54 / 199
13.サラサの危機
1
しおりを挟む
穏やかな日々の中、その日は突然やってきた
「サラサ!」
私は依頼を受けずに家の周りの薬草を採取する予定だから、レイは一人で依頼を受けに出かけて行った
そのレイが早々に家に飛び込んできたことに戸惑いを覚える
「…何かあったの?」
「スタンピードだ。お前も出る準備しろ」
「っ…わかった!」
答えながら自分の準備を整える
以前から話に聞いてはいたものの遭遇するのは初めてだ
「レイこれ携帯食替わり」
緊急時用にと大量に用意していた小ぶりのサンドイッチやおにぎりなどの簡単に食べられる食料をレイに渡す
「助かる」
レイはすぐに自分のインベントリにしまった
「転移のほうがいい?」
「いや。馬が必要になるかもしれない」
頷いて差し出されたレイの手を掴んで馬に乗るとそのまま町に向かう
私がこの世界に来て1年10か月、初めて起こったスタンピードだ
ギルドが主導で町の守りを固め冒険者が続々と集まってくる
「Cランク以下は外壁の前、Eランク以下は壁の中で避難誘導だ。Bランク以上は10分後に出る!」
ギルドマスターの声にみんなが動き出す
「レイ、お前らは俺らと来い。サラサもだ。ランクは外れてるが実力的に問題ないはずだからな」
基本的にパーティーは一緒に行動する
カルムさんは当たり前のようにレイと私を引き入れた
「サラサちゃん、無理はしなくていいからね」
「ナターシャさん…」
「一番に優先するのは自分の命だ。それだけは覚えとけ」
「わかった」
カルムさんの言葉に頷く
遠くから砂煙が近づいてくる
冒険者は5人前後のグループで整列してギルドマスターの合図を待っていた
「行くぞ」
静まり返っていた場所にその声は驚くほど響く
次の瞬間雄たけびと共に冒険者が走り出していた
出来るだけ早く町から離れた場所へ
同時に魔物と向き合った際に備えて体力を温存しなければならない
既に所々で戦っているのが分かる
「来るぞ」
アランさんの言葉にみんなが立ち止まる
前方からブラックベアの群れが現れた
「5匹だ。ナターシャはサラサのフォロー」
カルムさんの言葉にみんなが気を引き締め、引き受けるブラックベアを他のブラックベアから引き離すように攻撃する
《ファイアボール》
少しきつめの攻撃をして様子を見る
攻撃を食らったブラックベアは怒りを持って反撃をしてきた
「サラサちゃん足止めできる?」
「やってみます」
《ファイヤウォール》
同じ魔法を4度放ちブラックベアを火の壁で囲いこんだ
「最高!」
《レイザー》
ナターシャさんが身動きの取れなくなったブラックベアの首元をめがけて魔法を放った
断末魔のような声と共に倒れこむのが分かった
他の4匹も倒しおえてるようだ
「レイは回収、ナターシャはトータの治療」
「「了解」」
「すんだら先に進む」
あたりを警戒しながらカルムさんの指示が飛ぶ
そしてカルムさんの指示にはみんなが素直に従っていた
普段からの信頼関係があってのものだろう
魔物を前に仲間割れなど殺してくれというに等しい
そう考えれば今の状況は最高の状況だろうと思う
何度も3匹~7匹の群れと遭遇し、それでも危なげなく確実に仕留めながら進んでいた
すでに3時間以上が経っていて時おり見える他の冒険者にも疲れが見えてきている
魔法やポーションで体調を整えながら進んでいた時だった
『ガサッ…』
草を踏みしめる小さな音にみんなが立ち止まり警戒する
周りを警戒したまま音のした方向に注意を向ける
「…子ども?」
やせ細り身体中怪我を負っているが身に着けている衣服や首輪で奴隷だとわかる
「おとりとして捨て置かれたか…」
助けてやりたくても状況を考えると難しい
子供を抱えて魔物の群れと対峙し続けるのは簡単なことではない
どうするか決めかねていた時再びブラックベアの群れが現れた
「サラサ!」
私は依頼を受けずに家の周りの薬草を採取する予定だから、レイは一人で依頼を受けに出かけて行った
そのレイが早々に家に飛び込んできたことに戸惑いを覚える
「…何かあったの?」
「スタンピードだ。お前も出る準備しろ」
「っ…わかった!」
答えながら自分の準備を整える
以前から話に聞いてはいたものの遭遇するのは初めてだ
「レイこれ携帯食替わり」
緊急時用にと大量に用意していた小ぶりのサンドイッチやおにぎりなどの簡単に食べられる食料をレイに渡す
「助かる」
レイはすぐに自分のインベントリにしまった
「転移のほうがいい?」
「いや。馬が必要になるかもしれない」
頷いて差し出されたレイの手を掴んで馬に乗るとそのまま町に向かう
私がこの世界に来て1年10か月、初めて起こったスタンピードだ
ギルドが主導で町の守りを固め冒険者が続々と集まってくる
「Cランク以下は外壁の前、Eランク以下は壁の中で避難誘導だ。Bランク以上は10分後に出る!」
ギルドマスターの声にみんなが動き出す
「レイ、お前らは俺らと来い。サラサもだ。ランクは外れてるが実力的に問題ないはずだからな」
基本的にパーティーは一緒に行動する
カルムさんは当たり前のようにレイと私を引き入れた
「サラサちゃん、無理はしなくていいからね」
「ナターシャさん…」
「一番に優先するのは自分の命だ。それだけは覚えとけ」
「わかった」
カルムさんの言葉に頷く
遠くから砂煙が近づいてくる
冒険者は5人前後のグループで整列してギルドマスターの合図を待っていた
「行くぞ」
静まり返っていた場所にその声は驚くほど響く
次の瞬間雄たけびと共に冒険者が走り出していた
出来るだけ早く町から離れた場所へ
同時に魔物と向き合った際に備えて体力を温存しなければならない
既に所々で戦っているのが分かる
「来るぞ」
