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本編
12.会いたかった人③
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「最後に1点伝えとくことがある」
「…なに?」
改まった物言いによくない事だと直感が告げていた
「兄貴が決行する日が分かった」
「!」
思わずレオンを見返した
「卒業しても戻るのを許さないと言ってきたけど、来年のマリエルの卒業式の1週間前に一度帰って来いと連絡が来た」
「卒業式の1週間前…本当に直前なのね」
「そういうやつだろ?」
「まぁ…ね」
わかってはいたものの何も思わないわけではない
「ねぇ、卒業してもって、レオンは…」
「笑えるだろう?」
「でもどうやって?監視がついてるんでしょう?」
「買収した。わざと買収せずに残してあるのは俺の帰宅を確認する奴だけだな」
「それが巡回に来る人ってこと?」
「ああ。帰ってきたのを確認するための要員。それがどこからかなんて確認しちゃいない」
レオンはそう言って黒い笑みを見せた
以前は無かったその笑みにこの4年の重さを思い知る
レオンにとったら私以上に優しい環境ではなかったはずだ
「…ねぇレオン」
「ん?」
「計画、ちょっと変えてもいいかな?」
私は頭の中で計算しながらレオンに企みを告げた
「分かった。俺としては問題ない。というより大歓迎だ」
その言葉にホットする
「向こうの準備は全て俺が整えるから、マリエルはこっちの事に集中すればいい」
「…うん」
私はこれまでの、耐えて見せると約束した日からの長い日々を思い返した
意味をなさない無駄な日々を過ごしてきたことにため息が出る
それでもレオンとの約束があったから耐えてこれたのだと改めて思う
「長い間、側にいてやれなくてごめんな」
「それはレオンのせいじゃないじゃない。それに、側にいなくてもレオンはずっと寄り添ってくれてたよ?」
「…」
レオンは突然黙り込む
「レオン?」
「すべてが終わったら…」
「え?」
「…いや。その時に言うよ」
苦笑しながら言うレオンは少し辛そうな顔をした
抱きしめたい、抱きしめられたい、このまま一緒にいたい
そう思いながら、レオンの方に伸ばしそうになる手を何とか抑え込む
それをするのは今じゃない
今それをすればこれまでの時間が全て無駄になってしまうから
「これ以上一緒に居たらそのまま連れ去りたくなるからもう行くよ」
「レオ…?!」
思っていたことを見透かしたような言葉に顔に熱が集まるのが分かる
「フ…お前もそう思ってくれてるってわかっただけで充分だ。じゃぁな」
レオンはこれまでにない優しい笑みを見せてから姿を消した
嬉しさと寂しさが入り混じる
自分でもよくわからない感情を持て余しながら暫くその場から動けなかった
「…なに?」
改まった物言いによくない事だと直感が告げていた
「兄貴が決行する日が分かった」
「!」
思わずレオンを見返した
「卒業しても戻るのを許さないと言ってきたけど、来年のマリエルの卒業式の1週間前に一度帰って来いと連絡が来た」
「卒業式の1週間前…本当に直前なのね」
「そういうやつだろ?」
「まぁ…ね」
わかってはいたものの何も思わないわけではない
「ねぇ、卒業してもって、レオンは…」
「笑えるだろう?」
「でもどうやって?監視がついてるんでしょう?」
「買収した。わざと買収せずに残してあるのは俺の帰宅を確認する奴だけだな」
「それが巡回に来る人ってこと?」
「ああ。帰ってきたのを確認するための要員。それがどこからかなんて確認しちゃいない」
レオンはそう言って黒い笑みを見せた
以前は無かったその笑みにこの4年の重さを思い知る
レオンにとったら私以上に優しい環境ではなかったはずだ
「…ねぇレオン」
「ん?」
「計画、ちょっと変えてもいいかな?」
私は頭の中で計算しながらレオンに企みを告げた
「分かった。俺としては問題ない。というより大歓迎だ」
その言葉にホットする
「向こうの準備は全て俺が整えるから、マリエルはこっちの事に集中すればいい」
「…うん」
私はこれまでの、耐えて見せると約束した日からの長い日々を思い返した
意味をなさない無駄な日々を過ごしてきたことにため息が出る
それでもレオンとの約束があったから耐えてこれたのだと改めて思う
「長い間、側にいてやれなくてごめんな」
「それはレオンのせいじゃないじゃない。それに、側にいなくてもレオンはずっと寄り添ってくれてたよ?」
「…」
レオンは突然黙り込む
「レオン?」
「すべてが終わったら…」
「え?」
「…いや。その時に言うよ」
苦笑しながら言うレオンは少し辛そうな顔をした
抱きしめたい、抱きしめられたい、このまま一緒にいたい
そう思いながら、レオンの方に伸ばしそうになる手を何とか抑え込む
それをするのは今じゃない
今それをすればこれまでの時間が全て無駄になってしまうから
「これ以上一緒に居たらそのまま連れ去りたくなるからもう行くよ」
「レオ…?!」
思っていたことを見透かしたような言葉に顔に熱が集まるのが分かる
「フ…お前もそう思ってくれてるってわかっただけで充分だ。じゃぁな」
レオンはこれまでにない優しい笑みを見せてから姿を消した
嬉しさと寂しさが入り混じる
自分でもよくわからない感情を持て余しながら暫くその場から動けなかった
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