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41.始めての納品
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5月の半ばから雨期に入っていたミュラーリアは6月に入りようやく湿度の低い日々を迎えていた
「サラサお姉ちゃん早く」
バルドがはしゃいでいた
昨日ようやく売り物になるものが5つ揃ったため今日初めて納品に行くのだ
「気を付けてね」
「うん!行ってきます」
ナターシャさんたちに見送られてバルドと2人町に向かう
「雨期が過ぎて丁度良かった」
「道渇いてるもんね。でもこれから暑くなる」
「そうね。だけど薬草がたくさん育つわ」
この世界ではこの時期が一番植物の成長が早い
ため込んだ水分を全て成長に費やすかのように日に日に育つのが見て取れるので面白いのだ
「僕いっぱい採取する」
「バルドも随分覚えたものね?」
毎日のように庭の薬草を見ているバルドはかなり詳しくなっていた
名前や見た目の特徴だけでなく効能まで図鑑とにらめっこしながら一生懸命覚えている様は見ていて微笑ましい
最近ではマリクやリアムの質問に答えるために知識を取り込んでいるようにも見えるけど…
理由はどうあれ出来ることを精いっぱいする
それはバルドの素晴らしい長所だ
「サラサ姉ちゃんはどうして薬草のお茶飲まないの?」
バルドが思い出したかのように尋ねた
「普段なら飲むんだけどね。薬草のお茶は妊娠中はあまりよくないのよ」
「そんなこと書いてなかったよ?」
「そうね。でもお茶として飲むこと自体書いてないでしょう?」
「そういえば…僕もサラサ姉ちゃんから聞いただけだ」
「ここでは薬草はお薬として飲むものでしょう?でも私が育った場所では料理にもお茶にも使ってた。その中で妊娠中は控えたほうがいいものが沢山見つかったのよ」
「ふーん…」
バルドは興味深そうに聞いている
「まぁ妊娠中はお薬自体控えたほうがいいんだけどね」
「どうして?」
「そうねぇ…バルドが眠れないほど苦しい状態を治すお薬をお腹の中の小さな子に与えてしまったらどうなると思う?」
「…多すぎる?」
「そう多すぎて効き目がきつすぎるの。効きすぎるだけならいいけど薬は多すぎるとひどい時は死んでしまったり後遺症が残ってしまうこともあるの」
「んー」
よくわからないという顔だ
「例えばね。レイが食べてるご飯を全てバルドが食べたらどうなる?」
「多すぎて食べられないよ?」
「それを無理やり食べさせられるのと同じようなことがお腹の中の子どもに起こるの」
「そんなのだめだよ!」
バルドは思わず大きな声で言っていた
「ふふ…だからね、妊娠中はお薬は出来るだけ飲まない方がいいのよ」
「…わかった。でもどうしても飲まなきゃいけないときは?」
「そういう時はきちんとお医者様と相談して決めるのが大事ね。図鑑に載ってるのはあくまで薬草としての側面でしかないの。もちろん薬草を採取するっていう意味では十分な情報だけど人の体はとても複雑だからきちんと勉強したお医者様に任せるのが一番よ」
「うん。僕ちゃんと覚えとく」
本当に素直で先が楽しみな子だ
「バルドちょっと待って」
「ん?」
バルドを呼び止め道端に群生している草の中から1本を採取する
「これは?」
バルドが初めて見たと首を傾げる
「後でバルドにあげるわ。帰ってから図鑑で調べてみなさい」
「薬草なの?」
「当たり。あの図鑑にもちゃんと載ってるわよ」
そう言うとワクワクしているのが見て取れる
「本当に薬草にはまったわね?」
「うん。実際に手に出来るから余計かな?サラサ姉ちゃんのおかげで育てることも出来るし、サラサ姉ちゃんの手で色んな姿になるのを見てると楽しい」
「色んな姿?」
「お茶とか料理とか…石鹸とか」
「あぁ…そういう意味ね」
それが姿を変えるととらえるのかと驚いた
「この竹細工ももっといろんな形にできるんでしょ?」
「できるわよ。細工は少し変えるだけで別の物が出来るから沢山の可能性があるわね」
「僕でも考えれると思う?」
「そうね。アイデアを考えるのは向き不向きがあるけどまだ3種類しかないからね。バルドなら薬草の花の部分をイメージしながら考えたら色々浮かぶかもしれないわね」
「薬草の花…そっか…何もないところから考える必要はないんだね?」
「そういうこと。よくわかったわね」
本当に聡い子だ
教えれば教えるだけ吸収していく
それにきっかけになる情報を与えれば自分で答えを見つける力もある
「薬草と細工物が繋がるなんて思いもしなかったよ?」
「無駄な知識は無いって言うからね。どこで役に立つか分からなくても、いろんなことを自分の中に吸収しておくと思わぬところで繋がったりするのよ」
「本の知識でも?」
「もちろんよ」
そんな話をしているうちにお店についた
「サラサお姉ちゃん早く」
バルドがはしゃいでいた
昨日ようやく売り物になるものが5つ揃ったため今日初めて納品に行くのだ
