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33.バルドの可能性
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「そういやバルドは本読むのも好きだったな?」
「うん。でも本は高いから…」
教育が行き届いているわけでもなく需要も少ないため総量も少ない
故に高額となる
それを大量に持っているレイが異常なのだが
「本なら好きに読んでいいぞ」
「?」
バルドは意味が分からずレイを見る
「マリク、バルドに本のお部屋教えてあげて?」
「分かった!お兄ちゃんこっち」
バルドはマリクに手を引かれていった
「何かあるの?」
「レイはたくさんの本を持っててマリクが案内してった部屋はその本部屋なの」
「部屋を作るくらいあるってこと?」
「そ。レイも私も本が好きでね。リルも読むなら好きに持ってっていいよ」
「私、読書は無理…すぐ眠くなる」
「私と一緒だわ」
メリッサさんが言う
「レイ兄ちゃんホントに借りてもいいの?」
「ああ。いいぞ」
バルドの興奮した声にレイは笑いながら答える
「お気に召したみたいね」
「あの子、そのうち引きこもるかも…」
リルが心配そうに言う
「ふふ…そうなったらそうなったで面倒見るから安心して」
自分だけ置いて行かれたのに気付いたリアムが後から本部屋に駆けていった
「あの子たちが引きこもらせてくれるかはわからないけどね」
ナターシャさんはそう言って笑う
「リル、あなたはもう1人で頑張らなくていいの。トータはもちろん私たちもあなたの力になる」
「ナターシャさん…」
「バルドにとっていいならここに住むのも喜んで受け入れるわ。それは決してリルがバルドを見放すってことじゃない。だからリルにとってもバルドにとってもいい方法を探しましょう」
「そうね。リルがバルドを大切に思うようにバルドもリルを大切に思ってるはず。バルドなりにあなたのためにできることを探し続けてると思うわ」
「…」
「迷惑だなんて思わないでね?私たちは養子を迎えるくらいには子供が大好きだから」
「え…?」
リルがナターシャさんを見る
「マリクもリアムも養子なんだ。2人とも孤児だった」
トータさんが簡単に説明する
「これからも増やすつもりだ。俺らにとって血のつながりは関係ないし、助けを必要とする子供がいるならいくらでも助けてやる」
「カルムさん…ありがとう…」
「とりあえず今日はみんな泊りだろ?リルはトータの部屋でいいな?」
「ああ」
「バルドは1人部屋でいいな」
「え?けど空き部屋なんじゃ…」
「お前に彼女ができたって聞いた時点で念のために準備してるに決まってるだろ。一緒に住んでるなら無駄だったかとも思ったけど丁度良かったな。そのままバルドの部屋にすればいい」
レイが笑いながら言う
「…そんな簡単に決めちゃっていいの?」
「まぁこいつら普通じゃねぇから。ちなみにこの家建てた時点で俺やアランの部屋は準備されてた」
「え…」
リルが呆然とする
「弾丸は休息の間ここに泊まり込むんだよ。それ以外にもちょくちょくこうしてたまり場になる」
「自動的に酔いつぶれて泊まるわけだ。それゆえの専用の部屋だな」
レイに続きカルムさんが言う
「リルもトータと喧嘩して逃げ出したい時は好きに使えばいいわよ?」
「ナターシャ?」
「あ、逆もありかしら?」
「おい」
トータさんがナターシャさんに振り回されていると3人が本部屋から戻ってきた
バルドの手には3冊の本が抱えられている
「いいのあったか?」
「うん」
バルドは頷いて表紙を見せる
物語、計算、薬草辞典
子供にしてはなかなか珍しいラインナップな気がする
普段本になじみがないバルドなら余計に
「それはどういう理由で選んだんだ?」
同じように感じたのかレイが尋ねる
「物語は一番好きな本。計算は覚えたくて。薬草辞典は僕でも採取ならできるんじゃないかなって…」
「なるほど。計算なら読んでて分からないところはサラサに聞くといい。薬草採取してみたいならここの庭で試してみろ。チビ達も遊び感覚で採取してるからそこから知識を広げるために辞典を使った方がいいな」
「庭で?」
「薬草、取れるよー」
「明日一緒に取るー?」
マリクとリアムがバルドの両側から声をかける
2人にとっては遊びと変わらないので実に楽しそうである
「ここの庭で採ったのでも規定数さえ貯めれば依頼完了で報酬も出る。それなら体が弱くても多少時間がかかっても足しにはなるだろ?」
レイの言葉にバルドの手が震えだす
「僕…僕でもできることがあるんだ…」
「当たり前だ。そうやって少しずつできること増やしていけばいい。そのための手助けくらいいくらでもしてやる」
バルドは無言のまま何度も頷いた
「うん。でも本は高いから…」
教育が行き届いているわけでもなく需要も少ないため総量も少ない
故に高額となる
それを大量に持っているレイが異常なのだが
「本なら好きに読んでいいぞ」
「?」
バルドは意味が分からずレイを見る
「マリク、バルドに本のお部屋教えてあげて?」
「分かった!お兄ちゃんこっち」
バルドはマリクに手を引かれていった
「何かあるの?」
「レイはたくさんの本を持っててマリクが案内してった部屋はその本部屋なの」
「部屋を作るくらいあるってこと?」
「そ。レイも私も本が好きでね。リルも読むなら好きに持ってっていいよ」
「私、読書は無理…すぐ眠くなる」
「私と一緒だわ」
メリッサさんが言う
「レイ兄ちゃんホントに借りてもいいの?」
「ああ。いいぞ」
バルドの興奮した声にレイは笑いながら答える
「お気に召したみたいね」
「あの子、そのうち引きこもるかも…」
リルが心配そうに言う
「ふふ…そうなったらそうなったで面倒見るから安心して」
自分だけ置いて行かれたのに気付いたリアムが後から本部屋に駆けていった
「あの子たちが引きこもらせてくれるかはわからないけどね」
ナターシャさんはそう言って笑う
「リル、あなたはもう1人で頑張らなくていいの。トータはもちろん私たちもあなたの力になる」
「ナターシャさん…」
「バルドにとっていいならここに住むのも喜んで受け入れるわ。それは決してリルがバルドを見放すってことじゃない。だからリルにとってもバルドにとってもいい方法を探しましょう」
「そうね。リルがバルドを大切に思うようにバルドもリルを大切に思ってるはず。バルドなりにあなたのためにできることを探し続けてると思うわ」
「…」
「迷惑だなんて思わないでね?私たちは養子を迎えるくらいには子供が大好きだから」
「え…?」
リルがナターシャさんを見る
「マリクもリアムも養子なんだ。2人とも孤児だった」
トータさんが簡単に説明する
「これからも増やすつもりだ。俺らにとって血のつながりは関係ないし、助けを必要とする子供がいるならいくらでも助けてやる」
「カルムさん…ありがとう…」
「とりあえず今日はみんな泊りだろ?リルはトータの部屋でいいな?」
「ああ」
「バルドは1人部屋でいいな」
「え?けど空き部屋なんじゃ…」
「お前に彼女ができたって聞いた時点で念のために準備してるに決まってるだろ。一緒に住んでるなら無駄だったかとも思ったけど丁度良かったな。そのままバルドの部屋にすればいい」
レイが笑いながら言う
「…そんな簡単に決めちゃっていいの?」
「まぁこいつら普通じゃねぇから。ちなみにこの家建てた時点で俺やアランの部屋は準備されてた」
「え…」
リルが呆然とする
「弾丸は休息の間ここに泊まり込むんだよ。それ以外にもちょくちょくこうしてたまり場になる」
「自動的に酔いつぶれて泊まるわけだ。それゆえの専用の部屋だな」
レイに続きカルムさんが言う
「リルもトータと喧嘩して逃げ出したい時は好きに使えばいいわよ?」
「ナターシャ?」
「あ、逆もありかしら?」
「おい」
トータさんがナターシャさんに振り回されていると3人が本部屋から戻ってきた
バルドの手には3冊の本が抱えられている
「いいのあったか?」
「うん」
バルドは頷いて表紙を見せる
物語、計算、薬草辞典
子供にしてはなかなか珍しいラインナップな気がする
普段本になじみがないバルドなら余計に
「それはどういう理由で選んだんだ?」
同じように感じたのかレイが尋ねる
「物語は一番好きな本。計算は覚えたくて。薬草辞典は僕でも採取ならできるんじゃないかなって…」
「なるほど。計算なら読んでて分からないところはサラサに聞くといい。薬草採取してみたいならここの庭で試してみろ。チビ達も遊び感覚で採取してるからそこから知識を広げるために辞典を使った方がいいな」
「庭で?」
「薬草、取れるよー」
「明日一緒に取るー?」
マリクとリアムがバルドの両側から声をかける
2人にとっては遊びと変わらないので実に楽しそうである
「ここの庭で採ったのでも規定数さえ貯めれば依頼完了で報酬も出る。それなら体が弱くても多少時間がかかっても足しにはなるだろ?」
レイの言葉にバルドの手が震えだす
「僕…僕でもできることがあるんだ…」
「当たり前だ。そうやって少しずつできること増やしていけばいい。そのための手助けくらいいくらでもしてやる」
バルドは無言のまま何度も頷いた
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