[完結]召喚に巻き込まれたけど元の世界に戻れないのでこの世界を楽しもうと思います

真那月 凜

文字の大きさ
上 下
104 / 317
30.本音(side:王宮 騎士団)

2

しおりを挟む
「マロニエは正妃と同じ年、学園でも同じクラスだっただけに、きっとこうなることを予想してたんだろう」
「ダビアに続いて即答したって言ってましたからね」
騎士団の中にも正妃と同世代は何人もいる
その中にも正妃がその器でないと知っている者もいたが、あえて口にはしなかった
その話の出所が自分だと突き止められれば、自分だけでなく家族がどうなるかわからないからだ

「相手はゴールドの称号を持つだけに知ってても明かすことはできない、か…」
「でしょうね。マロニエにしたら選択肢は無かったも同然だろう」
「あいつ、騎士団に入ること反対されて勘当されたんでしたっけ?」
「勘当と言っても当主が反対してただけで、他の家族とは今でも良好な関係を保ってる。それが余計に選択肢を奪ったんだろうな」
「新兵降格か認めることの出来ない者に仕えるか…」
「その結果、ここを去ったと?」
「あの年で精鋭だぞ?」
「それが新兵扱い…確かにありえないですね」
その言葉はため息交じりに吐き出された

「ダビアだってそうだ。あいつは元々王族よりも民を守りたいから騎士団に入った。団長まで上り詰めたのは、自分が最前線に立つことが出来るからだ」
「そんな男がクソみたいな王族の守りなんて受けるはずがない」
「…ほんと、何考えてるんですかね。上は」
精鋭の中でもトップクラスの2人を辞職に追い込んだ王族
そのうちの一人はこのご時世で歌姫を召喚した
さらには他国から責められても仕方がない扱いをしているのだ

この場にいる騎士たちがそれでも騎士団にいるのは、民を守るという使命を捨てられないからというだけの事だった
その民には当然、自分の家族も含まれる
騎士団にいれば高ランクの冒険者しか手に出来ないような武具を使うことも出来る
共に訓練をしている仲間と協力することも出来る
何より、万が一自分の身に何かあったとしても、多くはないとは言え遺族の生活が保障されるのだ
ハイリスクハイリターンの冒険者になるか
ローリスクローリターンで、家族の保証というオプション付きの騎士団を取るか
その2択から選択しただけに過ぎないのだ

団長はそれを理解しているからこそ頭を抱える
ここに王家に忠誠を誓う者は1割もいないだろう
王至上主義の国の王宮の騎士団でありながら、である

今のタイミングで王族の専属になるか新兵降格かを問われれば、7割以上の騎士が辞めることを選ぶだろう
それが騎士たちの本音だということを誰よりも理解していた
なぜならその騎士たちの中には団長自身も含まれているのだから

団長は懐から手紙を取り出した

“もう無理だと思ったらフジェに来い。騎士団の精鋭ならここでもやっていける”

たったそれだけが書かれた手紙はダビアから2週間ほど前に送られてきたものだ
妹が王付きのメイドになっている為簡単には動けない
でも最悪の事態に頼る場所があるのは有り難いものだと口元を緩ませた
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

【完結】ポーションが不味すぎるので、美味しいポーションを作ったら

七鳳
ファンタジー
※毎日8時と18時に更新中! ※いいねやお気に入り登録して頂けると励みになります! 気付いたら異世界に転生していた主人公。 赤ん坊から15歳まで成長する中で、異世界の常識を学んでいくが、その中で気付いたことがひとつ。 「ポーションが不味すぎる」 必需品だが、みんなが嫌な顔をして買っていく姿を見て、「美味しいポーションを作ったらバカ売れするのでは?」 と考え、試行錯誤をしていく…

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します

怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。 本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。 彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。 世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。 喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

【完結】神スキル拡大解釈で底辺パーティから成り上がります!

まにゅまにゅ
ファンタジー
平均レベルの低い底辺パーティ『龍炎光牙《りゅうえんこうが》』はオーク一匹倒すのにも命懸けで注目もされていないどこにでもでもいる冒険者たちのチームだった。 そんなある日ようやく資金も貯まり、神殿でお金を払って恩恵《ギフト》を授かるとその恩恵《ギフト》スキルは『拡大解釈』というもの。 その効果は魔法やスキルの内容を拡大解釈し、別の効果を引き起こせる、という神スキルだった。その拡大解釈により色んなものを回復《ヒール》で治したり強化《ブースト》で獲得経験値を増やしたりととんでもない効果を発揮する! 底辺パーティ『龍炎光牙』の大躍進が始まる! 第16回ファンタジー大賞奨励賞受賞作です。

悪役令嬢に転生したので、ゲームを無視して自由に生きる。私にしか使えない植物を操る魔法で、食べ物の心配は無いのでスローライフを満喫します。

向原 行人
ファンタジー
死にかけた拍子に前世の記憶が蘇り……どハマりしていた恋愛ゲーム『ときめきメイト』の世界に居ると気付く。 それだけならまだしも、私の名前がルーシーって、思いっきり悪役令嬢じゃない! しかもルーシーは魔法学園卒業後に、誰とも結ばれる事なく、辺境に飛ばされて孤独な上に苦労する事が分かっている。 ……あ、だったら、辺境に飛ばされた後、苦労せずに生きていけるスキルを学園に居る内に習得しておけば良いじゃない。 魔法学園で起こる恋愛イベントを全て無視して、生きていく為のスキルを習得して……と思ったら、いきなりゲームに無かった魔法が使えるようになってしまった。 木から木へと瞬間移動出来るようになったので、学園に通いながら、辺境に飛ばされた後のスローライフの練習をしていたんだけど……自由なスローライフが楽し過ぎるっ! ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

処理中です...