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70.混乱(side:王宮)

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後に残されたのは崩れ落ちたマチルダと立ち尽くすナルシスとオナグル
そして様子を伺っていた称号持ちの参加者たちだった

「マチルダ…お前何ということを…」
最初にそう発したのはマチルダの父だった

「お父様、私は…!」
「もし3国に見限られたらこの国は…」
「それより歌姫の事がどこまで漏れているのか…」
「こんな婚姻式をしている場合じゃない。現状把握が最優先だ」
誰かが叫んだ

「待てお前たち!こんなとは何だ…?王太子の婚姻式だぞ!?」
オナグルが叫んだ

「オナグル殿、王太子と言えど情けでその場に置いているだけだ。文句があるならいつでも追放させていただく」
「何?!」
「今はくだらないことを説明している時間はない。マチルダ、お前がきちんと説明して理解させておきなさい。それくらいは出来るだろう?」
問うてはいるものの否を受け入れてくれるはずもない
「はい。お父様」
マチルダは震える声で頷いた

「皆、国の存続がかかっている。できうる限りの情報を集め、明日の朝8時に議会を開始する。反対のものがあればこの場で…」
「反対などするわけがない。その時間すら惜しい」
口々に言いながら散っていく

翌日、持ち寄られた情報により王族と称号持ちとの確執が大きくなり互いに不信感を募らせる結果になり、夜までかかった話し合いでも何の解決策も浮かばず、みな暗い顔のまま解散となった


***
一方称号持ちが出て行った会場では…
その場に残されたのはオナグルとマチルダ、そしてナルシス、そして彼らの側近と護衛だけだった

「マチルダ説明しろ。さっきのはどういう意味だ!?」
崩れ落ちたままのマチルダに掴みかかりオナグルは怒鳴った
「…説明も何もそのままの意味ですわ。婚姻前の条項にも記載されていたはず」
「…あの忌々しい書類か」
吐き捨てるように言いながらマチルダを突き放す

「きゃぁ…っ!」
背中から倒れ込んだマチルダは咄嗟にオナグルを睨みつけていた

「だからと言ってお前がしたことは簡単に許されることではない。3国の王を怒らせるなど…随分舐めたことをしてくれたようだな?」
「それは…!」
「マチルダ、そなたの受けた命を全て吐いてもらおうか」
「ああ、それがいい」
「何を…私は何も…!」
2人から詰め寄られマチルダは青ざめる

「これは預からせてもらうぞ」
マチルダの腕に嵌められていたバングルをナルシスは奪った
その直後ナルシスは魔法を発動させた
マチルダの目から光が消える

「そなたの知ることを今ここで全て書面に起こせ」
「仰せのままに」
マチルダは言われるまま渡された用紙にすべてを書き出していく

「なぜ主従契約にしないんです?今のは30分ほどで効果が切れるものではないんですか」
「お前は馬鹿か?」
「な…」
「主従契約など結んでみろゴールドにすぐに悟られる。そうなれば王族は傀儡として生きるしかなくなるだろうな」
「!」
そんなやり取りを側近も護衛もただ黙って見ていた
下手に口出しをして主従契約など結ばれてはたまらない
それが彼らの本音だった
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