アランさんの言葉にみんなが立ち止まる
前方からブラックベアの群れが現れた
「5匹だ。ナターシャはサラサのフォロー」
カルムさんの言葉にみんなが気を引き締め、引き受けるブラックベアを他のブラックベアから引き離すように攻撃する
《ファイアボール》
少しきつめの攻撃をして様子を見る
攻撃を食らったブラックベアは怒りを持って反撃をしてきた
「サラサちゃん足止めできる?」
「やってみます」
《ファイヤウォール》
同じ魔法を4度放ちブラックベアを火の壁で囲いこんだ
「最高!」
《レイザー》
ナターシャさんが身動きの取れなくなったブラックベアの首元をめがけて魔法を放った
断末魔のような声と共に倒れこむのが分かった
他の4匹も倒しおえてるようだ
「レイは回収、ナターシャはトータの治療」
「「了解」」
「すんだら先に進む」
あたりを警戒しながらカルムさんの指示が飛ぶ
そしてカルムさんの指示にはみんなが素直に従っていた
普段からの信頼関係があってのものだろう
魔物を前に仲間割れなど殺してくれというに等しい
そう考えれば今の状況は最高の状況だろうと思う
何度も3匹~7匹の群れと遭遇し、それでも危なげなく確実に仕留めながら進んでいた
すでに3時間以上が経っていて時おり見える他の冒険者にも疲れが見えてきている
魔法やポーションで体調を整えながら進んでいた時だった
『ガサッ…』
草を踏みしめる小さな音にみんなが立ち止まり警戒する
周りを警戒したまま音のした方向に注意を向ける
「…子ども?」
やせ細り身体中怪我を負っているが身に着けている衣服や首輪で奴隷だとわかる
「おとりとして捨て置かれたか…」
助けてやりたくても状況を考えると難しい
子供を抱えて魔物の群れと対峙し続けるのは簡単なことではない
どうするか決めかねていた時再びブラックベアの群れが現れた
74
お気に入りに追加
863
あなたにおすすめの小説
転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜
家具屋ふふみに
ファンタジー
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。
そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?!
しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...?
ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...?
不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。
拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。
小説家になろう様でも公開しております。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

【完結】天下無敵の公爵令嬢は、おせっかいが大好きです
ノデミチ
ファンタジー
ある女医が、天寿を全うした。
女神に頼まれ、知識のみ持って転生。公爵令嬢として生を受ける。父は王国元帥、母は元宮廷魔術師。
前世の知識と父譲りの剣技体力、母譲りの魔法魔力。権力もあって、好き勝手生きられるのに、おせっかいが大好き。幼馴染の二人を巻き込んで、突っ走る!
そんな変わった公爵令嬢の物語。
アルファポリスOnly
2019/4/21 完結しました。
沢山のお気に入り、本当に感謝します。
7月より連載中に戻し、拾異伝スタートします。
2021年9月。
ファンタジー小説大賞投票御礼として外伝スタート。主要キャラから見たリスティア達を描いてます。
10月、再び完結に戻します。
御声援御愛読ありがとうございました。
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。
30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。
ひさまま
ファンタジー
前世で搾取されまくりだった私。
魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。
とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。
これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。
取り敢えず、明日は退職届けを出そう。
目指せ、快適異世界生活。
ぽちぽち更新します。
作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。
脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。

追放された引きこもり聖女は女神様の加護で快適な旅を満喫中
四馬㋟
ファンタジー
幸福をもたらす聖女として民に崇められ、何不自由のない暮らしを送るアネーシャ。19歳になった年、本物の聖女が現れたという理由で神殿を追い出されてしまう。しかし月の女神の姿を見、声を聞くことができるアネーシャは、正真正銘本物の聖女で――孤児院育ちゆえに頼るあてもなく、途方に暮れるアネーシャに、女神は告げる。『大丈夫大丈夫、あたしがついてるから』「……軽っ」かくして、女二人のぶらり旅……もとい巡礼の旅が始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる