94 / 317
27.定休日
3
しおりを挟む
カフェをオープンしてから最初の定休日を迎えた
2日前から客足が落ち着いてきたから、よっぽどでない限りは店も一人で回してる
元の世界でもそうしていただけにさほど苦労することもなくホッとするばかりだ
「私は今日は町に行こうと思うんだけどみんなはどうする?」
朝食を食べながら訪ねてみる
「ロベリ、ボールで遊ぼう」
「うん」
コルザの誘いに二つ返事で同意する
「僕は野菜の本を読もうかな」
ウーは前にロキが買ってきた本がお気に入りで何度も繰り返し読んでいる
「ママえほん」
リラがカメリアに向かっておねだりするように言うとカメリアは頷いていた
「じゃあ俺はゴロゴロ過ごしてみよう」
「親父初めてじゃないのか?」
「ああそうだ。実は憧れてた」
ジョンはそう言って笑った
ずっと働き詰めだったのならそういう日があるのもありがたいはず
ジョンのように休みなく働く人は多い
ソンシティヴュでは王族の立場が絶対で、それを守るための称号持ちだけが王族から必要とされている
国民への対応は全てその領土を守る領主、つまり称号持ちに一任されている
税を納める民は現状維持、納められない者は奴隷のようにこき使われる
当然のように民を守るための決まりなんかも存在しない
それが一般的なあり方だと聞いたときは、やり場のない怒りに飲まれそうになった
それでよく国が持っているものだと思わずにはいられない
「今日はマロニエが見る日だし…俺は森で狩りでもしてくるかな」
ダビアは最近この近くの森が気に入っているらしい
前に理由を聞いたら、“動きの速い魔物が多くてトレーニングになって素材も取れるから丁度いい”と返ってきた
「じゃぁ町には私…とロキ、2人で行ってくるわ」
一人でと言おうとして視線に気づいて言いなおした
食事がすんだ者から思い思いに過ごしだす
「やっぱこういう日も必要だよね」
「そうだな」
最後まで残ったロキはコーヒーを堪能しながら頷いた
いつもならカフェの仕込みを始めている時間だけに、朝からこんなにのんびり過ごすのは久しぶりだ
「お前さっき一人で行くって言おうとしただろ?」
「う…」
「絶対許さないからな?この短期間でカフェ開いてその手ごたえもある。狙われる可能性もあるって自覚しろ」
「ごめん…」
「まぁAランクだし?大抵のことは対処できるのは分かってるけどな」
俯く私の頭を大きな手がポンと叩く
ロキがよくする、手を軽く乗せるようなそれは妙に気恥しい
「すぐ行くのか?」
「ここ片付けてから」
と言っても生活魔法で一瞬で終わるけど…
ロキもわかっていても特に突っ込むことはしない
片付くのを待って立ち上がると2人で町に繰り出した
「見るのは?」
「とりあえず本と野菜」
「本?」
「カフェが落ち着いてくれば時間に余裕も出来るだろうし、子供達も本や絵本が好きみたいだから、食堂の本棚の本を町に来るたびに増やしてみようと思って」
「あぁ、取り合ってる時もあったか」
「まだ数が少ないからね。とりあえず絵本と冒険ものの小説とそれ以外の小説、園芸関係と料理関係を1冊ずつなんてどうかなって」
「いいんじゃねぇの?俺も何冊か見繕っていくかな」
そんな話をしながら本屋に入る
店主に意見を聞きながら選ぶのは楽しい
「何か多くないか?」
5冊ほどのはずが私の手元には10冊積みあがっている
1冊ずつと思っていたのに全て2冊ずつになってしまったのだ
これでも何とかそこまで減らしたんだけど…
「ロキも人のこと言えないと思うけど?」
似たような冊数を積み上げているロキと顔を見合わせて笑いあう
お互い本好きだということだ
「何にしても店としては嬉しいことだな」
店主にも笑われながら支払いを済ませて店を出た
2日前から客足が落ち着いてきたから、よっぽどでない限りは店も一人で回してる
元の世界でもそうしていただけにさほど苦労することもなくホッとするばかりだ
「私は今日は町に行こうと思うんだけどみんなはどうする?」
朝食を食べながら訪ねてみる
「ロベリ、ボールで遊ぼう」
「うん」
コルザの誘いに二つ返事で同意する
「僕は野菜の本を読もうかな」
ウーは前にロキが買ってきた本がお気に入りで何度も繰り返し読んでいる
「ママえほん」
リラがカメリアに向かっておねだりするように言うとカメリアは頷いていた
「じゃあ俺はゴロゴロ過ごしてみよう」
「親父初めてじゃないのか?」
「ああそうだ。実は憧れてた」
ジョンはそう言って笑った
ずっと働き詰めだったのならそういう日があるのもありがたいはず
ジョンのように休みなく働く人は多い
ソンシティヴュでは王族の立場が絶対で、それを守るための称号持ちだけが王族から必要とされている
国民への対応は全てその領土を守る領主、つまり称号持ちに一任されている
税を納める民は現状維持、納められない者は奴隷のようにこき使われる
当然のように民を守るための決まりなんかも存在しない
それが一般的なあり方だと聞いたときは、やり場のない怒りに飲まれそうになった
それでよく国が持っているものだと思わずにはいられない
「今日はマロニエが見る日だし…俺は森で狩りでもしてくるかな」
ダビアは最近この近くの森が気に入っているらしい
前に理由を聞いたら、“動きの速い魔物が多くてトレーニングになって素材も取れるから丁度いい”と返ってきた
「じゃぁ町には私…とロキ、2人で行ってくるわ」
一人でと言おうとして視線に気づいて言いなおした
食事がすんだ者から思い思いに過ごしだす
「やっぱこういう日も必要だよね」
「そうだな」
最後まで残ったロキはコーヒーを堪能しながら頷いた
いつもならカフェの仕込みを始めている時間だけに、朝からこんなにのんびり過ごすのは久しぶりだ
「お前さっき一人で行くって言おうとしただろ?」
「う…」
「絶対許さないからな?この短期間でカフェ開いてその手ごたえもある。狙われる可能性もあるって自覚しろ」
「ごめん…」
「まぁAランクだし?大抵のことは対処できるのは分かってるけどな」
俯く私の頭を大きな手がポンと叩く
ロキがよくする、手を軽く乗せるようなそれは妙に気恥しい
「すぐ行くのか?」
「ここ片付けてから」
と言っても生活魔法で一瞬で終わるけど…
ロキもわかっていても特に突っ込むことはしない
片付くのを待って立ち上がると2人で町に繰り出した
「見るのは?」
「とりあえず本と野菜」
「本?」
「カフェが落ち着いてくれば時間に余裕も出来るだろうし、子供達も本や絵本が好きみたいだから、食堂の本棚の本を町に来るたびに増やしてみようと思って」
「あぁ、取り合ってる時もあったか」
「まだ数が少ないからね。とりあえず絵本と冒険ものの小説とそれ以外の小説、園芸関係と料理関係を1冊ずつなんてどうかなって」
「いいんじゃねぇの?俺も何冊か見繕っていくかな」
そんな話をしながら本屋に入る
店主に意見を聞きながら選ぶのは楽しい
「何か多くないか?」
5冊ほどのはずが私の手元には10冊積みあがっている
1冊ずつと思っていたのに全て2冊ずつになってしまったのだ
これでも何とかそこまで減らしたんだけど…
「ロキも人のこと言えないと思うけど?」
似たような冊数を積み上げているロキと顔を見合わせて笑いあう
お互い本好きだということだ
「何にしても店としては嬉しいことだな」
店主にも笑われながら支払いを済ませて店を出た
57
あなたにおすすめの小説
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
オバちゃんだからこそ ~45歳の異世界珍道中~
鉄 主水
ファンタジー
子育ても一段落した40過ぎの訳あり主婦、里子。
そんなオバちゃん主人公が、突然……異世界へ――。
そこで里子を待ち構えていたのは……今まで見たことのない奇抜な珍獣であった。
「何がどうして、なぜこうなった! でも……せっかくの異世界だ! 思いっ切り楽しんじゃうぞ!」
オバちゃんパワーとオタクパワーを武器に、オバちゃんは我が道を行く!
ラブはないけど……笑いあり、涙ありの異世界ドタバタ珍道中。
いざ……はじまり、はじまり……。
※この作品は、エブリスタ様、小説家になろう様でも投稿しています。
猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める
遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】
猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。
そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。
まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。
【完結】大魔術師は庶民の味方です2
枇杷水月
ファンタジー
元侯爵令嬢は薬師となり、疫病から民を守った。
『救国の乙女』と持て囃されるが、本人はただ薬師としての職務を全うしただけだと、称賛を受け入れようとはしなかった。
結婚祝いにと、国王陛下から贈られた旅行を利用して、薬師ミュリエルと恋人のフィンは、双方の家族をバカンスに招待し、婚約式を計画。
顔合わせも無事に遂行し、結婚を許された2人は幸せの絶頂にいた。
しかし、幸せな2人を妬むかのように暗雲が漂う。襲いかかる魔の手から家族を守るため、2人は戦いに挑む。
役立たず聖女見習い、追放されたので森でマイホームとスローライフします ~召喚できるのは非生物だけ?いいえ、全部最強でした~
しおしお
ファンタジー
聖女見習いとして教会に仕えていた少女は、
「役立たず」と嘲笑され、ある日突然、追放された。
理由は単純。
彼女が召喚できるのは――タンスやぬいぐるみなどの非生物だけだったから。
森へ放り出され、夜を前に途方に暮れる中、
彼女は必死に召喚を行う。
呼び出されたのは、一体の熊のぬいぐるみ。
だがその瞬間、彼女のスキルは覚醒する。
【付喪神】――非生物に魂を宿らせる能力。
喋らないが最強の熊、
空を飛び無限引き出し爆撃を行うタンス、
敬語で語る伝説級聖剣、
そして四本足で歩き、すべてを自動化する“マイホーム”。
彼女自身は戦わない。
努力もしない。
頑張らない。
ただ「止まる場所が欲しかった」だけなのに、
気づけば魔物の軍勢は消え、
王城と大聖堂は跡形もなく吹き飛び、
――しかし人々は、なぜか生きていた。
英雄になることを拒み、
責任を背負うこともせず、
彼女は再び森へ帰る。
自動調理、自動防衛、完璧な保存環境。
便利すぎる家と、喋らない仲間たちに囲まれた、
頑張らないスローライフが、今日も続いていく。
これは、
「世界を救ってしまったのに、何もしない」
追放聖女の物語。
-
【完結】魔術師なのはヒミツで薬師になりました
すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
ティモシーは、魔術師の少年だった。人には知られてはいけないヒミツを隠し、薬師(くすし)の国と名高いエクランド国で薬師になる試験を受けるも、それは年に一度の王宮専属薬師になる試験だった。本当は普通の試験でよかったのだが、見事に合格を果たす。見た目が美少女のティモシーは、トラブルに合うもまだ平穏な方だった。魔術師の組織の影がちらつき、彼は次第に大きな運命に飲み込まれていく……。
ギルド受付嬢は今日も見送る~平凡な私がのんびりと暮らす街にやってきた、少し不思議な魔術師との日常~
弥生紗和
ファンタジー
【完結】私はギルド受付嬢のエルナ。魔物を倒す「討伐者」に依頼を紹介し、彼らを見送る毎日だ。最近ギルドにやってきたアレイスさんという魔術師は、綺麗な顔をした素敵な男性でとても優しい。平凡で代わり映えのしない毎日が、彼のおかげでとても楽しい。でもアレイスさんには何か秘密がありそうだ。
一方のアレイスは、真っすぐで優しいエルナに次第に重い感情を抱き始める――
恋愛はゆっくりと進展しつつ、アレイスの激重愛がチラチラと。大きな事件やバトルは起こりません。こんな街で暮らしたい、と思えるような素敵な街「ミルデン」の日常と、小さな事件を描きます。
大人女性向けの異世界スローライフをお楽しみください。
西洋風異世界ですが、実際のヨーロッパとは異なります。魔法が当たり前にある世界です。食べ物とかファッションとか、かなり自由に書いてます。あくまで「こんな世界があったらいいな」ということで、ご容赦ください。
※サブタイトルで「魔術師アレイス~」となっているエピソードは、アレイス側から見たお話となります。
この作品は小説家になろう、カクヨムでも公開しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる