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本編

17.婚約破棄②

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「思い通りに行かないからと女性に暴力を振るうとは…随分落ちぶれましたね」
「お前は…」
「レオン?お前がなぜここにいる?」
カルアとヨハンが信じられないものを前にしたように驚愕の表情を浮かべていた
閉め切った部屋に音もなく突然現れたのだから当然だろう

「大切な人を守る為、ですよ」
レオンはそう言いながら私を抱き寄せた
温かく、力強い腕の中に、私の心臓が早鐘のように打っていた
レオンに気付かれなければいいんだけど…

「マリエル、やっと言える。この先の人生を共に過ごしてほしい」
そう言いながら左手の薬指にレオンの目と同じエメラルドの石の付いた指輪がはめられた

「レオン…嬉しい…!」
流石にこのタイミングでプロポーズされると思ってなかっただけに喜びで涙が溢れてくる

「許さん…そんなこと許されるはずがないだろう!」
「なぜです?あなたは自ら婚約破棄を告げてマリエルは応じた。その時点で婚約は解消されてるし何の問題もないはずだ。最もそれ以前の問題でもありますけど」
レオンは意味ありげに笑って見せる

「どういう意味だ」
「俺とマリエルが結婚しても、インディペイト家ともアジアネス家とも関係ないということですよ」
「は?」
「何それ?意味わかんないんだけど」
ヨハンとシャロンが予想通りの反応をしてくれる

「俺もマリエルももう独立しています。両家とは何の関係もないということですね」
「何を…そんな報告は…」
「家に送らないようにお願いしましたからね。この日の為に」
「私も昨日手続きを完了しました。だから今日の式では家名は呼ばれなかったはずです」
学園にも飛び級制度を秘密裏に進めるためにすべての事情を話している
だからこそヨハンとシャロンの耳には一切の情報が入らなかったのだ

「それと同時に婚約無効の手続きもさせていただきました。婚姻無効の手続きが完了するのは明日の予定でしたけど、ヨハン様が言い出してくださったので1日早く済ませることが出来ました」
そう言いながら私たちはヨハンに独立を証明する書類を渡す

おそらく婚姻に関する言葉の意味を理解できたのはカルアだけだろう
私が婚姻無効の手続きをして完了したなら慰謝料は発生しない
でも、婚姻無効の手続きが完了する前に不貞行為の上に婚約破棄を言い出したとなれば、5000万コールの慰謝料が発生する
その金額は国が決めたものゆえに値切ることも逃れることも出来ないのだ

くだらないプライドでヨハンが言い出した婚約破棄は5000万コールと言う余分な出費を生んだことになる
当然さっきのヨハンからの宣言も魔道具で記録してるから後で追加提出するつもりだ

「独立したことはともかく…これからどうするつもりだ?」
カルアは素早く頭を切り替えたようだ

「これからですか?勿論マリエルと幸せになるつもりですよ」
「そう言う意味じゃないことくらい分かっているだろうが!」
茶化すような返答にカルアが苛立っているのが分かる

「お前だって半年前に学園を卒業したばかりだ。今までの生活は家頼りだっただろうが。独立したなら今後は援助なぞしないぞ」
その言葉にヨハンの顔がこわばりレオンは馬鹿にしたように笑った

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