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本編

22.商会③

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「やっぱお前は最高だ」
「え?何突然?」
「何でもない。マリオン商会がこっちでトップに立つのは予想より早くなるって思っただけだよ」
「そうなったら嬉しいけど別にトップじゃなくてもいいかな。お客さんが楽しく買い物してくれればそれでいいし」
これは正直な気持ちだ
勿論、だからと言って利益度外視など愚かなことは言わない
商会の維持にもお金はかかるしスタッフにも生活がある
品質を落とせば全てに影響が出る

「私たちが目指すのは品質を維持・向上しながら、スタッフとお客様が互いに良好な関係が築ける店づくりだもの。そこに王族も一般人も関係ないじゃない?」
「そうだな。そういう考え方ができるマリエルを愛してるよ」
そう言いながらレオンに口づけられる

「早く結婚したい」
「…私も」
婚約して一緒に住んで毎日求められて愛される
今さらレオンなしの生活など考えられない

「ミカエルがパーティーの後にしろってうるさいんだよな」
「どういう理由でなのかな?」
「さぁ…詳しいことは何も。でもその方が俺たち二人にとっていいからってそれしか言わない」
「パーティーで何かあるのかな?」
「それも不明。ただパーティーでマリエルが傷付かなきゃいいとは思うけど…」
まるで甘えるように私を抱きしめたまま呟くレオンが可愛い
言ったら拗ねるから絶対に口に出しては言わないけど

「大丈夫。何があっても返り討ちにしてあげるから。間違ってもレオンが口出したりしたらダメだからね?」
「何でだよ」
「女の闘いは女がけじめつけなきゃダメなのよ。その場では表面上だけ治まっても水面下ではドロドロなんだから」
「…シャロンがそうだったな…」
遠い目をして言うレオンに苦笑する

「そういうこと。だからレオンは全て終わった後にとどめを刺すだけで充分よ」
「分かったよ。マリエルがそう言うなら我慢する」
「ありがとレオン。大好きよ」
優しい笑みを零すレオンに私の胸も暖かくなる

「ちょっと寝る」
レオンはそう言うなり私を解放しそのまま膝に頭を乗せてきた
「ふふ…お休み」
柔らかい髪をなでながら言うとくすぐったそうに目を閉じる
少しすると静かな寝息が聞こえてきた

一緒に暮らし始めて気づいたことがいくつかある
レオンが夜眠れないということ
私以外の女性に対して驚くほど拒否反応を起こすこと
外で出された食事や飲み物に一切手を付けないこと

それらが意味するのは周りを信用していないということだ
これほどひどくなってしまうだけのことに、レオンがたった一人で耐えてきたのかと思うと心が痛む
レオンがその事を気付かれないようにしているのが分かっている為問いただしたりはしない
でもせめて、夜寝れない分、昼間こうして甘えてきたときは出来る限りゆっくり休んで欲しいと思っていた
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