209 / 317
72.根回し(side:王宮)
1
しおりを挟む
フロックスは明け方自室でロキからの手紙を受け取った
3国が亡命者を受け入れる決断を既に下していること、ただし称号持ちは除くことも含めて記されていた
「噂程度には耳にしてたが…まぁ、称号持ちを受け入れるほど甘くはないよな…」
少し絶望した気持ちを抱きながら呟き先を読み進める
そこには”新種の感染症“を作り出し、称号なしに王宮から出る選択肢を与えること
その功績を理由に称号持ちの中で、自身と騎士団長兄妹はフジェで特別に受け入れるよう取り計らうと書かれていた
その文面から自分に出来ないはずがないだろうという含みが見て取れる
「流石クロキュスだな…ありがたい」
フロックスにとって長年の悪友をこれほどありがたいと思ったことは無かっただろう
手紙を読み終えるとフロックスはすぐに計画を練った
その日は休みを取っていたため朝から1日がかりで準備を進める
夕方になるとフロックスの周りには大量の薬包紙に包まれた薬が積まれていた
それをいくつかの袋に詰めると手紙を書き称号なしのリストを同封して鷹を飛ばした
「まず下準備だな」
この計画を行う上での協力者が必要だ
最初に向かったのは王宮の医局
幸い今の医局長のジルコット・チャームは称号なしだ
情報をかいつまんで話し、薬を渡すことで仲間に引き込んだ
「一時的な症状は発熱、倦怠感、そして体のどこかに現れる白い斑点だ」
「それが表れていれば新種の感染症だと診断すればいいんだな?」
「そういうことだ。この後騎士団長のカトリックと精鋭に飲ませる。丁度今日魔物狩りから戻ってくる」
「なるほど。その出先で感染したと触れ回ればいいわけか?」
「ああ。そして彼らの診断をしながら俺を呼んで欲しい。その場で俺達も感染したことにする」
「では、我々はその後にこの薬を飲めばいいということですね?」
「そういうことだ。飲んで5時間もすれば熱も引く。そのタイミングで用意した人形を抗菌袋に詰める。俺達は自らも感染した姿をさらしながら最後を看取ったと告げるだけでいい」
「白い斑点が目印になり、勝手に死に至る感染症と広まる。診察に呼ばれた医師もその目印だけで判断できるというわけか。流石フロックス殿だな」
ジルコットは感心したように言う
「感染症を装えと言ってきたのはクロキュスだ。感謝はあいつにしてくれ」
「クロキュス殿が…ありがたいことだ」
「称号持ちはどうせ受け入れてもらえないから対象外だ。医局とメイド、料理人にはジルコット殿から広めてくれるか?」
「ああ、引き受けよう。カトリック殿が対象になるということは妹君も例外の扱いでいいのか?」
「ああ。その通りだ。薬は人数分用意してある。それを使うかどうかは本人に任せるが飲むのは騎士が死んだという情報が出回ってからにしてくれ」
「先に飲んだら筋が通らなくなるからな。そこは強く伝えよう」
ジルコットは頷いた
「身代わりの人形の用意も、埋葬場所に持ち込むのも変装した自分だということも伝えてくれ。あくまで全て自己責任だ」
「それは当然だ」
「王宮を出ることさえできればそれでいい。国を出る準備はその後でも間に合うからな」
「了解した。称号のないメイドは8人。医局は俺を入れて3人。料理人は確か2人か。今から伝えて回れば今日中に伝えられるだろう。早く伝えた方が人形の準備に時間を掛けれるからな」
そう言いながらジルコットは医局を出て行く
それを見送るとフロックスは騎士団に向かった
3国が亡命者を受け入れる決断を既に下していること、ただし称号持ちは除くことも含めて記されていた
「噂程度には耳にしてたが…まぁ、称号持ちを受け入れるほど甘くはないよな…」
少し絶望した気持ちを抱きながら呟き先を読み進める
そこには”新種の感染症“を作り出し、称号なしに王宮から出る選択肢を与えること
その功績を理由に称号持ちの中で、自身と騎士団長兄妹はフジェで特別に受け入れるよう取り計らうと書かれていた
その文面から自分に出来ないはずがないだろうという含みが見て取れる
「流石クロキュスだな…ありがたい」
フロックスにとって長年の悪友をこれほどありがたいと思ったことは無かっただろう
手紙を読み終えるとフロックスはすぐに計画を練った
その日は休みを取っていたため朝から1日がかりで準備を進める
夕方になるとフロックスの周りには大量の薬包紙に包まれた薬が積まれていた
それをいくつかの袋に詰めると手紙を書き称号なしのリストを同封して鷹を飛ばした
「まず下準備だな」
この計画を行う上での協力者が必要だ
最初に向かったのは王宮の医局
幸い今の医局長のジルコット・チャームは称号なしだ
情報をかいつまんで話し、薬を渡すことで仲間に引き込んだ
「一時的な症状は発熱、倦怠感、そして体のどこかに現れる白い斑点だ」
「それが表れていれば新種の感染症だと診断すればいいんだな?」
「そういうことだ。この後騎士団長のカトリックと精鋭に飲ませる。丁度今日魔物狩りから戻ってくる」
「なるほど。その出先で感染したと触れ回ればいいわけか?」
「ああ。そして彼らの診断をしながら俺を呼んで欲しい。その場で俺達も感染したことにする」
「では、我々はその後にこの薬を飲めばいいということですね?」
「そういうことだ。飲んで5時間もすれば熱も引く。そのタイミングで用意した人形を抗菌袋に詰める。俺達は自らも感染した姿をさらしながら最後を看取ったと告げるだけでいい」
「白い斑点が目印になり、勝手に死に至る感染症と広まる。診察に呼ばれた医師もその目印だけで判断できるというわけか。流石フロックス殿だな」
ジルコットは感心したように言う
「感染症を装えと言ってきたのはクロキュスだ。感謝はあいつにしてくれ」
「クロキュス殿が…ありがたいことだ」
「称号持ちはどうせ受け入れてもらえないから対象外だ。医局とメイド、料理人にはジルコット殿から広めてくれるか?」
「ああ、引き受けよう。カトリック殿が対象になるということは妹君も例外の扱いでいいのか?」
「ああ。その通りだ。薬は人数分用意してある。それを使うかどうかは本人に任せるが飲むのは騎士が死んだという情報が出回ってからにしてくれ」
「先に飲んだら筋が通らなくなるからな。そこは強く伝えよう」
ジルコットは頷いた
「身代わりの人形の用意も、埋葬場所に持ち込むのも変装した自分だということも伝えてくれ。あくまで全て自己責任だ」
「それは当然だ」
「王宮を出ることさえできればそれでいい。国を出る準備はその後でも間に合うからな」
「了解した。称号のないメイドは8人。医局は俺を入れて3人。料理人は確か2人か。今から伝えて回れば今日中に伝えられるだろう。早く伝えた方が人形の準備に時間を掛けれるからな」
そう言いながらジルコットは医局を出て行く
それを見送るとフロックスは騎士団に向かった
32
お気に入りに追加
600
あなたにおすすめの小説
完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-
ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。
自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。
そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。
安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。
いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して!
この世界は無い物ばかり。
現代知識を使い生産チートを目指します。
※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。
虐殺者の称号を持つ戦士が元公爵令嬢に雇われました
オオノギ
ファンタジー
【虐殺者《スレイヤー》】の汚名を着せられた王国戦士エリクと、
【才姫《プリンセス》】と帝国内で謳われる公爵令嬢アリア。
互いに理由は違いながらも国から追われた先で出会い、
戦士エリクはアリアの護衛として雇われる事となった。
そして安寧の地を求めて二人で旅を繰り広げる。
暴走気味の前向き美少女アリアに振り回される戦士エリクと、
不器用で愚直なエリクに呆れながらも付き合う元公爵令嬢アリア。
凸凹コンビが織り成し紡ぐ異世界を巡るファンタジー作品です。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

