[完結]ある日突然『異世界を発展させて』と頼まれました

真那月 凜

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作り始めて3日目
ようやく子供たち用の小さな籠と、ランディさんに持って行く3種類を作り終えた

「お、これギルドにあるようなヤツだな?」
カルムさんが食いついた

「そうなのよ。サラサちゃん、例の材料で作っちゃったのよね」
「まじか?それが出まわりゃみんな助かるだろ」
「だよね。採取の時に籠があれば凄い楽だし…」
「そんなに変わる?」
私は気にしたことが無かっただけに首を傾げる

「あぁ、レイもサラサもインベントリがあるから気にならないか」
カルムさんがそう言いながらレイを見る

「持ち帰りで一番困るんだよ」
「持ち帰り?」
「そ。密閉容器に入れると萎れるか腐る。かといってそのままカバンに入れたら潰れる」
「あ・・・」
確かにその通りだ
インベントリは鮮度そのままで保てるから気にもならなかった

「そういう籠があれば2つ使えば容器にもなるだろ」
「閉じても通気性は保てるしカバンに入れても潰れないってことね」
「なるほどね…」
答えながら私の中では籠以外のイメージが浮かんでいた
カバンの中にいれるなら片方は平らな方がいいのでは?いや、むしろ箱型とか?

「…お前何考えてる?」
「え?」
「何か企んでる顔」
レイがじっとこっちを見ている

「え…っと、企んでるって言うかどうせなら平らに近いの作って蓋にした方がカバンに入れやすいかなって」
「「「!」」」
3人が顔を見合わせる

「もしくは四角くして片方を蓋にする?サイズ変えれば高さの部分が削れるし…」
私は取り出した紙に絵を描いた
俗に言うお道具箱のような感じだ

「2つのかごが1つのサイズに収まるってことか?」
「まぁそうなるね」
荷物をコンパクトに収めるのは冒険者には喜ばれる
薬草など籠いっぱい集めるのは不可能に近い
2人で集めたのを1つにまとめてもいっぱいになることはないだろう
いっそのことマトリョーシカのように纏めれるようにしてみるのも面白いかもしれない
というか今度マトリョーシカ作ってみようかな…

そんなことを考えているとどうやら顔がにやけていたらしい
「企んでるのが駄々洩れだ」
レイが呆れたように言う

「何を考えてるかは出来上がってからの楽しみにしとくけど…無理だけはすんなよ?」
「出た過保護」
ナターシャさんがからかうように言う

「しゃーねぇだろ。バルドより性質悪いんだから」
「えー?それ酷くない?」
「言い返すなら寝込まなくなってからにしてくれ」
「うぅ…」
ごもっともな言葉にそれ以上言い返すことは出来なかった

「はは…サラサの負けだな。何にしてもひとまずはこの1種類、3サイズで浸透させた方がいいだろ」
「そうね。ある程度広まってから新しい形、が無難でしょうね」
カルムさんに続きナターシャさんが言う

「ランディさんが喜ぶね」
「既に次の候補があるからな。まぁあいつも周りの為に色々頑張ってっから、たまにはそういうがあってもいいんじゃないか?」
ランディさんは孤児院にかなり貢献しているうちの1人だ
家族は奥さんと息子さんが2人
でも3人は10年前に魔物に襲われて亡くなったらしい
それ以来、大切な人を持ちたくないと再婚もせず一人で店を続ける一方で孤児院の子供達を可愛がっているのだ

「採取用の籠、真っ先に寄付してそうだよね」
「…するだろうな」
孤児院の子供達が採取依頼を受けてるのは今では有名な話になっている
通りがかった冒険者がその場で見つけた薬草を手渡す姿を見るのも珍しくない
大抵子供たちが手に握りしめて帰ってくるもののそれでは傷んでしまうのも事実だ
籠があれば傷みも少なく売値も多少上がる事だろう
わずかな差とは言え、基本的に支援や寄付で賄っている孤児院としては、少しでも多く自分たちで何とかしたいという思いが強いだけに喜ばれるのは目に見えている

それにしてもやはりこの世界では生活に直結した案が先に出るのだと気づく
元の世界ならこんな籠はどちらかと言えば小物入れてとしての用途の方が大きかったし、それに見合った形の方が受け入れられやすかったはず
こんなところにも違いがあるのだとちょっと楽しくなる

「どうした?」
「大したことじゃないの。ただ…元の世界との違いを楽しめるようになってきたなって思って」
「…そうか」
一瞬言葉を飲んだレイが次の瞬間見せたのは嬉しそうな笑みだった

翌日ランディさんに試作品を持ち込むと大歓迎されたのは言うまでもない
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