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36.バルドの新しい世界
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「ねぇリル」
「ん?」
「本気でバルドをしばらくこっちに住まわせない?」
「え…と…?」
昨日の夜冗談のごとく流された話題が再び出てきたことでリルの戸惑いはかなり大きい
「多分あの様子じゃ1日中作業するでしょう?」
「…」
「決して悪いことじゃないんだけど体にはよくないわ」
「確かにそうですね…」
リルはバルドを見る
いまだにリルが帰ってきたことにも気づいていない
「ここにいればマリクたちが構って欲しがるからいい息抜きにもなると思うのよ。もちろん私たちも気にかけてあげられるし」
確かにトータさんが休みの日なら少しは気にかけてくれるものの、2人とも依頼に出てしまったらバルドは1人になる
その時に昼食も取らずに夢中になるのは火を見るより明らかだった
「それにね、私はリルの事も心配なの」
「私…?」
「そう。休みなく依頼を受けるのは本当に危険よ?魔物を前にした時に体の疲れは言い訳にもできない」
「…」
「バルドもその点は心配してるみたい。自分のせいだと思ってるから言い出せないみたいだけど…」
「そんな…」
「ここにいる間バルドの生活費は考えなくても大丈夫。私もナターシャさんも回復魔法が使えるから何かあったときの対処も大体できるはず。その分リルは週に1回きちんと休みを取って心も体もリラックスした方がいいと思うの」
「…」
リルは俯いたまま黙り込んでいた
「ここにいるからってあなたたちが会えないってわけじゃないのよ?」
「どういうこと?」
「バルドが少しでも稼げるようになるのにそう時間はかからないと思うしね。5つたまったら町まで売りに行ってその日はリル達と過ごせばいいでしょう?」
「5つ?」
「期限は特になし。5つまとめて売るって言うのがお店の人の要望だからね。体調や天気との兼ね合いもあるだろうけど定期的に町でリル達と過ごせるようになるんじゃないかな?」
「姉ちゃん僕それがいい」
いつの間にかバルドがそばに来ていた
「バルドその前にお帰りなさいじゃないの?」
「お帰り!」
「…ただいま」
リルは苦笑しながら言う
「本当にそれでいいの?」
「…今の僕は町にいても何もできない。でもここでなら色んな事を教えてもらえるし、マリクたちとも遊べるから寂しくない」
「バルド…」
「姉ちゃんのこともトータさんの事も大好きだけど…ここにいれば僕も出来ることが増える気がする。そしたら姉ちゃんが無理するの少しは減らせるよね?」
リルは思わずバルドを抱きしめていた
「リル、何も町でしか会えないわけじゃないよ?リルが会いたいときは依頼の後リルがここに来ればいいんだから」
「サラサさん…」
「昨日も言ったけど、あなたたちはもう大切な仲間なんだから私たちを頼ってくれていいの。少しずつ自分たちの力を蓄えて幸せになってよ」
「そうだぞーリル」
「そうそう」
シアを肩車したレイとナターシャさんまで口をはさんできた
その時また魔道具が来客を告げる
「僕が行くー」
「僕も」
リアムが真っ先に動いた
「おかえりー」
「おう。ただいま」
2人に飛びつかれながらトータさんが入ってきた
「お、リルも戻ってたんだな?ってか何事だ?」
何故かキッチンにみんなが集合していることに違和感しかないようだ
「トータさん僕ここにいてもいい?」
「ん?バルドが決めたならいいぞ。ここに住もうが町に住もうが会おうと思やいつでも会えるしな」
あっさりと許可された
「姉ちゃんもいい?」
「…そうね。実際今日は依頼の間も安心できたし私にとってもいいのかも」
リルが言う
「カルムさん、ナターシャさん、レイさん、サラサさん、バルドのことよろしくお願いします」
一人ひとりの顔を順に見ながらリルは言った
「「こちらこそ」」
「ただし条件がある」
レイがそう言ってバルドを見る
「午前中はマリクたちの相手をすること」
「うん」
「マリクたちの昼寝の間は勉強をすること」
「勉強?」
「読書でも計算でもこれから役に立つことだな」
「わかった」
「最後にもう一つ、少しでも体調が悪くなったらすぐに誰かに言うこと。一人で我慢したり無理したりするなら細工させることは出来ない」
レイの目はまっすぐバルドを見ている
「約束する」
バルドもまっすぐレイの目を見て行った
「決まりか?」
カルムさんが尋ねる
「決まりだな。ま、リルにとってもここは自分の家と思えばいい。トータはすでにそのつもりだしな」
「ありがとうございます」
リルは頭を下げる
バルドの新しい生活の始まりだった
「終わったー?」
突然マリクが尋ねた
「どうしたの?」
「「ご飯は?」」
マリクとリアムがそろって口にする
大人たちは顔を見合わせて笑い出した
「そうだな。いつもならもう食べてる時間だ」
カルムさんがそう言いながら2人を抱き上げた
「作ってるのは待てそうにないか…じゃぁ…」
私はインベントリからストック品を何種類か取り出す
「リル、これをお皿に盛ってくれる?」
「分かった」
「子どもたちは自分の飲み物を準備して向こうのテーブルに運んでね」
「「「うん」」」
「サラサのミックスジュースも頼むな」
「わかったー」
レイが言うとマリクが即答する
ナターシャさんが取り皿やカトラリーの準備をはじめたので、私はドレッシングをふんだんにかけたグリーンサラダを作った
