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10.居場所
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「そうそう、私サラサちゃんにお願いがあったんだ」
ナターシャさんはプロポーズの話からさらに切り替えてきた
「お願い?」
「実はカルムの誕生日がもうすぐなんだけど…」
そこまで言って少し言いよどんでいるのが分かる
一体どうしたのだろうか?
「その日にね、ご馳走を作りたいのよ」
「ご馳走…?」
「レイが前にサラサちゃんの誕生日祝いするつもりが、これまでのお礼でご馳走作ってくれたって喜んでたのよ」
「え…」
確かにこの世界に来て1年が経った日にご馳走を作ったけど、レイがそんなことまで話しているとは…
「私もカルムを喜ばせたいなーと思ってるわけ。だから料理教えてくれない?」
いつも大人びたナターシャさんが少し幼く見えた
「そういうことなら喜んで。でもどうやって教えれば…?」
「それなんだけどね、明日からしばらく弾丸は休息することになったの」
弾丸の休息は確かうちに泊まり込むことを意味していたはずだ
「1年のどこかで1か月くらいゆっくりするってやつでしたっけ?」
「そう。それ」
「そういえばもう1年以上たってますね?」
弾丸と初めて料理を振舞ったのは転生して3か月くらいの頃だったからもう少し早かったはずだ
「今年は長期の依頼も受けてたから時期をずらしたの」
「あぁ、確か護衛依頼を受けてたとか…」
「その通りよ。トータたちのランクアップの為に護衛依頼を何度か受けなきゃならないから」
対象となる護衛の期間や回数はランクによって変わるらしい
「おかげで私にとってはいい時期になったともいえるんだけど」
ナターシャさんは嬉しそうに言う
「じゃぁその休息の間に教えればいいと?」
「そういうこと。その間なら手伝う名目で教えてもらえるかなって」
確かにそれなら無理がない
前回よりも親しくなっているだけに、ナターシャさんが手伝うというのも特に変には思われないだろう
「…じゃぁカルムさんの誕生日みんなでお祝いできますね?」
「それも作戦の一つなんだけど…協力してくれるかな?」
「もちろん!丁度商会が向かいにあることだし…後で食材買いこんじゃいましょう」
その言葉にナターシャさんは破顔する
うん。美人の面々の笑みは破壊力が凄い
「でもご馳走をみんなの分作るの結構大変ですよ?」
「それは覚悟してる」
ナターシャさんの即答に笑ってしまう
「その覚悟忘れないでくださいね?あの人達が食べる量、本当に半端ないから」
「そうね…普段の量を考えてもそれは簡単に想像できるわ」
「なら安心ですね」
私が笑顔で言うとナターシャさんの顔が少し引きつっていた
とりあえず見なかったことにした
カフェを出ると2人で何を作るか考えながら色んなものをかごに詰め込んでいく
「随分楽しそうだな?」
夢中になっていた私たちはその声に立ち止まる
「レイ…何でいるのよ?」
「随分だなナターシャ。依頼終わらせてサラサを迎えに来たに決まってんだろ」
ドヤ顔で言うレイに唖然とする
皆の前でこんな感じだったのかと思うと驚きしかない
「ほら、サラサちゃんが驚いてるわよ?」
「驚くって何に?」
「あんたの過保護ぶりと独占欲に決まってるでしょ」
呆れるように言ったナターシャさんにそんなことかとレイは笑って流す
「で、何をこんだけ買い込んでるんだ?」
かごを覗き込んで尋ねるレイに隠し事は無理そうだ
私たちは弾丸の休息の事とカルムさんの誕生日の事を簡単に説明した
「面白そうじゃん。じゃぁ肉は俺が調達するよ」
「本当?」
「ああ。トータとアランも乗ってくんじゃねーの?あいつらカルム大好き人間だし」
的を射てるとはいえ何とも言えないまとめ方だ
最初は2人だけの企みだったのがとんでもないことになりそうだ
レイも加わったことで買うものは瞬く間に増えていく
「何か結構な量になったわね?」
「そうか?普通じゃね?」
レイはそう言いながら当たり前のように支払いを済ませると荷物をインベントリにしまった
「何か悪いわね。結局全部レイまかせ」
「別にいんじゃねぇの?少なくとも俺には料理出来ねぇし」
「レイのスキル1桁だもんね」
「うるさい」
額をレイに小突かれる
音はするのに痛みは全くないのが不思議だ
「じゃぁな、ナターシャ」
「ありがと。また明日」
ナターシャさんはそのまま帰っていった
「明日から来るなら酒も買っとくか」
レイに促され酒屋で大量のお酒を調達すると私たちも家に帰った
「お前がイヤなら追い返そうと思ってたんだけどな」
「え?」
ソファに体を預けるレイを見る
「あいつらがそろそろ休息取るのはわかってけどここはもう俺だけの家じゃない」
当たり前のように私の居場所だと伝えてくれる
「イヤなわけないじゃない」
私はそう言いながらレイの隣に腰かけた
それと同時に当たり前のように肩を抱き寄せられる
「レイの大切な人たちじゃない。それにもう私の大切な知り合いでもあるし」
特にカルムさんはレイの命の恩人でもある
「私がいることでレイにとって大切なカルムさんたちとのかかわり方を変えて欲しいとは思わないよ」
レイはありのままの私を受け入れてくれる
私もそんなレイをありのまま受け入れていたいと思う
「お前にはほんとに驚かされる」
その言葉と共に口づけられる
最初は軽く
数度繰り返すと少しずつ深くなる
日常の中で繰り返されるレイのキスは前世で経験したことがない甘さだ
やっぱり私から口づけるなんてできそうにないと改めて思った
ナターシャさんはプロポーズの話からさらに切り替えてきた
「お願い?」
「実はカルムの誕生日がもうすぐなんだけど…」
そこまで言って少し言いよどんでいるのが分かる
一体どうしたのだろうか?
「その日にね、ご馳走を作りたいのよ」
「ご馳走…?」
「レイが前にサラサちゃんの誕生日祝いするつもりが、これまでのお礼でご馳走作ってくれたって喜んでたのよ」
「え…」
確かにこの世界に来て1年が経った日にご馳走を作ったけど、レイがそんなことまで話しているとは…
「私もカルムを喜ばせたいなーと思ってるわけ。だから料理教えてくれない?」
いつも大人びたナターシャさんが少し幼く見えた
「そういうことなら喜んで。でもどうやって教えれば…?」
「それなんだけどね、明日からしばらく弾丸は休息することになったの」
弾丸の休息は確かうちに泊まり込むことを意味していたはずだ
「1年のどこかで1か月くらいゆっくりするってやつでしたっけ?」
「そう。それ」
「そういえばもう1年以上たってますね?」
弾丸と初めて料理を振舞ったのは転生して3か月くらいの頃だったからもう少し早かったはずだ
「今年は長期の依頼も受けてたから時期をずらしたの」
「あぁ、確か護衛依頼を受けてたとか…」
「その通りよ。トータたちのランクアップの為に護衛依頼を何度か受けなきゃならないから」
対象となる護衛の期間や回数はランクによって変わるらしい
「おかげで私にとってはいい時期になったともいえるんだけど」
ナターシャさんは嬉しそうに言う
「じゃぁその休息の間に教えればいいと?」
「そういうこと。その間なら手伝う名目で教えてもらえるかなって」
確かにそれなら無理がない
前回よりも親しくなっているだけに、ナターシャさんが手伝うというのも特に変には思われないだろう
「…じゃぁカルムさんの誕生日みんなでお祝いできますね?」
「それも作戦の一つなんだけど…協力してくれるかな?」
「もちろん!丁度商会が向かいにあることだし…後で食材買いこんじゃいましょう」
その言葉にナターシャさんは破顔する
うん。美人の面々の笑みは破壊力が凄い
「でもご馳走をみんなの分作るの結構大変ですよ?」
「それは覚悟してる」
ナターシャさんの即答に笑ってしまう
「その覚悟忘れないでくださいね?あの人達が食べる量、本当に半端ないから」
「そうね…普段の量を考えてもそれは簡単に想像できるわ」
「なら安心ですね」
私が笑顔で言うとナターシャさんの顔が少し引きつっていた
とりあえず見なかったことにした
カフェを出ると2人で何を作るか考えながら色んなものをかごに詰め込んでいく
「随分楽しそうだな?」
夢中になっていた私たちはその声に立ち止まる
「レイ…何でいるのよ?」
「随分だなナターシャ。依頼終わらせてサラサを迎えに来たに決まってんだろ」
ドヤ顔で言うレイに唖然とする
皆の前でこんな感じだったのかと思うと驚きしかない
「ほら、サラサちゃんが驚いてるわよ?」
「驚くって何に?」
「あんたの過保護ぶりと独占欲に決まってるでしょ」
呆れるように言ったナターシャさんにそんなことかとレイは笑って流す
「で、何をこんだけ買い込んでるんだ?」
かごを覗き込んで尋ねるレイに隠し事は無理そうだ
私たちは弾丸の休息の事とカルムさんの誕生日の事を簡単に説明した
「面白そうじゃん。じゃぁ肉は俺が調達するよ」
「本当?」
「ああ。トータとアランも乗ってくんじゃねーの?あいつらカルム大好き人間だし」
的を射てるとはいえ何とも言えないまとめ方だ
最初は2人だけの企みだったのがとんでもないことになりそうだ
レイも加わったことで買うものは瞬く間に増えていく
「何か結構な量になったわね?」
「そうか?普通じゃね?」
レイはそう言いながら当たり前のように支払いを済ませると荷物をインベントリにしまった
「何か悪いわね。結局全部レイまかせ」
「別にいんじゃねぇの?少なくとも俺には料理出来ねぇし」
「レイのスキル1桁だもんね」
「うるさい」
額をレイに小突かれる
音はするのに痛みは全くないのが不思議だ
「じゃぁな、ナターシャ」
「ありがと。また明日」
ナターシャさんはそのまま帰っていった
「明日から来るなら酒も買っとくか」
レイに促され酒屋で大量のお酒を調達すると私たちも家に帰った
「お前がイヤなら追い返そうと思ってたんだけどな」
「え?」
ソファに体を預けるレイを見る
「あいつらがそろそろ休息取るのはわかってけどここはもう俺だけの家じゃない」
当たり前のように私の居場所だと伝えてくれる
「イヤなわけないじゃない」
私はそう言いながらレイの隣に腰かけた
それと同時に当たり前のように肩を抱き寄せられる
「レイの大切な人たちじゃない。それにもう私の大切な知り合いでもあるし」
特にカルムさんはレイの命の恩人でもある
「私がいることでレイにとって大切なカルムさんたちとのかかわり方を変えて欲しいとは思わないよ」
レイはありのままの私を受け入れてくれる
私もそんなレイをありのまま受け入れていたいと思う
「お前にはほんとに驚かされる」
その言葉と共に口づけられる
最初は軽く
数度繰り返すと少しずつ深くなる
日常の中で繰り返されるレイのキスは前世で経験したことがない甘さだ
やっぱり私から口づけるなんてできそうにないと改めて思った
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