「気を付けてね」
「うん!行ってきます」
ナターシャさんたちに見送られてバルドと2人町に向かう
「雨期が過ぎて丁度良かった」
「道渇いてるもんね。でもこれから暑くなる」
「そうね。だけど薬草がたくさん育つわ」
この世界ではこの時期が一番植物の成長が早い
ため込んだ水分を全て成長に費やすかのように日に日に育つのが見て取れるので面白いのだ
「僕いっぱい採取する」
「バルドも随分覚えたものね?」
毎日のように庭の薬草を見ているバルドはかなり詳しくなっていた
名前や見た目の特徴だけでなく効能まで図鑑とにらめっこしながら一生懸命覚えている様は見ていて微笑ましい
最近ではマリクやリアムの質問に答えるために知識を取り込んでいるようにも見えるけど…
理由はどうあれ出来ることを精いっぱいする
それはバルドの素晴らしい長所だ
「サラサ姉ちゃんはどうして薬草のお茶飲まないの?」
バルドが思い出したかのように尋ねた
「普段なら飲むんだけどね。薬草のお茶は妊娠中はあまりよくないのよ」
「そんなこと書いてなかったよ?」
「そうね。でもお茶として飲むこと自体書いてないでしょう?」
「そういえば…僕もサラサ姉ちゃんから聞いただけだ」
「ここでは薬草はお薬として飲むものでしょう?でも私が育った場所では料理にもお茶にも使ってた。その中で妊娠中は控えたほうがいいものが沢山見つかったのよ」
「ふーん…」
バルドは興味深そうに聞いている
「まぁ妊娠中はお薬自体控えたほうがいいんだけどね」
「どうして?」
「そうねぇ…バルドが眠れないほど苦しい状態を治すお薬をお腹の中の小さな子に与えてしまったらどうなると思う?」
「…多すぎる?」
「そう多すぎて効き目がきつすぎるの。効きすぎるだけならいいけど薬は多すぎるとひどい時は死んでしまったり後遺症が残ってしまうこともあるの」
「んー」
よくわからないという顔だ
「例えばね。レイが食べてるご飯を全てバルドが食べたらどうなる?」
「多すぎて食べられないよ?」
「それを無理やり食べさせられるのと同じようなことがお腹の中の子どもに起こるの」
「そんなのだめだよ!」
バルドは思わず大きな声で言っていた
「ふふ…だからね、妊娠中はお薬は出来るだけ飲まない方がいいのよ」
「…わかった。でもどうしても飲まなきゃいけないときは?」
「そういう時はきちんとお医者様と相談して決めるのが大事ね。図鑑に載ってるのはあくまで薬草としての側面でしかないの。もちろん薬草を採取するっていう意味では十分な情報だけど人の体はとても複雑だからきちんと勉強したお医者様に任せるのが一番よ」
「うん。僕ちゃんと覚えとく」
本当に素直で先が楽しみな子だ
「バルドちょっと待って」
「ん?」
バルドを呼び止め道端に群生している草の中から1本を採取する
「これは?」
バルドが初めて見たと首を傾げる
「後でバルドにあげるわ。帰ってから図鑑で調べてみなさい」
「薬草なの?」
「当たり。あの図鑑にもちゃんと載ってるわよ」
そう言うとワクワクしているのが見て取れる
「本当に薬草にはまったわね?」
「うん。実際に手に出来るから余計かな?サラサ姉ちゃんのおかげで育てることも出来るし、サラサ姉ちゃんの手で色んな姿になるのを見てると楽しい」
「色んな姿?」
「お茶とか料理とか…石鹸とか」
「あぁ…そういう意味ね」
それが姿を変えるととらえるのかと驚いた
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「できるわよ。細工は少し変えるだけで別の物が出来るから沢山の可能性があるわね」
「僕でも考えれると思う?」
「そうね。アイデアを考えるのは向き不向きがあるけどまだ3種類しかないからね。バルドなら薬草の花の部分をイメージしながら考えたら色々浮かぶかもしれないわね」
「薬草の花…そっか…何もないところから考える必要はないんだね?」
「そういうこと。よくわかったわね」
本当に聡い子だ
教えれば教えるだけ吸収していく
それにきっかけになる情報を与えれば自分で答えを見つける力もある
「薬草と細工物が繋がるなんて思いもしなかったよ?」
「無駄な知識は無いって言うからね。どこで役に立つか分からなくても、いろんなことを自分の中に吸収しておくと思わぬところで繋がったりするのよ」
「本の知識でも?」
「もちろんよ」
そんな話をしているうちにお店についた
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サラサ達の子供達の冒険はこちら
■チートな親から生まれたのは「規格外」でした
この機会にご一読いただけると嬉しいです
■召喚に巻き込まれたけど元の世界に戻れないのでこの世界を楽しもうと思います(長編/ファンタジー)
■ボクはキミが好き。その一言で奪われた未来を取り返します(短編/恋愛)
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