【完結】神スキル拡大解釈で底辺パーティから成り上がります!
まにゅまにゅ
ファンタジー
平均レベルの低い底辺パーティ『龍炎光牙《りゅうえんこうが》』はオーク一匹倒すのにも命懸けで注目もされていないどこにでもでもいる冒険者たちのチームだった。
そんなある日ようやく資金も貯まり、神殿でお金を払って恩恵《ギフト》を授かるとその恩恵《ギフト》スキルは『拡大解釈』というもの。
その効果は魔法やスキルの内容を拡大解釈し、別の効果を引き起こせる、という神スキルだった。その拡大解釈により色んなものを回復《ヒール》で治したり強化《ブースト》で獲得経験値を増やしたりととんでもない効果を発揮する!
底辺パーティ『龍炎光牙』の大躍進が始まる!
第16回ファンタジー大賞奨励賞受賞作です。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。

【完結】ポーションが不味すぎるので、美味しいポーションを作ったら
七鳳
ファンタジー
※毎日8時と18時に更新中!
※いいねやお気に入り登録して頂けると励みになります!
気付いたら異世界に転生していた主人公。
赤ん坊から15歳まで成長する中で、異世界の常識を学んでいくが、その中で気付いたことがひとつ。
「ポーションが不味すぎる」
必需品だが、みんなが嫌な顔をして買っていく姿を見て、「美味しいポーションを作ったらバカ売れするのでは?」
と考え、試行錯誤をしていく…

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します
怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。
本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。
彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。
世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。
喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。
老女召喚〜聖女はまさかの80歳?!〜城を追い出されちゃったけど、何か若返ってるし、元気に異世界で生き抜きます!〜
二階堂吉乃
ファンタジー
瘴気に脅かされる王国があった。それを祓うことが出来るのは異世界人の乙女だけ。王国の幹部は伝説の『聖女召喚』の儀を行う。だが現れたのは1人の老婆だった。「召喚は失敗だ!」聖女を娶るつもりだった王子は激怒した。そこら辺の平民だと思われた老女は金貨1枚を与えられると、城から追い出されてしまう。実はこの老婆こそが召喚された女性だった。
白石きよ子・80歳。寝ていた布団の中から異世界に連れてこられてしまった。始めは「ドッキリじゃないかしら」と疑っていた。頼れる知り合いも家族もいない。持病の関節痛と高血圧の薬もない。しかし生来の逞しさで異世界で生き抜いていく。
後日、召喚が成功していたと分かる。王や重臣たちは慌てて老女の行方を探し始めるが、一向に見つからない。それもそのはず、きよ子はどんどん若返っていた。行方不明の老聖女を探す副団長は、黒髪黒目の不思議な美女と出会うが…。
人の名前が何故か映画スターの名になっちゃう天然系若返り聖女の冒険。全14話+間話8話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる