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33.バルドの可能性

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「そういやバルド、冒険者登録は?」
「身分証のために一応」
「ならいい。常時の薬草採取は大抵10本で1回分だ。もし10本に満たなくてもレイかサラサに預けとけ」
「どういう意味?」
「2人はインベントリを持ってるからギルド行くまでそこで保管してもらえばいい」
「インベントリ?」
「マジックバッグと違って時間経過がない。つまり食いもんは腐らないし薬草も新鮮なまま保管できる」
「「すごい!」」
リルとバルドはレイと私の顔を交互に見ながら目をキラキラさせている

「リルも依頼の途中で貴重な薬草見つけた時は預けとくといい。単に素材として売ってもいいけど、多少余裕があるなら依頼が出た時や必要な数量が貯まった時点でギルドに提出する方が報酬がいいだろ」
カルムさんは自慢げに言う
ランクの高い薬草は必要数に足りない場合は依頼達成にならず素材として換金されることが多い
それが分割で集められるようになるのはかなり助かるはずだ
Dランクというランクの低さを考えればなおさらである

「リルもだぞ。お前らのパーティで困ったことがあるならいつでも頼れ。俺らがつかまらないときはメリッサを頼ればいい。いつも商業ギルドにいるから」
「トータさんに相談しづらいことでも大歓迎よ」
アランさんの言葉を受けてメリッサさんも言う

「…何かお前ら俺の存在無視してないか?」
「気のせいだろ」
「リルの事もバルドのことも、お前が1人で支える必要はないってことだ。俺らだってお前に助けられてんだから当然だろ?」
レイが呆れたように言う

「そうだな。マリクを連れて来た時にお前が言った言葉を忘れたとは言わさねぇからな。俺らだってお前が大切な人間を守る覚悟くらいできてんだよ」
カルムさんの言葉にアランさんも頷いている

「…何か俺かっこ悪ぃ…」
トータさんはガクリと肩を落とす

「ま、そんな気を落とさずに飲め」
アランさんがお酒を注ぐ
「リルもだよ」
メリッサさんにつかまったリルは当分付き合わされるだろう


「あれ?子供たちは?」
「さっきマリクが玩具部屋に案内してたけど…見て来るね」
「私が行こうか?」
「いいよ。ナターシャさんは休憩してて」
私はそう言って立ち上がると玩具部屋に向かう

「あら…」
覗いて思わず立ち止まる
バルドを挟んでマリクとリアムがもたれるように眠っていた

「僕どうしたらいい?」
バルドが困ったように尋ねてくる
自分が動いたら起こしてしまうと思い動けなくなっていたようだ

「どうかし…ぶっ…」
様子を見に来たレイが噴出した

「レイ、笑ってないで助けてあげてよ」
「分かってる」
レイは頷くと笑いながらまずマリクを抱き上げ、続けてリアムを抱き上げると玩具部屋を出て行った
そのままカルムさんとナターシャさんに引き渡しているようだ

「大変だったでしょう?」
「大変って言うより嬉しくて」
「嬉しい?」
「僕ずっと姉ちゃんのお荷物だったから」
「…」
私はバルドの隣に座る

「お荷物って、誰かに言われた?」
「役立たずのお荷物だって…いろんな人に言われた。本当の事だから仕方ないけど…」
「…じゃぁこれからその人たちを見返さないとね」
「え…?」
「あら、そのための計算の勉強や薬草辞典じゃなかったの?」
「それは…」
希望ではあるものの口にして言えるほど自分に対する自信は持てない
そう思っているのだろう

「ねぇバルド、今は難しいかもしれないけど…自分の可能性は自分が信じなきゃ」
「僕の可能性?」
「そう。体が弱くてもできることはあるはずよ。他の人と同じやり方はできなくてもバルドだけのやり方が必ずあるわ。大切なのはバルド自身が前向きに頑張ること。そのために周りを頼るのは悪いことじゃないの」
そう言ってバルドの肩を抱き寄せる

「あなたは頑張ってる。リルのためになりたいって必死になってるのもわかる。でも、だからってあなたが弱音をはいちゃダメってことではないのよ?」
「…」
「不安だったら不安だって言っていいの。寂しい時は寂しいって言っていいの。あなたはまだ成人前の子どもなんだから。ね?」
「…うぅ……」
バルドの肩が震えだす
声を押し殺して泣くバルドの肩をあやすようになでながら落ち着くのを待った
途中様子を見に来たレイは状況を察したのかそのまま戻っていった
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