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22.梅雨

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「ママお腹すいたー」
マリクがトータさんと手をつないで駆け寄ってきた

「あら?マリクがお腹すいたの?それともトータに言わされた?」
「どっちも!」
「え?おい、マリク…」
ナターシャさんの問いにマリクがそう言った途端トータさんが少し慌てていた

「あはは。じゃぁご飯にしよっか」
私は笑いながらまず敷物を数枚取り出した

「これは?」
「地面に敷いてね―」
「地面に?」
「そ。昨日までずっと雨だったからそのまま座ったら地面から水がしみ出て来ちゃうでしょ」
「なるほど…これはいいな」
カルムさんが1枚を手に取りまじまじと見ている

「カルムさん依頼に持って行くならそのまま持っててくれてもいいよ?あ、でもレイも持ってるよね」
「ああ。前に3枚くらい貰ったな。結構便利だぞ?木に括り付けて屋根代わりにしたりも出来るし」
「なるほど。雨避けにも日よけにも使えるってことか。これは登録してないのか?」
「登録って…ただのシートよ?」
私は唖然とする
なぜならこれは特に作ったものでもないからだ

「しかもこれ生地を大量に買った時の包み紙なんだけど」
「あぁ、雨の日に包んでくれるやつ?」
「そうそれ」
メリッサさんの言葉に頷きながらお弁当を取り出しマリクに渡していく
マリクはシートのある場所に上手に分散して置いていく

「私ももらったことあるけどそのまま捨ててたわ…」
「確か店の方も仕入れた時の包みだからって適当なサイズに切って使ってるはずよね?」
「そうだったと思うけど…それならお店の人に教えてあげればいいかもね」
「は?」
「今までゴミ同然だったものが商品に変わるかもしれないじゃない?」
私はそう考えただけで少し楽しくなってきた

「防水性あるしこれでバッグ作ってもいいかもね」
「それは雨の日に助かるわ。マジックバッグがあれば問題ないんだろうけど」
「まぁ普通は持ってないもんな。迷宮でGetするか大金はたいて買うか…」
「どっちにしても金持ちか高ランクの冒険者しか持てねぇか」
皆が口々に言う
でもお弁当を堪能するのは忘れていないようで、マリクとトータさんは2人で競争するかのように掻き込んでいる

「じゃぁ今度行った時にモリスさんに話してみよっかな」
「モリスさんなら勝手に判断してサラサちゃん名義で登録するわね」
「え?」
メリッサさんの言葉に変な声が出てしまう

「ほら、サラサちゃんモリスさんとこで買い物した時に作ったもの見せてってよく言われてるでしょう?」
「あー確かに。大抵欲しがられるからあげてるけど」
「ふふ…多分そのいくつかは登録されてるわよ」
「そうなの?全然知らなかった…」
「何かね、職人さんやお店の人たちの間で暗黙の了解みたいなのよね。サラサちゃんが教えてくれたものは結構登録してるみたいで、ギルド側もサラサちゃんのに関してはノーチェックで登録受け付ける指示が出てるしね」
メリッサさんは驚くことを平気な顔で言っている

「あー多分それ俺のせいだ」
「レイの?」
「あぁ。前に相談されたんだよ。お前いくつか置いてくるけど金受け取らねぇだろ?」
「そりゃぁ…お金貰うようなものでもないし…」
「店側に取ったら稼げるもんが結構あるみたいでな。でも貰ったもんを元に稼ぐのは気が引けるって相談されたんだよ。だから稼ぎたいものは登録しとけばって」
「…それで通用するもの?」
「損する奴がいないからな。マージンとかは店側が勝手に決めてるみたいだし、ギルド長もそれで構わないって言うからさ」
レイはサラッと言う
何かもうこの世界の基準がよくわからなくなってきたかも…
これ以上考えるのは放棄しよう。でも…

「時々明細確認しといたほうがよさそう…」
「はは。お前確認しとけっつってもしないもんな」
「あ、まさかそれが分かってて…?」
「それもあるな。ギルドも皆も喜んでるからいいんじゃねぇの?」
そう言って笑うレイや皆を見ていると本当にどうでもいいと思えてきたから不思議だ

「あ、メリッサ」
「ん?」
「マジックバッグいるなら余ってるぞ」
カルムさんが言う

「あぁ、こないだ迷宮で出たやつ?」
「それ。いるなら使えよ。他はみんな持ってるから」
「もらえるのは嬉しいけど本当にいいの?売ったら結構いい金額になると思うけど…」
「何を今さら。誰も金には困ってねぇよ」
その言葉にメリッサさんはアランさんを見る

「もらっとけよ」
「うん…じゃぁありがたく貰っとくね」
戸惑いつつも嬉しそうだ

「パパ僕は?」
「お前はまだ早いな」
「えー僕も欲しいよー」
マリクが拗ねてナターシャさんの元に向かう

「そうねぇ…じゃぁマリクにはマリクだけのバッグを作ってもらおうか」
「僕だけの?」
「そう。世界に一つしかないバッグを…サラサちゃんに」
「私?」
突然振られて少々面食らう

「…だめ?」
うん。マリクのおねだりには勝てない

「わかった。引き受けましょう」
そう答えるとマリクは大喜びし、みんなは笑っていた
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