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15.ミュラーリアの婚姻の形
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慌ただしい日々が落ち着かないうちに挙式の日を迎えていた
「こんな感じかな」
教会の控室でナターシャさんがメイクの仕上げをしてくれていた
身に纏っているのはナターシャさんから譲り受けた婚礼衣装だ
幸せをまとうとされる婚礼衣装は伝統的なもので、大切な人たちの間で譲られ引き継がれているらしい
ミュラーリアではプロポーズから3か月の間に誰からも異議がなければ挙式を行うことができて、その挙式をもって婚姻が認められる
「それにしても異議申し立ての期間が経過した翌日とはね」
ナターシャさんがあきれたように言う
「大抵プロポーズから1年くらいかかるのにね」
メリッサさんは笑いながら言う
現に私よりも先に婚約していたアランさんとメリッサさんはまだ挙式をしていない
「その期間には理由があるの?」
「ん~色々あると言えばあるのかな。住む場所を用意したりその先の生活の基盤を固めたり…」
「そうね。基本的に男性が女性を養うこと、何かあっても女性に先立つものを用意しておくこと。その2つを整えておくのは暗黙の了解って感じかな?」
その根底には魔物のいる世界でいつ命を落としてもおかしくないという現実があるという
「まぁレイの場合そのあたりは元から全部そろってるし、プロポーズまでが本人も思ってた以上に時間かかっただろうから…」
「そうですよね。職人さん探すために望んでた時期より1年も余分にかかったみたいだし、レイさんも待ちきれなかったのかな?」
ナターシャさんとメリッサさんが考えながら説明してくれる
「とにかくサラサちゃん」
「?」
「今まで辛い思いをいっぱいした分、レイに幸せにしてもらいなさい」
ナターシャさんはそう言った
本当に頼もしいと思う
準備の整った私は2人に誘導されて神殿に向かった
ギーッと軋む音と共に扉が開かれると祭壇まで白いカーペットが続いていた
そしてその先に白い礼服を着たレイが立っている
かっこいい
思わずそうつぶやきそうになったのを何とかこらえる
レイの正装など初めて見ただけに破壊力がすごかった
その目がまっすぐこっちを見ていることが奇跡のようにさえ感じる
ナターシャさんとメリッサさんに背を押されるように足を踏み出した私はレイの元までゆっくり歩く
両側からお祝いの言葉を貰いながら自然と涙があふれだしていた
「誓いを」
司祭様の言葉にレイがそっと手を前に出す
《我、この者を生涯愛し、共にすることを誓う》
レイの手のひらの上に淡い光が浮かびあがった
私はその光に触れる
《我、この者を生涯愛し、共にすることを誓う》
同じ言葉を添えると私たちはその光に包まれた
互いの手の甲に魔法陣が白く浮かび、消えていく
「この者たちの婚姻が神に認められた」
司祭の言葉に歓声と拍手が神殿内を満たした
どちらかの思いに偽りがある場合魔法陣は浮かばず婚姻も認められない
婚姻後誓いに反した瞬間からその者の手の甲に魔法陣が黒く浮かび消えることはない
そのため離婚などはめったにおこらないが、貴族の中では側室や愛人を設けることが通例になっており、黒い魔法陣が男の勲章のように捉えられている
しかし貴族でも女性の黒い魔法陣は淫乱の証とされ恥となる
それがミュラーリアの婚姻の形なのだ
その話を聞いたときにはじめて、レイがギルドマスターから一緒に依頼を受けた彼女に対する警戒を突然緩めた理由を知った
彼女に少しでもやましい感情があったとしたら見せられた手の甲には黒い魔法陣が浮かんでいたはずだから
『私からも祝福を』
聞き覚えのある声が頭に直接響いてきた
『ゼノビア?』
『そうだ。この世界に新しい風を起こしてくれたこと心から感謝する』
ことばと共に体が暖かい何かに包まれた
『彼の過去にとらわれずに生きていきなさい』
残された言葉の意味がいまいち理解できない
「どうした?」
ぼおっとしてしまった私の顔をレイが覗き込んでいた
