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23.誕生
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それは7月の終わりに差し掛かった時だった
「お姉ちゃん?」
玩具部屋でマリクと遊んでいた私は倒れこんでしまった
「マリク…ナターシャさんを呼んできてくれる?」
出来るだけゆっくり、笑顔を作ってマリクに頼む
「分かった」
マリクは頷いて立ち上がる
「ママお姉ちゃんが…!」
マリクが馬に餌をやっていたナターシャさんのところに走っていった
驚いて戻ってきたナターシャさんが駆けこんできた
「サラサちゃんまさか…?」
私は蹲ったままその問いに頷いた
「マリク、デッキに出てここを上に向けてこのひもを引っ張って」
「分かった!」
それはレイと一緒に魔力を込めて作った打ち上げ花火のようなものだ
緊急時の連絡用に少し前から用意していたもので色によって合図を決めてある
ナターシャさんが渡したのは緑色
医者を呼べという合図だ
私はナターシャさんに支えられながらソファに横になる
それだけで少し息が楽になった
「お姉ちゃん大丈夫?」
マリクが心配そうにそばにしゃがみ込む
「大丈夫よマリク。もうすぐしたら赤ちゃんが生れるの」
「赤ちゃん?」
「そう。今まではサラサちゃんのお腹の中で少しずつ大きくなってたけど、これからはマリクと同じように広いところに出てこようとしてるのよ」
「そっか」
少し安心したようだ
「マリク生まれてくる赤ちゃんと仲良くしてくれる?」
「する」
即答だった
「ありがとう」
手を伸ばしてマリクの頭をなでる
しばらくすると玄関がうるさくなった
「サラサ!」
最初に飛び込んできたのはレイだ
「大丈夫か?」
何とか息を整えながら尋ねるレイにうなずく
「陣痛の間隔がだいぶ短いみたい」
「わかった。サラサ、上に運ぶぞ?」
レイはそう言って寝室に私を運んだ
マリクとナターシャさんもついてくる
しばらくしてカルムさんと医者が到着するとナターシャさん以外は部屋から追い出された
◇ ◇ ◇
医者が到着してすでに5時間が経っていた
レイは落ち着かない様子で立ったり座ったりを繰り返している
「パパ」
「どうした?」
カルムは心配そうに自分を見上げるマリクを抱き上げた
「…お姉ちゃん大丈夫?」
「ああ、大丈夫だ」
カルムは笑って見せる
「レイ、お前も少しは落ち着け」
「分かってる」
そう答えるものの落ち着けるわけもない
「マリクジュース飲もうか」
「飲む」
「パパたちのも入れてくれるか?」
「うん。入れてくる!」
カルムの腕から抜け出しマリクはキッチンに走っていった
そしてジュースを淹れたグラスを1つずつ持ってくる
「お兄ちゃん」
「…ありがとなマリク」
差し出されたグラスを受け取りマリクの頭をなでる
ジュースを飲み大きく深呼吸すると少し落ち着いた
その時大きな泣き声が聞こえてきた
「生まれた」
レイは真っ先に飛び出していった
カルムはマリクを抱き上げ後を追った
◇ ◇ ◇
勢いよく開け放たれた扉の方を見るとレイが立ち尽くしていた
「…見て。私たちの息子よ」
私はレイに向かって言う
ナターシャさんが私のそばから少し離れるとレイがベッドのそばまで来た
青みがかった銀髪にサファイア色の瞳
「サラサ…ありがとな」
優しい口づけが落ちてくる
「お姉ちゃん!」
声のした方を見るとカルムさんに抱き上げられたマリクが心配そうにこっちを見ていた
「マリクも見てくれる?」
マリクが頷くとカルムさんはマリクを下におろした
テクテクとそばに来たマリクは赤ちゃんをジーっと見ている
「ちっちゃい」
「そうね。これからちょっとずつ大きくなるわ」
「一緒に遊ぶ」
その言葉にみんなで顔を見合わせる
「ありがとう。お願いね」
そう伝えるとマリクは大きく頷いた
「さぁ、サラサちゃんも赤ちゃんも疲れてるから私たちは下に降りてましょう」
ナターシャさんが促してマリクとカルムさんは医者とともに部屋を出て行った
「レイ?」
レイはさっきからベッドに腰かけたまま赤ちゃんをじっと見ている
その目から涙が零れ落ちた
「え…?」
一体どうしたというのだろうか
喜びだけではない何かを感じながら、私は手を伸ばしてそっと涙をぬぐう
「…俺はずっと…自分の血を引く子供を持つなんて許されないと思ってた」
のばした私の手が握りしめられた
「忌まわしい血が幸せをもたらすはずがないとずっと思ってた」
レイの手が震えている
大丈夫だと伝える代わりにしっかりと握り返した
「サラサのおかげだ。サラサに出会ってから俺の幸せは膨らむばかりだ」
レイの視線がこちらに向いた
「サラサもこの子も必ず守る」
赤ちゃんの額に口づけ、続いて私に口づける
少しずつ深くなるそれを幸せに包まれたまま受け止めた
