[完結]ある日突然『異世界を発展させて』と頼まれました

真那月 凜

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14.プロポーズ

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「サラサちゃんおめでとう」
「いやーめでたい」
翌日、町で弾丸の4人とメリッサさんにつかまり口々にお祝いを言われた
朝依頼を受けに行ったときに私のブレスレットに気付いた冒険者から広まったらしい

「ほんと、って感じよねー」
「ナターシャその言い方はやめろ」
レイは呆れたように言うナターシャさんに勘弁してくれと言いたげだった

「だって半年前から『レイにミスリルのブレスレットもらったらこうするのよ』ってちゃんと教えてあげてたのに…」
「え?サラサちゃんプロポーズの儀式知らなかったの?」
メリッサさんが驚いたように尋ねる

「そうなのよ。サラサちゃんのところではリングを貰うらしくてね、しかも同意する時も言葉だけだって言うの。知らないままだったらレイがショック受けちゃうでしょ?」
「確かに…いつまでたっても口づけてもらえないなんてレイさんかわいそすぎる」
メリッサさんが深く頷く
それを見てナターシャさんがどや顔していた

「はいはい。ナターシャには感謝しております」
レイの諦めたような言葉にみんなが笑う

「それにしてもすごくきれいなブレスレットよね?デザインも繊細だし…こんなの初めて見たわ」
「…サラサちょっと見せろ」
メリッサさんが見とれるように眺めているとカルムさんが近づいてきた

「カルムさん…?」
食い入るように見ているカルムさんに戸惑ってしまう

「…レイ」
「あ?」
「お前これ…」
カルムさんは信じられないという表情を浮かべた

「どうしたのよカルム」
「…時間がかかるはずだ」
その言葉にみんながカルムさんを見る

「最高ランクのミスリルだ。ブレスレット自体もエンチャント付きで…細工はオリジナル…だな?」
「悪いかよ?」
あっさり返すレイにみんなが絶句する

「どういうこと?」
私一人意味がわからない

「こんなとんでもない人間離れした仕事ができるのはこの世界に1人しかいないってことだ」
「確か依頼を受けてもらうよりも居場所を探す方が困難って聞いたことあるぞ」
「依頼を受けてもらえても仕上がりまでに3か月くらいかかるんだろ?」
次々に飛び出す言葉に唖然とする
とんでもないものを貰っていたらしい
みんなの目がレイに説明を求めていた

「…探しはじめたのは付き合い始めてすぐ。去年を狙ってたけど見つけたのは2か月前。事情話して頼み込んで昨日に間に合うように作ってもらった」
「まじか…俺そこまでは無理…絶対探すの諦める」
「去年を狙ってたってことはお前1年もよく我慢できたな?」
「だからってそこまで待たせなくてもいいと思うんだけど…」
「特別なもんだしサラサが作る以上のものを用意したかったんだよ。それを用意できるのがあの人職人しか浮かばなかっただけだ」
レイの言葉にみんなが私を見る

「そういやサラサの腕はその辺の職人より高かったな…」
「そうね。そういうことなら仕方ないのかしら」
アランさんとナターシャさんの言葉にみんなが複雑な表情を浮かべたまま頷いている
レイがどんな思いで用意してくれたのかを知って、本当に幸せだと感じながら改めてブレスレットの細工を見る

「あ…」
望?
飛び込んできた文字に目を止める
気のせいかと思いつつよく見てみると他にもいくつか文字が見つかった
上から読める文字と逆さになっている文字が不規則に並んでいるようだ

『魂の片割れを永遠に愛す』
『生涯共にあることを望む』
繊細な模様の中に隠すようにちりばめられた誓いと希望の2つの言葉
オリジナルの細工が必要だった理由がそこにあるのだと嫌でもわかる
思わずレイを見ると、意味ありげな笑みが返ってきた

「どうかしたのか?」
「ううん。何でもない。きれいだなって見てただけ」
トータさんにそう返すとレイに抱き寄せられた

「よくできました」
耳元でささやかれる

何に対しての誉め言葉だろうか
隠された言葉を見つけたことか
気づいたことをみんなに秘密にしたことか
それともその両方か…
確かなのはレイが上機嫌だということだけだった

「めでたい時は乾杯だな」
カルムさんがそう言ったことでそのままギルドに併設されている食堂に流れ込むように入る
次々と運ばれてくる料理とお酒にみんな楽しそうだ

「よかったなサラサちゃん」
「おめっとさん」
食堂にいた冒険者たちが声をかけてくれる

「本当にレイでいいのか?」
「レイがいいの」
からかうような言葉に笑いながら返すと苦笑が返ってきた
なぜ?

それを見ながらレイがクツクツと笑っていた
食堂が外から見える作りだった為か、通りがかった町の人たちからもたくさんのお祝いの言葉を貰った
この世界に来て2年、自分が暖かい人たちに囲まれていることを改めて実感していた
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