「…ゼノビア…神様が祝福をって…」
「はは…こんな時までとんでもないな」
レイは苦笑しながら私を抱きしめた
「こんな感じかな」
教会の控室でナターシャさんがメイクの仕上げをしてくれていた
身に纏っているのはナターシャさんから譲り受けた婚礼衣装だ
幸せをまとうとされる婚礼衣装は伝統的なもので、大切な人たちの間で譲られ引き継がれているらしい
ミュラーリアではプロポーズから3か月の間に誰からも異議がなければ挙式を行うことができて、その挙式をもって婚姻が認められる
「それにしても異議申し立ての期間が経過した翌日とはね」
ナターシャさんがあきれたように言う
「大抵プロポーズから1年くらいかかるのにね」
メリッサさんは笑いながら言う
現に私よりも先に婚約していたアランさんとメリッサさんはまだ挙式をしていない
「その期間には理由があるの?」
「ん~色々あると言えばあるのかな。住む場所を用意したりその先の生活の基盤を固めたり…」
「そうね。基本的に男性が女性を養うこと、何かあっても女性に先立つものを用意しておくこと。その2つを整えておくのは暗黙の了解って感じかな?」
その根底には魔物のいる世界でいつ命を落としてもおかしくないという現実があるという
「まぁレイの場合そのあたりは元から全部そろってるし、プロポーズまでが本人も思ってた以上に時間かかっただろうから…」
「そうですよね。職人さん探すために望んでた時期より1年も余分にかかったみたいだし、レイさんも待ちきれなかったのかな?」
ナターシャさんとメリッサさんが考えながら説明してくれる
「とにかくサラサちゃん」
「?」
「今まで辛い思いをいっぱいした分、レイに幸せにしてもらいなさい」
ナターシャさんはそう言った
本当に頼もしいと思う
準備の整った私は2人に誘導されて神殿に向かった
ギーッと軋む音と共に扉が開かれると祭壇まで白いカーペットが続いていた
そしてその先に白い礼服を着たレイが立っている
かっこいい
思わずそうつぶやきそうになったのを何とかこらえる
レイの正装など初めて見ただけに破壊力がすごかった
その目がまっすぐこっちを見ていることが奇跡のようにさえ感じる
ナターシャさんとメリッサさんに背を押されるように足を踏み出した私はレイの元までゆっくり歩く
両側からお祝いの言葉を貰いながら自然と涙があふれだしていた
「誓いを」
司祭様の言葉にレイがそっと手を前に出す
《我、この者を生涯愛し、共にすることを誓う》
レイの手のひらの上に淡い光が浮かびあがった
私はその光に触れる
《我、この者を生涯愛し、共にすることを誓う》
同じ言葉を添えると私たちはその光に包まれた
互いの手の甲に魔法陣が白く浮かび、消えていく
「この者たちの婚姻が神に認められた」
司祭の言葉に歓声と拍手が神殿内を満たした
どちらかの思いに偽りがある場合魔法陣は浮かばず婚姻も認められない
婚姻後誓いに反した瞬間からその者の手の甲に魔法陣が黒く浮かび消えることはない
そのため離婚などはめったにおこらないが、貴族の中では側室や愛人を設けることが通例になっており、黒い魔法陣が男の勲章のように捉えられている
しかし貴族でも女性の黒い魔法陣は淫乱の証とされ恥となる
それがミュラーリアの婚姻の形なのだ
その話を聞いたときにはじめて、レイがギルドマスターから一緒に依頼を受けた彼女に対する警戒を突然緩めた理由を知った
彼女に少しでもやましい感情があったとしたら見せられた手の甲には黒い魔法陣が浮かんでいたはずだから
『私からも祝福を』
聞き覚えのある声が頭に直接響いてきた
『ゼノビア?』
『そうだ。この世界に新しい風を起こしてくれたこと心から感謝する』
ことばと共に体が暖かい何かに包まれた
『彼の過去にとらわれずに生きていきなさい』
残された言葉の意味がいまいち理解できない
「どうした?」
ぼおっとしてしまった私の顔をレイが覗き込んでいた
「…ゼノビア…神様が祝福をって…」
「はは…こんな時までとんでもないな」
レイは苦笑しながら私を抱きしめた
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