その日の夕食は流石に準備ができなかったので、インベントリから取り出したものをレイに下まで運んでもらった
「お姉ちゃん?」
玩具部屋でマリクと遊んでいた私は倒れこんでしまった
「マリク…ナターシャさんを呼んできてくれる?」
出来るだけゆっくり、笑顔を作ってマリクに頼む
「分かった」
マリクは頷いて立ち上がる
「ママお姉ちゃんが…!」
マリクが馬に餌をやっていたナターシャさんのところに走っていった
驚いて戻ってきたナターシャさんが駆けこんできた
「サラサちゃんまさか…?」
私は蹲ったままその問いに頷いた
「マリク、デッキに出てここを上に向けてこのひもを引っ張って」
「分かった!」
それはレイと一緒に魔力を込めて作った打ち上げ花火のようなものだ
緊急時の連絡用に少し前から用意していたもので色によって合図を決めてある
ナターシャさんが渡したのは緑色
医者を呼べという合図だ
私はナターシャさんに支えられながらソファに横になる
それだけで少し息が楽になった
「お姉ちゃん大丈夫?」
マリクが心配そうにそばにしゃがみ込む
「大丈夫よマリク。もうすぐしたら赤ちゃんが生れるの」
「赤ちゃん?」
「そう。今まではサラサちゃんのお腹の中で少しずつ大きくなってたけど、これからはマリクと同じように広いところに出てこようとしてるのよ」
「そっか」
少し安心したようだ
「マリク生まれてくる赤ちゃんと仲良くしてくれる?」
「する」
即答だった
「ありがとう」
手を伸ばしてマリクの頭をなでる
しばらくすると玄関がうるさくなった
「サラサ!」
最初に飛び込んできたのはレイだ
「大丈夫か?」
何とか息を整えながら尋ねるレイにうなずく
「陣痛の間隔がだいぶ短いみたい」
「わかった。サラサ、上に運ぶぞ?」
レイはそう言って寝室に私を運んだ
マリクとナターシャさんもついてくる
しばらくしてカルムさんと医者が到着するとナターシャさん以外は部屋から追い出された
◇ ◇ ◇
医者が到着してすでに5時間が経っていた
レイは落ち着かない様子で立ったり座ったりを繰り返している
「パパ」
「どうした?」
カルムは心配そうに自分を見上げるマリクを抱き上げた
「…お姉ちゃん大丈夫?」
「ああ、大丈夫だ」
カルムは笑って見せる
「レイ、お前も少しは落ち着け」
「分かってる」
そう答えるものの落ち着けるわけもない
「マリクジュース飲もうか」
「飲む」
「パパたちのも入れてくれるか?」
「うん。入れてくる!」
カルムの腕から抜け出しマリクはキッチンに走っていった
そしてジュースを淹れたグラスを1つずつ持ってくる
「お兄ちゃん」
「…ありがとなマリク」
差し出されたグラスを受け取りマリクの頭をなでる
ジュースを飲み大きく深呼吸すると少し落ち着いた
その時大きな泣き声が聞こえてきた
「生まれた」
レイは真っ先に飛び出していった
カルムはマリクを抱き上げ後を追った
◇ ◇ ◇
勢いよく開け放たれた扉の方を見るとレイが立ち尽くしていた
「…見て。私たちの息子よ」
私はレイに向かって言う
ナターシャさんが私のそばから少し離れるとレイがベッドのそばまで来た
青みがかった銀髪にサファイア色の瞳
「サラサ…ありがとな」
優しい口づけが落ちてくる
「お姉ちゃん!」
声のした方を見るとカルムさんに抱き上げられたマリクが心配そうにこっちを見ていた
「マリクも見てくれる?」
マリクが頷くとカルムさんはマリクを下におろした
テクテクとそばに来たマリクは赤ちゃんをジーっと見ている
「ちっちゃい」
「そうね。これからちょっとずつ大きくなるわ」
「一緒に遊ぶ」
その言葉にみんなで顔を見合わせる
「ありがとう。お願いね」
そう伝えるとマリクは大きく頷いた
「さぁ、サラサちゃんも赤ちゃんも疲れてるから私たちは下に降りてましょう」
ナターシャさんが促してマリクとカルムさんは医者とともに部屋を出て行った
「レイ?」
レイはさっきからベッドに腰かけたまま赤ちゃんをじっと見ている
その目から涙が零れ落ちた
「え…?」
一体どうしたというのだろうか
喜びだけではない何かを感じながら、私は手を伸ばしてそっと涙をぬぐう
「…俺はずっと…自分の血を引く子供を持つなんて許されないと思ってた」
のばした私の手が握りしめられた
「忌まわしい血が幸せをもたらすはずがないとずっと思ってた」
レイの手が震えている
大丈夫だと伝える代わりにしっかりと握り返した
「サラサのおかげだ。サラサに出会ってから俺の幸せは膨らむばかりだ」
レイの視線がこちらに向いた
「サラサもこの子も必ず守る」
赤ちゃんの額に口づけ、続いて私に口づける
少しずつ深くなるそれを幸せに包まれたまま受け止めた
その日の夕食は流石に準備ができなかったので、インベントリから取り出したものをレイに下まで運んでもらった
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