[完結]ある日突然『異世界を発展させて』と頼まれました

真那月 凜

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30.レイの誕生日

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5時を回ると私たちは夕食の準備に取り掛かった
その間子供たちは男性陣が相手してくれている
トータさんとアランさんも面倒見がよくて、トータさんに至っては子供と同じレベルで遊んでいるようにも見える

「サラサちゃん、お鍋にそれも入れるの?」
うどんの麺を作っているとナターシャさんが尋ねてくる

「そう。野菜とお肉のおかげで出汁が美味しいから丁度いいの」
「なるほどねぇ…で、こっちのお米は?」
「それは締めで雑炊にする為ね。すっごくおいしいから楽しみにしてて」
「サラサちゃんがそこまで言うなら相当ね」
ナターシャさんは楽しそうに言いながら白菜をひたすら削ぎ切りしている

「何かすげーいい匂いしてんだけど」
トータさんが鼻をひくひくさせながらそう言うのを子供たちが真似ている

「もうすぐできるよ」
「マリク、リアム、これ運んで頂戴」
お皿やカトラリーを渡すと何も言わなくても2つのテーブルに分けて置いていく

メリッサさんがサラダの仕上げをしている間に私はコンロの魔道具をセットし、それぞれのテーブルの両端に色んな料理を盛ったプレートを置いていく

「スゲーなおい」
カルムさんが半分呆れたように言った

「俺も見たことないのがいっぱいあるんだけど?」
「そういうのを選んだもの」
驚くレイに笑って返す

「で、メインはこれね」
食べごろになった野菜とお肉の入ったお鍋をコンロの上に設置する

「これは?」
「お鍋って言ってね、お出汁の中に野菜やお肉、魚なんかも入れて食べるの」
「いい匂いしてたのはこれか?」
「そうだよ。お鍋は大勢でつつきながら食べたほうが楽しくて美味しいの。バーベキューみたいな感じかな」
「あぁ、だからみんなを呼んだのか?」
「あたりー」
説明し終えた頃にメリッサさんが4つの器に盛ったサラダを持ってきて鍋を挟んで置いていく

「では改めて、レイの誕生日を祝って!」
「「「「「「「「乾杯」」」」」」」」
皆でグラスを掲げそう言うとパーティーの始まりだ
カルムさん一家の中にトータさんが混ざり、もう一つのテーブルはアランさんとメリッサさん、レイと私が囲んでいる

「これはいいな。野菜がうまいし何より体があったまる」
レイは白菜をやたらと食べている
うん。その気持ちはよくわかる

「ママお野菜巻いたのもっと食べたい」
マリクがベジ春巻きのお替りを望む
最近食べる量が一気に増えているのは気のせいだろうか…

「そろそろおうどん入れるね。お出汁の色がついてきたら食べごろだから」
そう言いながら2つの鍋にうどんを投入していく
補充用の野菜や肉がもう空になっていたので丁度いいタイミングだったようだ

「普段のうどんもいいけどこれはまた違った旨味があるな?」
「でしょう?肉や野菜から色んな旨味が出てるからね。お鍋の中のうどんと野菜が片付いたら締めの雑炊を作るね」
「雑炊も?」
「もういらないなら辞めとくけど…」
「いや、いる」
レイの即答にみんなが笑い出す

「サラサにしては珍しく量が少ないと思ったらそういうことだったんだな」
「途中でうどん入るし最後は米入れるとか…俺には到底考えつかない」
カルムさんに続きアランさんがしみじみと言う

「レイのおかげで俺らの食生活は随分いいものになったよな」
「レイの?サラサちゃんじゃなく?」
ナターシャさんが首を傾げる

「レイがいつものように憲兵に頼まなかったからな。憲兵に頼んでたらサラサは今頃王家の道具になってたかもしれない」
「そういえばそうよね…最初から手元に置くなんて珍しい事してたおかげと言えなくはないか」
「…確かに最初から特別ではあったな」
「レイ…」
思わずレイを見ると優しい眼差しが返ってくる

「こんな風に祝ってもらえるとは思ってなかった。ありがとな」
レイの言葉に首を横に振る

「こうして皆で色んなことお祝いするなんて、サラサちゃんが来るまでは考えられなかったものね」
「これからも皆でたくさんの事お祝いしながら沢山の想いで作っていきたいね」
ナターシャさんとメリッサさんの言葉にみんなが笑顔を見せてくれる
私はもう一人じゃない
レイとシア、そしてみんなと沢山の事を共有しているのだと思える
そんな幸せなパーティーは夜中まで続いた
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