90 / 199
22.梅雨
3
しおりを挟む
「ママお腹すいたー」
マリクがトータさんと手をつないで駆け寄ってきた
「あら?マリクがお腹すいたの?それともトータに言わされた?」
「どっちも!」
「え?おい、マリク…」
ナターシャさんの問いにマリクがそう言った途端トータさんが少し慌てていた
「あはは。じゃぁご飯にしよっか」
私は笑いながらまず敷物を数枚取り出した
「これは?」
「地面に敷いてね―」
「地面に?」
「そ。昨日までずっと雨だったからそのまま座ったら地面から水がしみ出て来ちゃうでしょ」
「なるほど…これはいいな」
カルムさんが1枚を手に取りまじまじと見ている
「カルムさん依頼に持って行くならそのまま持っててくれてもいいよ?あ、でもレイも持ってるよね」
「ああ。前に3枚くらい貰ったな。結構便利だぞ?木に括り付けて屋根代わりにしたりも出来るし」
「なるほど。雨避けにも日よけにも使えるってことか。これは登録してないのか?」
「登録って…ただのシートよ?」
私は唖然とする
なぜならこれは特に作ったものでもないからだ
「しかもこれ生地を大量に買った時の包み紙なんだけど」
「あぁ、雨の日に包んでくれるやつ?」
「そうそれ」
メリッサさんの言葉に頷きながらお弁当を取り出しマリクに渡していく
マリクはシートのある場所に上手に分散して置いていく
「私ももらったことあるけどそのまま捨ててたわ…」
「確か店の方も仕入れた時の包みだからって適当なサイズに切って使ってるはずよね?」
「そうだったと思うけど…それならお店の人に教えてあげればいいかもね」
「は?」
「今までゴミ同然だったものが商品に変わるかもしれないじゃない?」
私はそう考えただけで少し楽しくなってきた
「防水性あるしこれでバッグ作ってもいいかもね」
「それは雨の日に助かるわ。マジックバッグがあれば問題ないんだろうけど」
「まぁ普通は持ってないもんな。迷宮でGetするか大金はたいて買うか…」
「どっちにしても金持ちか高ランクの冒険者しか持てねぇか」
皆が口々に言う
でもお弁当を堪能するのは忘れていないようで、マリクとトータさんは2人で競争するかのように掻き込んでいる
「じゃぁ今度行った時にモリスさんに話してみよっかな」
「モリスさんなら勝手に判断してサラサちゃん名義で登録するわね」
「え?」
メリッサさんの言葉に変な声が出てしまう
「ほら、サラサちゃんモリスさんとこで買い物した時に作ったもの見せてってよく言われてるでしょう?」
「あー確かに。大抵欲しがられるからあげてるけど」
「ふふ…多分そのいくつかは登録されてるわよ」
「そうなの?全然知らなかった…」
「何かね、職人さんやお店の人たちの間で暗黙の了解みたいなのよね。サラサちゃんが教えてくれたものは結構登録してるみたいで、ギルド側もサラサちゃんのに関してはノーチェックで登録受け付ける指示が出てるしね」
メリッサさんは驚くことを平気な顔で言っている
「あー多分それ俺のせいだ」
「レイの?」
「あぁ。前に相談されたんだよ。お前いくつか置いてくるけど金受け取らねぇだろ?」
「そりゃぁ…お金貰うようなものでもないし…」
「店側に取ったら稼げるもんが結構あるみたいでな。でも貰ったもんを元に稼ぐのは気が引けるって相談されたんだよ。だから稼ぎたいものは登録しとけばって」
「…それで通用するもの?」
「損する奴がいないからな。マージンとかは店側が勝手に決めてるみたいだし、ギルド長もそれで構わないって言うからさ」
レイはサラッと言う
何かもうこの世界の基準がよくわからなくなってきたかも…
これ以上考えるのは放棄しよう。でも…
「時々明細確認しといたほうがよさそう…」
「はは。お前確認しとけっつってもしないもんな」
「あ、まさかそれが分かってて…?」
「それもあるな。ギルドも皆も喜んでるからいいんじゃねぇの?」
そう言って笑うレイや皆を見ていると本当にどうでもいいと思えてきたから不思議だ
「あ、メリッサ」
「ん?」
「マジックバッグいるなら余ってるぞ」
カルムさんが言う
「あぁ、こないだ迷宮で出たやつ?」
「それ。いるなら使えよ。他はみんな持ってるから」
「もらえるのは嬉しいけど本当にいいの?売ったら結構いい金額になると思うけど…」
「何を今さら。誰も金には困ってねぇよ」
その言葉にメリッサさんはアランさんを見る
「もらっとけよ」
「うん…じゃぁありがたく貰っとくね」
戸惑いつつも嬉しそうだ
「パパ僕は?」
「お前はまだ早いな」
「えー僕も欲しいよー」
マリクが拗ねてナターシャさんの元に向かう
「そうねぇ…じゃぁマリクにはマリクだけのバッグを作ってもらおうか」
「僕だけの?」
「そう。世界に一つしかないバッグを…サラサちゃんに」
「私?」
突然振られて少々面食らう
「…だめ?」
うん。マリクのおねだりには勝てない
「わかった。引き受けましょう」
そう答えるとマリクは大喜びし、みんなは笑っていた
マリクがトータさんと手をつないで駆け寄ってきた
「あら?マリクがお腹すいたの?それともトータに言わされた?」
「どっちも!」
「え?おい、マリク…」
ナターシャさんの問いにマリクがそう言った途端トータさんが少し慌てていた
「あはは。じゃぁご飯にしよっか」
私は笑いながらまず敷物を数枚取り出した
「これは?」
「地面に敷いてね―」
「地面に?」
「そ。昨日までずっと雨だったからそのまま座ったら地面から水がしみ出て来ちゃうでしょ」
「なるほど…これはいいな」
カルムさんが1枚を手に取りまじまじと見ている
「カルムさん依頼に持って行くならそのまま持っててくれてもいいよ?あ、でもレイも持ってるよね」
「ああ。前に3枚くらい貰ったな。結構便利だぞ?木に括り付けて屋根代わりにしたりも出来るし」
「なるほど。雨避けにも日よけにも使えるってことか。これは登録してないのか?」
「登録って…ただのシートよ?」
私は唖然とする
なぜならこれは特に作ったものでもないからだ
「しかもこれ生地を大量に買った時の包み紙なんだけど」
「あぁ、雨の日に包んでくれるやつ?」
「そうそれ」
メリッサさんの言葉に頷きながらお弁当を取り出しマリクに渡していく
マリクはシートのある場所に上手に分散して置いていく
「私ももらったことあるけどそのまま捨ててたわ…」
「確か店の方も仕入れた時の包みだからって適当なサイズに切って使ってるはずよね?」
「そうだったと思うけど…それならお店の人に教えてあげればいいかもね」
「は?」
「今までゴミ同然だったものが商品に変わるかもしれないじゃない?」
私はそう考えただけで少し楽しくなってきた
「防水性あるしこれでバッグ作ってもいいかもね」
「それは雨の日に助かるわ。マジックバッグがあれば問題ないんだろうけど」
「まぁ普通は持ってないもんな。迷宮でGetするか大金はたいて買うか…」
「どっちにしても金持ちか高ランクの冒険者しか持てねぇか」
皆が口々に言う
でもお弁当を堪能するのは忘れていないようで、マリクとトータさんは2人で競争するかのように掻き込んでいる
「じゃぁ今度行った時にモリスさんに話してみよっかな」
「モリスさんなら勝手に判断してサラサちゃん名義で登録するわね」
「え?」
メリッサさんの言葉に変な声が出てしまう
「ほら、サラサちゃんモリスさんとこで買い物した時に作ったもの見せてってよく言われてるでしょう?」
「あー確かに。大抵欲しがられるからあげてるけど」
「ふふ…多分そのいくつかは登録されてるわよ」
「そうなの?全然知らなかった…」
「何かね、職人さんやお店の人たちの間で暗黙の了解みたいなのよね。サラサちゃんが教えてくれたものは結構登録してるみたいで、ギルド側もサラサちゃんのに関してはノーチェックで登録受け付ける指示が出てるしね」
メリッサさんは驚くことを平気な顔で言っている
「あー多分それ俺のせいだ」
「レイの?」
「あぁ。前に相談されたんだよ。お前いくつか置いてくるけど金受け取らねぇだろ?」
「そりゃぁ…お金貰うようなものでもないし…」
「店側に取ったら稼げるもんが結構あるみたいでな。でも貰ったもんを元に稼ぐのは気が引けるって相談されたんだよ。だから稼ぎたいものは登録しとけばって」
「…それで通用するもの?」
「損する奴がいないからな。マージンとかは店側が勝手に決めてるみたいだし、ギルド長もそれで構わないって言うからさ」
レイはサラッと言う
何かもうこの世界の基準がよくわからなくなってきたかも…
これ以上考えるのは放棄しよう。でも…
「時々明細確認しといたほうがよさそう…」
「はは。お前確認しとけっつってもしないもんな」
「あ、まさかそれが分かってて…?」
「それもあるな。ギルドも皆も喜んでるからいいんじゃねぇの?」
そう言って笑うレイや皆を見ていると本当にどうでもいいと思えてきたから不思議だ
「あ、メリッサ」
「ん?」
「マジックバッグいるなら余ってるぞ」
カルムさんが言う
「あぁ、こないだ迷宮で出たやつ?」
「それ。いるなら使えよ。他はみんな持ってるから」
「もらえるのは嬉しいけど本当にいいの?売ったら結構いい金額になると思うけど…」
「何を今さら。誰も金には困ってねぇよ」
その言葉にメリッサさんはアランさんを見る
「もらっとけよ」
「うん…じゃぁありがたく貰っとくね」
戸惑いつつも嬉しそうだ
「パパ僕は?」
「お前はまだ早いな」
「えー僕も欲しいよー」
マリクが拗ねてナターシャさんの元に向かう
「そうねぇ…じゃぁマリクにはマリクだけのバッグを作ってもらおうか」
「僕だけの?」
「そう。世界に一つしかないバッグを…サラサちゃんに」
「私?」
突然振られて少々面食らう
「…だめ?」
うん。マリクのおねだりには勝てない
「わかった。引き受けましょう」
そう答えるとマリクは大喜びし、みんなは笑っていた
42
お気に入りに追加
833
あなたにおすすめの小説
その幼女、最強にして最恐なり~転生したら幼女な俺は異世界で生きてく~
たま(恥晒)
ファンタジー
※作者都合により打ち切りとさせて頂きました。新作12/1より!!
猫刄 紅羽
年齢:18
性別:男
