[完結]ある日突然『異世界を発展させて』と頼まれました

真那月 凜

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44.メリッサの緊急避難

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食事の準備が整いナターシャさんがメリッサさんを呼んできた
「どうメリッサさん?」
「だいぶ楽になったかな」
そう言うメリッサさんの顔色はかなり良くなっていた

「メリッサお姉ちゃん最近よく笑うよ?」
マリクがそう言うとメリッサさんが驚いていた

「…私笑ってなかった?」
「うん。ヘンリー生まれるまで辛そうだった」
サラッとそう言うマリクが随分とたくましく見える

「…子供ってよく見てるのね?」
「そうねぇ…驚くときは多いかも?」
「まぁでも、楽になったならよかったわ。アランもかなり心配してたわよ」
ナターシャさんの言葉にメリッサさんは苦笑する

「アランには感謝してる」
「何、突然」
「今回の事で初めて思ったの。アランがいてくれたらそれだけで安心できるって」
私とナターシャさんは顔を見合わせてから黙って聞くことにした

「昔から家族ぐるみで付き合いがあったせいで、色んなことがうやむやになってたんだなって思うの。そんな中でもアランは私たちをいつも優先して守ってくれたから」
そう言ってヘンリーを抱きしめる

「何を言われてもアランだけはずっと味方でいてくれた。それが本当に嬉しかったの」
「…今回の騒動のきっかけって何かわかってるの?アランはいまいちよく分からない感じだったけど…」
先日話していた時の事を思い出しながらナターシャさんが尋ねた

「多分…アランの一番下の弟がお母さんが遊んでくれなかったから寂しかったって言いだしたことだと思う」
「それが何でメリッサから子供を取り上げることになるのよ?」
さっぱりわからないわとでも言うようにナターシャさんは言った

「アランのお母さんはずっと働いてるから、日中家にはおじいちゃんとおばあちゃん、ほかの兄弟だけになるの。でもあの子は母親が良かったのね」
「だからって…」
「うん…でもアランのお母さんはそれを聞いて後悔したんだと思う。だから私に仕事辞めろって言いだしたの。そこからはみんなの意見が二転三転して…働きに出るならその間面倒見る役目の取り合いが始まって、気づいたら仕事辞めないなら子供取り上げるって話にまでなってた感じかな」
「…」
とんでもない飛躍だ
本人たちの事を無視して自分たちの感情だけですべてを進めようとしているようにしか思えない

「途中からメリッサのためでも子供のためでもなくなってる。挙式の前もそうだったわよね?」
「あの時は私たちからじゃなくよそから聞いたからって怒って、拗ねて…」
呆れたようなナターシャさんの言葉にメリッサさんもため息交じりにに言った

「極めつけがそんな大事なことを真っ先に話せないお前らは息子でも娘でもないだったかしら?」
「うん。あの時アランは自分たちの事だからって、両親たちの許可はほっといて先に進めようとしたんだけど、私が皆に祝福して欲しいって言ったから…」
「そうね。アランは大分やきもきしてたものね」
ナターシャさんは言う

「考えてみれば、アランはあの時点である種の線引きをしてたのかもしれないわね。だからこそ今回も最初からこっちにメリッサを非難させることも視野に入れてた?」
「多分そうなんだと思う…」

メリッサさんは頷く

「それでも私が諦めきれなかったの」
「諦める?」
「うん。自分の家族もアランの家族も大事にしたいってどこかで思ってたんだと思う。だから何とかわかってもらおうって頑張ったんだけど…」
「もうすでにメリッサの言葉は聞こえなくなってたってことね」
ナターシャさんの言葉にメリッサさんは頷いた

「だけど流石に今回の事で分かってもらうのは無理なんだって分かった。仲が悪いわけじゃなかったし、大切な親族だってことには変わりないけど簡単に許せることじゃないし、ほとぼりが冷めるまで家族からの接触は拒否しようと思ってる」

「「拒否?」」
私とナターシャさんの言葉は揃っていた

「拒否って言ったら仰々しいんだけど正直今はあんまり関わりたくなくて…」
「あーうん。自分たち置いてきぼりでもめられたら流石に怖いよね…」
「サラサちゃんの言う通りなんだ。信じられなくなっちゃったって言うのもあるんだけどすごく怖い。その矛先がヘンリーに向いたらと思うと余計に…」
長いこと身近で育った自分たちが参ってしまっただけに、ヘンリーへの影響は計り知れない

「でもそれじゃ町に住むのはつらいんじゃない?」
「そうなんだよね…簡単に納得してもらえるとも思えないし、おしかけてこられる可能性もあるし」
「…とりあえず当分はここで様子見なさい」
「私はありがたいけど流石に迷惑でしょ?」
「迷惑なわけないでしょ。まぁ子供が多いから静かな場所ではないけど」
ナターシャさんは笑いながら言う

「メリッサさんいてくれるなら私たちも協力し合えるから助かるしね」
「ありがと…じゃぁしばらく甘えさせてもらってもいい?」
「「もちろん」」
ナターシャさんと同時に頷いていた
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