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27.定休日
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カフェをオープンしてから最初の定休日を迎えた
2日前から客足が落ち着いてきたから、よっぽどでない限りは店も一人で回してる
元の世界でもそうしていただけにさほど苦労することもなくホッとするばかりだ
「私は今日は町に行こうと思うんだけどみんなはどうする?」
朝食を食べながら訪ねてみる
「ロベリ、ボールで遊ぼう」
「うん」
コルザの誘いに二つ返事で同意する
「僕は野菜の本を読もうかな」
ウーは前にロキが買ってきた本がお気に入りで何度も繰り返し読んでいる
「ママえほん」
リラがカメリアに向かっておねだりするように言うとカメリアは頷いていた
「じゃあ俺はゴロゴロ過ごしてみよう」
「親父初めてじゃないのか?」
「ああそうだ。実は憧れてた」
ジョンはそう言って笑った
ずっと働き詰めだったのならそういう日があるのもありがたいはず
ジョンのように休みなく働く人は多い
ソンシティヴュでは王族の立場が絶対で、それを守るための称号持ちだけが王族から必要とされている
国民への対応は全てその領土を守る領主、つまり称号持ちに一任されている
税を納める民は現状維持、納められない者は奴隷のようにこき使われる
当然のように民を守るための決まりなんかも存在しない
それが一般的なあり方だと聞いたときは、やり場のない怒りに飲まれそうになった
それでよく国が持っているものだと思わずにはいられない
「今日はマロニエが見る日だし…俺は森で狩りでもしてくるかな」
ダビアは最近この近くの森が気に入っているらしい
前に理由を聞いたら、“動きの速い魔物が多くてトレーニングになって素材も取れるから丁度いい”と返ってきた
「じゃぁ町には私…とロキ、2人で行ってくるわ」
一人でと言おうとして視線に気づいて言いなおした
食事がすんだ者から思い思いに過ごしだす
「やっぱこういう日も必要だよね」
「そうだな」
最後まで残ったロキはコーヒーを堪能しながら頷いた
いつもならカフェの仕込みを始めている時間だけに、朝からこんなにのんびり過ごすのは久しぶりだ
「お前さっき一人で行くって言おうとしただろ?」
「う…」
「絶対許さないからな?この短期間でカフェ開いてその手ごたえもある。狙われる可能性もあるって自覚しろ」
「ごめん…」
「まぁAランクだし?大抵のことは対処できるのは分かってるけどな」
俯く私の頭を大きな手がポンと叩く
ロキがよくする、手を軽く乗せるようなそれは妙に気恥しい
「すぐ行くのか?」
「ここ片付けてから」
と言っても生活魔法で一瞬で終わるけど…
ロキもわかっていても特に突っ込むことはしない
片付くのを待って立ち上がると2人で町に繰り出した
「見るのは?」
「とりあえず本と野菜」
「本?」
「カフェが落ち着いてくれば時間に余裕も出来るだろうし、子供達も本や絵本が好きみたいだから、食堂の本棚の本を町に来るたびに増やしてみようと思って」
「あぁ、取り合ってる時もあったか」
「まだ数が少ないからね。とりあえず絵本と冒険ものの小説とそれ以外の小説、園芸関係と料理関係を1冊ずつなんてどうかなって」
「いいんじゃねぇの?俺も何冊か見繕っていくかな」
そんな話をしながら本屋に入る
店主に意見を聞きながら選ぶのは楽しい
「何か多くないか?」
5冊ほどのはずが私の手元には10冊積みあがっている
1冊ずつと思っていたのに全て2冊ずつになってしまったのだ
これでも何とかそこまで減らしたんだけど…
「ロキも人のこと言えないと思うけど?」
似たような冊数を積み上げているロキと顔を見合わせて笑いあう
お互い本好きだということだ
「何にしても店としては嬉しいことだな」
店主にも笑われながら支払いを済ませて店を出た
2日前から客足が落ち着いてきたから、よっぽどでない限りは店も一人で回してる
元の世界でもそうしていただけにさほど苦労することもなくホッとするばかりだ
「私は今日は町に行こうと思うんだけどみんなはどうする?」
朝食を食べながら訪ねてみる
「ロベリ、ボールで遊ぼう」
「うん」
コルザの誘いに二つ返事で同意する
「僕は野菜の本を読もうかな」
ウーは前にロキが買ってきた本がお気に入りで何度も繰り返し読んでいる
「ママえほん」
リラがカメリアに向かっておねだりするように言うとカメリアは頷いていた
「じゃあ俺はゴロゴロ過ごしてみよう」
「親父初めてじゃないのか?」
「ああそうだ。実は憧れてた」
ジョンはそう言って笑った
ずっと働き詰めだったのならそういう日があるのもありがたいはず
ジョンのように休みなく働く人は多い
ソンシティヴュでは王族の立場が絶対で、それを守るための称号持ちだけが王族から必要とされている
国民への対応は全てその領土を守る領主、つまり称号持ちに一任されている
税を納める民は現状維持、納められない者は奴隷のようにこき使われる
当然のように民を守るための決まりなんかも存在しない
それが一般的なあり方だと聞いたときは、やり場のない怒りに飲まれそうになった
それでよく国が持っているものだと思わずにはいられない
「今日はマロニエが見る日だし…俺は森で狩りでもしてくるかな」
ダビアは最近この近くの森が気に入っているらしい
前に理由を聞いたら、“動きの速い魔物が多くてトレーニングになって素材も取れるから丁度いい”と返ってきた
「じゃぁ町には私…とロキ、2人で行ってくるわ」
一人でと言おうとして視線に気づいて言いなおした
食事がすんだ者から思い思いに過ごしだす
「やっぱこういう日も必要だよね」
「そうだな」
最後まで残ったロキはコーヒーを堪能しながら頷いた
いつもならカフェの仕込みを始めている時間だけに、朝からこんなにのんびり過ごすのは久しぶりだ
「お前さっき一人で行くって言おうとしただろ?」
「う…」
「絶対許さないからな?この短期間でカフェ開いてその手ごたえもある。狙われる可能性もあるって自覚しろ」
「ごめん…」
「まぁAランクだし?大抵のことは対処できるのは分かってるけどな」
俯く私の頭を大きな手がポンと叩く
ロキがよくする、手を軽く乗せるようなそれは妙に気恥しい
「すぐ行くのか?」
「ここ片付けてから」
と言っても生活魔法で一瞬で終わるけど…
ロキもわかっていても特に突っ込むことはしない
片付くのを待って立ち上がると2人で町に繰り出した
「見るのは?」
「とりあえず本と野菜」
「本?」
「カフェが落ち着いてくれば時間に余裕も出来るだろうし、子供達も本や絵本が好きみたいだから、食堂の本棚の本を町に来るたびに増やしてみようと思って」
「あぁ、取り合ってる時もあったか」
「まだ数が少ないからね。とりあえず絵本と冒険ものの小説とそれ以外の小説、園芸関係と料理関係を1冊ずつなんてどうかなって」
「いいんじゃねぇの?俺も何冊か見繕っていくかな」
そんな話をしながら本屋に入る
店主に意見を聞きながら選ぶのは楽しい
「何か多くないか?」
5冊ほどのはずが私の手元には10冊積みあがっている
1冊ずつと思っていたのに全て2冊ずつになってしまったのだ
これでも何とかそこまで減らしたんだけど…
「ロキも人のこと言えないと思うけど?」
似たような冊数を積み上げているロキと顔を見合わせて笑いあう
お互い本好きだということだ
「何にしても店としては嬉しいことだな」
店主にも笑われながら支払いを済ませて店を出た
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