境と思われる場所に植えられた木は柵の役割を果たしているかしらね
「思ってたより素敵な町ね」
「そう言っていただけると嬉しいわ。あなたの住まいは…」
「東の角に空いてる家が」
「そうだったわね。どうぞこちらへ」
女性に案内されたのは青いドアの付いた大きな1軒家だった
「ここに住んでいいの?」
「ええ。ここの主人はあなたです。婚姻はこの書面を提出すれば成立します」
中に踏み入れてすぐ、ドアの側に置かれた台に同じ内容の書面が数十枚とペンらしきものが置かれている
「随分簡単なのね」
「はい。ここの規則は多くは有りません。男性側の重婚の禁止、女性は基本的に家から出ない、家に入れる男性はその家の主と婚姻した者のみ。それくらいです」
「家から出ずにどうやって知り合うの?」
「窓から声を掛ければ十分です。玄関口で互いにこの書面にサインし、男性が提出してくれば自由に出入りできます」
女性は淡々と説明を続ける
「婚姻が成立した男性にはそれぞれのドアの色と同じブレスレットを配られます」
そう言うと門番の男が自分の手首に着けたブレスレットを見せてくる
「ブレスレットをしている男性は婚姻済みです。あなたが婚姻することも、誘うこともできません」
「了解。ブレスレットしてない男を家の中から誘えばいいってことね?」
「その通りです。家事などは全て男性が担います。この町の女性の唯一の役割は男性と…」
「男と寝るのだけが仕事って最高だわ」
あけすけなく言い放たれた言葉に女性はあっけにとられた
「歌姫が本当にこの町での生活を望んでいるのは分かりました。私はこの町の領主でリシリア。何かあれば男性に呼びに来させてくれれば駆けつけるわ」
「分かったわ。ありがとう」
「それじゃぁ、この町をどうか楽しんで」
リシリアは暫く私のこれまでの事を確認してから帰って行った
家の外で待っていた門番も深く頭を下げてから門の方に戻っていく
私はその日のうちに5人の夫を迎え町での生活を楽しみ始めた
「歌姫がここに向かってると…着いたら丁重にもてなせと…ハッ!」
もてなさなければと思い至り目を見開いた
「少しお待ちください」
門番はそう言って走って行った
その少し後、年配の女性を連れて戻ってきた
「歌姫が来られたと…?」
「ええ。私がそうです」
私はその女性にステータスを開示した
「おぉ…本当に歌姫が…本当にこの町に望んでこられたと?」
「ええ。勿論」
「失礼ですが…この町がどのような町か本当にご存知で?」
「そうね。一妻多夫の町。沢山の夫を持つのが義務なんでしょう?」
「あなたは本当にそれを望むと?」
「そうよ。だから来たんだもの」
即答する私に2人は顔を見合わせた
一体なんだって言うの?
「…わかりました。歌姫、あなたを歓迎します」
「ありがとう」
開けられた門を通り抜けて私は町を見渡した
門の外の鬱蒼とした雰囲気は全くない
広大な敷地の中にかなり距離を空けて家が建っているのが見て取れた
敷地の境と思われる場所に植えられた木は柵の役割を果たしているかしらね
「思ってたより素敵な町ね」
「そう言っていただけると嬉しいわ。あなたの住まいは…」
「東の角に空いてる家が」
「そうだったわね。どうぞこちらへ」
女性に案内されたのは青いドアの付いた大きな1軒家だった
「ここに住んでいいの?」
「ええ。ここの主人はあなたです。婚姻はこの書面を提出すれば成立します」
中に踏み入れてすぐ、ドアの側に置かれた台に同じ内容の書面が数十枚とペンらしきものが置かれている
「随分簡単なのね」
「はい。ここの規則は多くは有りません。男性側の重婚の禁止、女性は基本的に家から出ない、家に入れる男性はその家の主と婚姻した者のみ。それくらいです」
「家から出ずにどうやって知り合うの?」
「窓から声を掛ければ十分です。玄関口で互いにこの書面にサインし、男性が提出してくれば自由に出入りできます」
女性は淡々と説明を続ける
「婚姻が成立した男性にはそれぞれのドアの色と同じブレスレットを配られます」
そう言うと門番の男が自分の手首に着けたブレスレットを見せてくる
「ブレスレットをしている男性は婚姻済みです。あなたが婚姻することも、誘うこともできません」
「了解。ブレスレットしてない男を家の中から誘えばいいってことね?」
「その通りです。家事などは全て男性が担います。この町の女性の唯一の役割は男性と…」
「男と寝るのだけが仕事って最高だわ」
あけすけなく言い放たれた言葉に女性はあっけにとられた
「歌姫が本当にこの町での生活を望んでいるのは分かりました。私はこの町の領主でリシリア。何かあれば男性に呼びに来させてくれれば駆けつけるわ」
「分かったわ。ありがとう」
「それじゃぁ、この町をどうか楽しんで」
リシリアは暫く私のこれまでの事を確認してから帰って行った
家の外で待っていた門番も深く頭を下げてから門の方に戻っていく
私はその日のうちに5人の夫を迎え町での生活を楽しみ始めた
32
お気に入りに追加
600
あなたにおすすめの小説

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。
アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。
両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。
両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。
テッドには、妹が3人いる。
両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。
このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。
そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。
その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。
両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。
両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…
両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが…
母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。
今日も依頼をこなして、家に帰るんだ!
この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。
お楽しみくださいね!
HOTランキング20位になりました。
皆さん、有り難う御座います。
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します
怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。
本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。
彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。
世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。
喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

【完結】ポーションが不味すぎるので、美味しいポーションを作ったら
七鳳
ファンタジー
※毎日8時と18時に更新中!
※いいねやお気に入り登録して頂けると励みになります!
気付いたら異世界に転生していた主人公。
赤ん坊から15歳まで成長する中で、異世界の常識を学んでいくが、その中で気付いたことがひとつ。
「ポーションが不味すぎる」
必需品だが、みんなが嫌な顔をして買っていく姿を見て、「美味しいポーションを作ったらバカ売れするのでは?」
と考え、試行錯誤をしていく…

【完結】神スキル拡大解釈で底辺パーティから成り上がります!
まにゅまにゅ
ファンタジー
平均レベルの低い底辺パーティ『龍炎光牙《りゅうえんこうが》』はオーク一匹倒すのにも命懸けで注目もされていないどこにでもでもいる冒険者たちのチームだった。
そんなある日ようやく資金も貯まり、神殿でお金を払って恩恵《ギフト》を授かるとその恩恵《ギフト》スキルは『拡大解釈』というもの。
その効果は魔法やスキルの内容を拡大解釈し、別の効果を引き起こせる、という神スキルだった。その拡大解釈により色んなものを回復《ヒール》で治したり強化《ブースト》で獲得経験値を増やしたりととんでもない効果を発揮する!
底辺パーティ『龍炎光牙』の大躍進が始まる!
第16回ファンタジー大賞奨励賞受賞作です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる