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38.新領主からの依頼

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「多分、規約外の仕事は引き受けない」
首を傾げているとロキがそう呟いた

「そういうもの?」
「そういう仕事に就けるのは称号持ちだけだ」
「図書館の本が偏ってるのはそのせい?」
前に見に行った時感じた事を尋ねると頷かれた

一般の人の生活や情緒の形成とはかけ離れた本ばかりが並んでいた
それこそ称号持ち年鑑やその家の歴史などに関するものが大半を占めていた
定休日を設ける時にウーに図書館でって話をしたけど、とても役立ちそうにはなかったのだ

「でもギルドの図鑑が読めれば手札は増えるんじゃないか」
「それはあるな。魔物狩ったついでに薬草摘んでくることも出来るかもしれない。依頼は10本単位でも買取自体は1本から可能だしな」
「何にしても無駄になることは無いだろう。少なくとも自分の自信にはなる」
「ってことでどうだ?」
ロキがタマリを見た

「そうさせてもらうよ。君達には感謝する」
「堅苦しいのはなしな。とりあえず自警団は今日からでも始めれるな。当分の間は俺かマロニエが必ずいるようにするよ」
「集まる場所は?」
「そうだなぁ…広場とかが一番無難だろうけど」
ダビアが考え込む

「なら広場の隅にある集会所を使おう」
「あぁ。何かあったな。あれ使っても大丈夫なのか?」
「催事の打ち合わせなんかに使うだけの町の持ち物だ。町を守るのが目的の自警団なら使う権利もあるだろう」
そういう意味なら確かに権利はありそうね

「何かが置いてあるわけじゃないからカギはかけてない。休憩くらいには使えるだろう」
「じゃぁ遠慮なく使わせてもらうか。希望してるやつをいったん今夜集めてくれ。そこでどんなことをしていくのか決めよう」
「そうだな。分かってる者には声をかけておくよ」
タマリの言葉を聞いて私たちは屋敷に戻った


「一人雇うだけじゃ解決にはならないよな」
「それは多分大丈夫だと思うよ」
「え?」
3人が私の方を見た

「子ども達は純粋だもの。身近に同様の人がいれば同じように教えてもらえると思うんじゃない?」
「…確かに」
「でしょう?そこに報酬は発生しないと思うけど、彼らが自分にも出来ることがあると思うには充分だと思うのよね」
「出来ることがあれば生きようと思える…か」
「そういうこと。それにこの町は助け合うのが当たり前に感じるもの。きっと教わった子供たちは魔物のおすそ分けくらいすると思うよ」
教えてもらったお礼に、それくらい当たり前にするのがこの町の人たちだ

「おすそ分けって言うより褒めてもらいにって気もするな」
「たしかに。それに、子供達を通して奥さんたちが解体の仕方を教えてもらいに行くことだって十分あり得るでしょう?」
そうできる町は素敵だと思うと続けるとロキが優しい眼差しでこっちを見ていた

「領主がするのはきっかけで充分。あとは身近な人たちで助け合うでしょ。文字の勉強も数の勉強もきっと同じだよ」
時間を持て余した高齢者はどこにでもいるのだ
孫世代と関われるなら喜んで教えるだろう
なんにしてもタマリが領主になったことはこの町にとって幸運なことだと頷き合っていた
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