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18.体調不良?
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妊娠が分かってから私の生活は少し変化していた
一番大きな変化はレイの過保護がレベルアップしたことだ
「重いものは持つなって言ったろ?」
運ぼうとしていたシチューの入っていた鍋をレイはそう言いながら取り上げた
「これくらい大丈夫なのに…」
「少なくとも俺がいるときはダメだ」
鍋をテーブルに置いたレイは私を抱きしめる
「…依頼受けてる時は我慢してんだから側にいる時くらい甘やかしたい」
「…」
普段はそんな言葉を口にしないだけに返す言葉が出てこない
レイは一体どうしたというのだろうか
「お前もお腹の中の子も失うわけにはいかない」
少し考え込んでいた私の頭上からそんな言葉が届けられた
私の脳裏にスタンピード後のレイの姿が浮かんでいた
そう、あの後からレイはどんな些細なことで私に何かあることを恐れるようになったのだ
これまでそれを感じさせることなくそばにいたレイをある意味すごいと思ってしまう
それを言葉にしてしまう位、レイの中の不安が大きいのだろうか
そう思うと窘める気にも反論する気にもならなかった
「ありがと。レイ…」
私はそう言いながらレイを抱きしめ返す
胸に顔を埋めるとホッとしたように吐き出される吐息が聞こえた
心配するなと言っても悪阻で苦しむ姿を平気で流せるヒトじゃない
ましてここは前世のような近代都市じゃない
妊娠しても出産できるのはその半数ほどだとナターシャさんから聞いたことがある
その半数のうち3割ほどが親を亡くし孤児になるという
それを思い出せばレイの不安も自然と理解できた
そこまで考えて、私はレイの望む通りにしようと決めた
「そーだこれ」
「ん?」
レイがインベントリから取り出してテーブルに並べたのはクラッカーのような形をした2色の物体で、紐を引っ張ると外装と同じ色の光が打ち上るものだ
元は私が用意したので3色を2個ずつだったはずだし、見た目も少し違うなと思いながらレイを見る
「カルムの伝手で量産してもらった。サラサが言ってたように近所に届く音が鳴るタイプのも一緒にな」
レイはそう言ってハンドベルのような鉄製の道具も取り出した
「ギルドにも登録した。これから救われる命が増えるはずだ。素材を弾丸が提供するってことで売値もかなり安く設定されてる」
「…みんなは納得してるの?」
「ああ。大切な人の最期を看取る事さえできなかった知り合いは数えたらキリがないからな…」
厳しい現実だがある意味この世界の常識でもある
たまたま一人で留守番しているときに体に異変が起きてもどうすることも出来ない
討伐の際に助けを求めることも叶わない
助けを求めることが出来れば助かった命は計り知れない
だから側にいるとレイが言い張ったため連絡手段として作ったのだ
流石にそれをこの世界に広めるとは思わなかったけど
「黄色は想定外の魔物に遭遇した際の救援要請、赤はケガや病気で動けなくなった際の救助要請としてこっちは冒険者ギルドで売ってもらう。光に気付いた冒険者が駆けつけれるように随時説明もしてもらう予定だ」
確かに、光を見ても双方向のやり取りできない以上シンプルでいいかもしれない
想定外の魔物と規定しておけば、低ランク者が駆けつけて無駄に命を落とすこともないということだろう
ある程度ランクが高ければ魔物に対峙するのはもちろん、パーティーに治癒系の魔法が使えるメンバーがいるか、ポーションを持っている可能性が高い
「で、こっちは商業ギルドで実演しながら販売する。この音を聞いたら助けを求めてると知ってもらうためにな」
レイはそう言いながら実際に音を鳴らして見せる
「結構大きいね?」
「半径10mくらい聞こえる大きさだ。隣の家や家の前を歩いてる人くらいには聞こえるはず」
「範囲が広すぎたら特定できないもんね?」
「そういうこと」
よくわかったなとでも言うような目だ
「私が作った発煙筒は3色だったよね?」
「あれは俺達だけのものにしとく。医者を呼べってあの光が上がったら逆に混乱するだろ?」
言われて初めてその状況を想像してみる
町中ならその光に気付く人は大勢いるだろう
大勢の医者が駆けつけることになるのは容易に想像できる
逆に冒険者が打ち上げた場合その場に医者が行くのは命取りだ
「確かに…」
「依頼中や孤児院みたいな町から離れた場所なら2色の発煙筒で事足りるし、町中ならベルで充分だ。だから緑は俺達だけのものにしたってこと」
「なるほどね。でも今回除いたら使うことあるかな?」
「これから増えんじゃねぇの?カルム達が孤児引き取るのも、アラン達に子供ができるのもそう遠くない話だろうしな。チビがある程度大きくなるまでは何が起こるかわかんねぇし…」
これは皆の総意だろうと納得してしまった
一番大きな変化はレイの過保護がレベルアップしたことだ
「重いものは持つなって言ったろ?」
運ぼうとしていたシチューの入っていた鍋をレイはそう言いながら取り上げた
「これくらい大丈夫なのに…」
「少なくとも俺がいるときはダメだ」
鍋をテーブルに置いたレイは私を抱きしめる
「…依頼受けてる時は我慢してんだから側にいる時くらい甘やかしたい」
「…」
普段はそんな言葉を口にしないだけに返す言葉が出てこない
レイは一体どうしたというのだろうか
「お前もお腹の中の子も失うわけにはいかない」
少し考え込んでいた私の頭上からそんな言葉が届けられた
私の脳裏にスタンピード後のレイの姿が浮かんでいた
そう、あの後からレイはどんな些細なことで私に何かあることを恐れるようになったのだ
これまでそれを感じさせることなくそばにいたレイをある意味すごいと思ってしまう
それを言葉にしてしまう位、レイの中の不安が大きいのだろうか
そう思うと窘める気にも反論する気にもならなかった
「ありがと。レイ…」
私はそう言いながらレイを抱きしめ返す
胸に顔を埋めるとホッとしたように吐き出される吐息が聞こえた
心配するなと言っても悪阻で苦しむ姿を平気で流せるヒトじゃない
ましてここは前世のような近代都市じゃない
妊娠しても出産できるのはその半数ほどだとナターシャさんから聞いたことがある
その半数のうち3割ほどが親を亡くし孤児になるという
それを思い出せばレイの不安も自然と理解できた
そこまで考えて、私はレイの望む通りにしようと決めた
「そーだこれ」
「ん?」
レイがインベントリから取り出してテーブルに並べたのはクラッカーのような形をした2色の物体で、紐を引っ張ると外装と同じ色の光が打ち上るものだ
元は私が用意したので3色を2個ずつだったはずだし、見た目も少し違うなと思いながらレイを見る
「カルムの伝手で量産してもらった。サラサが言ってたように近所に届く音が鳴るタイプのも一緒にな」
レイはそう言ってハンドベルのような鉄製の道具も取り出した
「ギルドにも登録した。これから救われる命が増えるはずだ。素材を弾丸が提供するってことで売値もかなり安く設定されてる」
「…みんなは納得してるの?」
「ああ。大切な人の最期を看取る事さえできなかった知り合いは数えたらキリがないからな…」
厳しい現実だがある意味この世界の常識でもある
たまたま一人で留守番しているときに体に異変が起きてもどうすることも出来ない
討伐の際に助けを求めることも叶わない
助けを求めることが出来れば助かった命は計り知れない
だから側にいるとレイが言い張ったため連絡手段として作ったのだ
流石にそれをこの世界に広めるとは思わなかったけど
「黄色は想定外の魔物に遭遇した際の救援要請、赤はケガや病気で動けなくなった際の救助要請としてこっちは冒険者ギルドで売ってもらう。光に気付いた冒険者が駆けつけれるように随時説明もしてもらう予定だ」
確かに、光を見ても双方向のやり取りできない以上シンプルでいいかもしれない
想定外の魔物と規定しておけば、低ランク者が駆けつけて無駄に命を落とすこともないということだろう
ある程度ランクが高ければ魔物に対峙するのはもちろん、パーティーに治癒系の魔法が使えるメンバーがいるか、ポーションを持っている可能性が高い
「で、こっちは商業ギルドで実演しながら販売する。この音を聞いたら助けを求めてると知ってもらうためにな」
レイはそう言いながら実際に音を鳴らして見せる
「結構大きいね?」
「半径10mくらい聞こえる大きさだ。隣の家や家の前を歩いてる人くらいには聞こえるはず」
「範囲が広すぎたら特定できないもんね?」
「そういうこと」
よくわかったなとでも言うような目だ
「私が作った発煙筒は3色だったよね?」
「あれは俺達だけのものにしとく。医者を呼べってあの光が上がったら逆に混乱するだろ?」
言われて初めてその状況を想像してみる
町中ならその光に気付く人は大勢いるだろう
大勢の医者が駆けつけることになるのは容易に想像できる
逆に冒険者が打ち上げた場合その場に医者が行くのは命取りだ
「確かに…」
「依頼中や孤児院みたいな町から離れた場所なら2色の発煙筒で事足りるし、町中ならベルで充分だ。だから緑は俺達だけのものにしたってこと」
「なるほどね。でも今回除いたら使うことあるかな?」
「これから増えんじゃねぇの?カルム達が孤児引き取るのも、アラン達に子供ができるのもそう遠くない話だろうしな。チビがある程度大きくなるまでは何が起こるかわかんねぇし…」
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