[完結]ある日突然『異世界を発展させて』と頼まれました

真那月 凜

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32.トータの彼女と弟

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「リルはエールでいいの?」
「あ、はい」
リルは頷く

「バルドは何飲む?選択肢は水、お茶、フルーツジュース、ミックスジュースかな」
「ぼくミックスジュース」
「僕も!」
何故かマリクが答えるとリアムもあたりまえのように続く

「…トータさんミックスジュースって何?」
バルドは小声で尋ねる
「ミックスジュースは果物とミルクがいっぱい入ったジュースだよ」
マリクが自信満々で応えた

「1回飲んでみ」
トータさんが笑いながら言う
「…じゃぁミックスジュースで」
「「はーい」」
マリクとリアムがそろって立ち上がる

「あら、2人で用意してくれるの?」
「「うん」」
「じゃぁお願いね」
ナターシャさんの言葉に2人はキッチンに走っていった

「大丈夫なんですか?」
「大丈夫よ。いつも自分で入れてるから」
心配そうなリルにナターシャさんは笑いながら答える

皆が見守る中マリクが2つのグラスを、リアムが1つのグラスを持って戻ってきた
「はい」
「…ありがとう」
バルドはマリクからグラスを受け取った

ドリンクがみんなにいきわたるとナターシャさんが笑顔を見せる
「さぁ、みんなでいただきましょう」
「わーい」
「ママたこさんとって」
「僕とりさん」
子供たちは食べたいものをお皿にのせてもらうよう要求し大人たちはどんどん食べていく

「リルもバルドも遠慮してたらなくなるぞ」
トータさんが戸惑っている2人に早く食べるように促す
「いきなりそう言われても困るよね?こっちがタコのから揚げと鳥のから揚げ、どっちも油で熱したもの、これはパンプキンサラダ…カボチャにキュウリやハムを混ぜたサラダね」
「…これがカボチャ?」
リルが凝視している

「そう。カボチャ。ゆでてつぶしたらこうなるのよ。で、こっちはアーマーバッファローの肉を煮込んだもの。これはおにぎり、ご飯の中に色んな具が入ってるわ。スープは見ての通りね。口に合わなかったら普通にお肉焼いたりも出来るから遠慮せずに言ってね」
簡単に説明すると2人は恐る恐る食べ始めた

「…おいしい…」
「こんなの初めて食べた」
「だろう?サラサの飯は旨いんだ」
「サラサに習ったナターシャもなかなかの腕になってるぞ」
トータさんの言葉にカルムさんが負けじという

「私も時々手伝いながら教えてもらうんだけど意外と簡単なものも多いから今度はリルも一緒にどう?」
メリッサさんが誘う

「嬉しい。でも私料理は全然できなくて…」
「大丈夫よ。私だってたいしてできなかったし」
「メリッサ、元は料理のスキル1桁だったんだろ?今どうなってんだ?」
「今は17まで上がったよ?」
「ってことだからリルも心配いらないと思うぞ」
トータさんが笑いながら言った
これまで食べたものでおいしかったものや驚いたものを言いあいながらみんなでどんどん平らげていく
テーブルの上のお皿が空になるまでそんなに時間はかからなかった


「そういえば2人は普段はどうしてるの?」
食事が落ち着いてある程度片付いてからメリッサさんが尋ねた

「私は幼馴染の女の子とパーティー組んで冒険者してます」
「ランクDだっけ?」
「うん。パーティー全員の個人ランクがDだからパーティーランクもD」
「女だけでDなら頑張ってる方なんじゃね?」
アランさんが言う

「そもそも女だけのパーティが珍しいからな。バルドは?」
「僕は…」
バルドは言いかけてうつむいた

「この子手先は器用なんだけど体が弱くて…よく熱出して寝込むから冒険者はもちろん働きに出るのとかも難しくて…」
「リルたちの両親、スタンピードの時に死んでんだよ。今はうちで一緒に住んでる」
トータさんの説明にみんなが2人を見る

「トータ」
少しの沈黙の後カルムさんが口を開いた
「何?」
「…そういう事情があんならもっと早く連れて来い馬鹿」
少々いら立ちを含んでいるようだ

「けど…」
「リルがDランクなら俺らみたいに1日おきに依頼ってわけにはいかないんだろ?2人とも依頼に行ってる間にバルドが熱出したらどうする気だ?」
「「…」」
2人は黙り込む
おそらく2人だってそのことは気にかけていたはずだ
だからこそ何も言えないのだろう
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