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38.新領主からの依頼

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「有志の自警団?」
「騎士団のいない小さな町などで見かけるやつか?」
「ああ。強制ではなく自分の空いた時間や夜に見回りをしたりするあれだ」
「まとめ役は俺とマロニエでやってやる。入った奴には戦い方を教えてやる」
「なるほど。もともと有志の集まりだからそこに報酬は発生しないということね?」
「そういうことだ」
ダビアはニヤリと笑う
町を守る手助けをしたいという者なら、普段から見回りすることも嫌がりはしないだろう
ましてそれは強制されるものではないので負担もないはずだ

「君達はそれでいいのか?」
「まぁやめたとはいえ、好んで騎士団に入ったくらいだ。空いた時間に協力するくらいなんともない」
「俺も。それで役に立てるなら俺としても嬉しいし」
2人は根っからの騎士だったのだろう
嫌がるどころかどこか誇らしそうにさえ見える

「王都の元騎士団長と精鋭に手ほどきしてもらえるなんて贅沢な自警団だな」
ロキは苦笑しながらそう言った

「見回りするしないにかかわらず入れば手ほどきを受けれるなら入る人は多そうね」
「いいんじゃないか?どっちにしても身を守る手札が増えることには変わらないからな」
「…感謝する。是非私も参加させて欲しい」
「ああ、期待してるぜ」
誰よりも歯がゆかったのはタマリ自身だったのだろう
ダビアの即答に破顔した

「あとは子供達だな」
「…ねぇ、その元冒険者や心得のある人たちって子供たちの相手くらいできるわよね?」
「片手がないとか片足がないくらいなら大丈夫なんじゃないか?」
「だよね。タマリ、人を2~3人雇うことはできますか?」
「大量には無理だが2人くらいなら…」
「じゃぁそういう方を1人雇ってください。その方に子供たちに指導してもらえばいいと思うの。戦い方や冒険者をする上での基本的な知識も含めて」
「なるほどな…俺らが教えるより適任だな」
「どういうことだい?」
一人首を傾げたのはタマリだ

「魔物に負ける本当の怖さを知ってるのは彼らだ。その後の悔しい気持ちも含めてな」
「…あぁ、そうだな…」
「だからこそ説得力があるはず。軽い気持ちで挑んではいけないこと、自分がケガをした時の影響、魔物に挑む覚悟なんかも」
「そうかもしれないな…」
「これから登録するのはその人の合格がもらえてからって条件を付けるのもいいかもな。既に登録してても勿論指導を受けることはできるようにしてさ」
「タマリが費用を出すなら子供たちや親に負担はないしな。その中で解体の方法も教えりゃいいし」
「…君たちは凄いことを考えるな」
タマリはただただ驚いた表情を見せる

「単にこの町にいるよりも色んなものを見る機会があったってだけだ。それより、もう1人はどうする気だ?」
「そういや指導者は1人って言ったか?」
「そう。2人雇うなら1人は戦い方と守り方、もう一人は勉強を教えれる人」
「勉強?」
「ええ。以前は神父さんが教えてたと」
「ああ。でも高齢で…そうか知識があれば選択肢が増える…?」
言いながら気づいたようだ

「ええ。文字や計算を教えれる人をタマリが雇うの。そうすれば誰もが負担なく自由に学べる。余裕がなければとりあえず図書館でって言う方法もあるけどね」
「司書は公金で雇ってるんだっけ」
「先代の王が決めたはずだな。全ての町に図書館を置き司書は王都から派遣するって」
「となると司書が教えるのは期待できないな」
マロニエがキッパリ言い切った

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