皆でワイワイ食事を済ませ遅くまで騒いでいた
「ん?」
「本気でバルドをしばらくこっちに住まわせない?」
「え…と…?」
昨日の夜冗談のごとく流された話題が再び出てきたことでリルの戸惑いはかなり大きい
「多分あの様子じゃ1日中作業するでしょう?」
「…」
「決して悪いことじゃないんだけど体にはよくないわ」
「確かにそうですね…」
リルはバルドを見る
いまだにリルが帰ってきたことにも気づいていない
「ここにいればマリクたちが構って欲しがるからいい息抜きにもなると思うのよ。もちろん私たちも気にかけてあげられるし」
確かにトータさんが休みの日なら少しは気にかけてくれるものの、2人とも依頼に出てしまったらバルドは1人になる
その時に昼食も取らずに夢中になるのは火を見るより明らかだった
「それにね、私はリルの事も心配なの」
「私…?」
「そう。休みなく依頼を受けるのは本当に危険よ?魔物を前にした時に体の疲れは言い訳にもできない」
「…」
「バルドもその点は心配してるみたい。自分のせいだと思ってるから言い出せないみたいだけど…」
「そんな…」
「ここにいる間バルドの生活費は考えなくても大丈夫。私もナターシャさんも回復魔法が使えるから何かあったときの対処も大体できるはず。その分リルは週に1回きちんと休みを取って心も体もリラックスした方がいいと思うの」
「…」
リルは俯いたまま黙り込んでいた
「ここにいるからってあなたたちが会えないってわけじゃないのよ?」
「どういうこと?」
「バルドが少しでも稼げるようになるのにそう時間はかからないと思うしね。5つたまったら町まで売りに行ってその日はリル達と過ごせばいいでしょう?」
「5つ?」
「期限は特になし。5つまとめて売るって言うのがお店の人の要望だからね。体調や天気との兼ね合いもあるだろうけど定期的に町でリル達と過ごせるようになるんじゃないかな?」
「姉ちゃん僕それがいい」
いつの間にかバルドがそばに来ていた
「バルドその前にお帰りなさいじゃないの?」
「お帰り!」
「…ただいま」
リルは苦笑しながら言う
「本当にそれでいいの?」
「…今の僕は町にいても何もできない。でもここでなら色んな事を教えてもらえるし、マリクたちとも遊べるから寂しくない」
「バルド…」
「姉ちゃんのこともトータさんの事も大好きだけど…ここにいれば僕も出来ることが増える気がする。そしたら姉ちゃんが無理するの少しは減らせるよね?」
リルは思わずバルドを抱きしめていた
「リル、何も町でしか会えないわけじゃないよ?リルが会いたいときは依頼の後リルがここに来ればいいんだから」
「サラサさん…」
「昨日も言ったけど、あなたたちはもう大切な仲間なんだから私たちを頼ってくれていいの。少しずつ自分たちの力を蓄えて幸せになってよ」
「そうだぞーリル」
「そうそう」
シアを肩車したレイとナターシャさんまで口をはさんできた
その時また魔道具が来客を告げる
「僕が行くー」
「僕も」
リアムが真っ先に動いた
「おかえりー」
「おう。ただいま」
2人に飛びつかれながらトータさんが入ってきた
「お、リルも戻ってたんだな?ってか何事だ?」
何故かキッチンにみんなが集合していることに違和感しかないようだ
「トータさん僕ここにいてもいい?」
「ん?バルドが決めたならいいぞ。ここに住もうが町に住もうが会おうと思やいつでも会えるしな」
あっさりと許可された
「姉ちゃんもいい?」
「…そうね。実際今日は依頼の間も安心できたし私にとってもいいのかも」
リルが言う
「カルムさん、ナターシャさん、レイさん、サラサさん、バルドのことよろしくお願いします」
一人ひとりの顔を順に見ながらリルは言った
「「こちらこそ」」
「ただし条件がある」
レイがそう言ってバルドを見る
「午前中はマリクたちの相手をすること」
「うん」
「マリクたちの昼寝の間は勉強をすること」
「勉強?」
「読書でも計算でもこれから役に立つことだな」
「わかった」
「最後にもう一つ、少しでも体調が悪くなったらすぐに誰かに言うこと。一人で我慢したり無理したりするなら細工させることは出来ない」
レイの目はまっすぐバルドを見ている
「約束する」
バルドもまっすぐレイの目を見て行った
「決まりか?」
カルムさんが尋ねる
「決まりだな。ま、リルにとってもここは自分の家と思えばいい。トータはすでにそのつもりだしな」
「ありがとうございます」
リルは頭を下げる
バルドの新しい生活の始まりだった
「終わったー?」
突然マリクが尋ねた
「どうしたの?」
「「ご飯は?」」
マリクとリアムがそろって口にする
大人たちは顔を見合わせて笑い出した
「そうだな。いつもならもう食べてる時間だ」
カルムさんがそう言いながら2人を抱き上げた
「作ってるのは待てそうにないか…じゃぁ…」
私はインベントリからストック品を何種類か取り出す
「リル、これをお皿に盛ってくれる?」
「分かった」
「子どもたちは自分の飲み物を準備して向こうのテーブルに運んでね」
「「「うん」」」
「サラサのミックスジュースも頼むな」
「わかったー」
レイが言うとマリクが即答する
ナターシャさんが取り皿やカトラリーの準備をはじめたので、私はドレッシングをふんだんにかけたグリーンサラダを作った
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