身長:146cm
容姿:幼女
声変わり:まだ
利き手:左
死因:神のミス
神のミス(うっかり)で死んだ紅羽は、チートを携えてファンタジー世界に転生する事に。
しかしながら、またもや今度は違う神のミス(ミス?)で転生後は正真正銘の幼女(超絶可愛い ※見た目はほぼ変わってない)になる。
更に転生した世界は1度国々が発展し過ぎて滅んだ世界で!?
そんな世界で紅羽はどう過ごして行くのか...
的な感じです。
転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。
襲
ファンタジー
〈あらすじ〉
信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。
目が覚めると、そこは異世界!?
あぁ、よくあるやつか。
食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに……
面倒ごとは御免なんだが。
魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。
誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。
やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。
余命半年のはずが?異世界生活始めます
ゆぃ♫
ファンタジー
静波杏花、本日病院で健康診断の結果を聞きに行き半年の余命と判明…
不運が重なり、途方に暮れていると…
確認はしていますが、拙い文章で誤字脱字もありますが読んでいただけると嬉しいです。
転移先で世直しですか?いいえただのお散歩です
こうたろう
ファンタジー
小説家になろう にも 投稿中
同作品の加筆修正版になります。
建設現場の事故で死亡したかとおもいきや、見知らぬ場所で気がついた主人公 僕です。
そこは異世界の森の中
与えられた目的は寿命が尽きるまで
生きる事なの?
ファンタジーな世界の現実を見ながら
する事は世直し旅か
はたまた、ただの散歩的旅行か
異世界常識なにそれ?美味しいの?
口の悪いミニ女神様と
個性的な仲間達に囲まれながら
のんびり楽しく
刺激的な異世界旅行をするお話です
荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明
まったりー
ファンタジー
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。
そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。
その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。
料理スキルで完璧な料理が作れるようになったから、異世界を満喫します
黒木 楓
恋愛
隣の部屋の住人というだけで、女子高生2人が行った異世界転移の儀式に私、アカネは巻き込まれてしまう。
どうやら儀式は成功したみたいで、女子高生2人は聖女や賢者といったスキルを手に入れたらしい。
巻き込まれた私のスキルは「料理」スキルだけど、それは手順を省略して完璧な料理が作れる凄いスキルだった。
転生者で1人だけ立場が悪かった私は、こき使われることを恐れてスキルの力を隠しながら過ごしていた。
そうしていたら「お前は不要だ」と言われて城から追い出されたけど――こうなったらもう、異世界を満喫するしかないでしょう。
疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!
ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。
退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた!
私を陥れようとする兄から逃れ、
不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。
逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋?
異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。
この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?
キャンプに行ったら異世界転移しましたが、最速で保護されました。
新条 カイ
恋愛
週末の休みを利用してキャンプ場に来た。一歩振り返ったら、周りの環境がガラッと変わって山の中に。車もキャンプ場の施設もないってなに!?クマ出現するし!?と、どうなることかと思いきや、最速でイケメンに保護されました、
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる