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12.不穏な動き
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弾丸が休息期間を終えるとすぐに元の日常が戻ってきた
レイは相変わらず1日おきに依頼を受け、それに合わせて私も近場の採取依頼を受けるようになっていた
まだ行った事の無い場所も多く新しい発見もある
依頼の後はクラフト系のお店で時間をつぶしたり、商業ギルドに寄ってメリッサさんと話をすることもある
全ての用が済んだらカフェで本を読む
それが私とレイの日常になっていた
いつもと違うこと
それが思いもよらないことを引き寄せるのだとこの時の私は気づいていなかった
私は以前からの約束があったため珍しく依頼を受けずに町にいた
おそらく依頼を定期的に受けるようになってからはじめてのことだ
そのことに少しくすぐったさを感じながら皮製品を扱う店に入った
「オルドさんお久しぶりです」
「サラサちゃんいらっしゃい。頼まれてたのちゃんと用意できてるよ」
「本当?良かった~」
オルドさんから包みを受け取る
これは以前からオルドさんにお願いして準備してもらっていたものだ
「早速だけど、作業台借りてもいい?」
「ああいいよ」
快諾をもらいさっそく作業台で包みを開ける
「いい色」
「そりゃ良かった」
注文通りの品を用意できて良かったとオルドさんが笑みを浮かべる
4本の茶系の細長い皮は、作業台に並べると美しいグラデーションをつくり出す
頼んでおきながらここまできれいな色合いで揃えてもらえるとは思っていなかっただけに自然と顔がにやけていた
「サラサちゃん、顔がヤバいぞ」
「え?嘘?」
思わず頬を手で隠す
「そんなににやけてた?」
「ああ。レイが見たら周りから隠す程度にはな」
半分冷やかされて顔に熱が集まるのが分かった
「ちょっと気にはなってたけどその様子見て安心したよ」
「え?」
「いや。何でもない。ゆっくり作業するといい」
誤魔化すように言って背を向けたオルドさんに首をかしげながらも私の意識は作業台に向いていた
準備を整えると、しばらく黙々とその皮を編み続けた
…が、その手を突然止めた
「オルドさんごめん、ちょっとだけこのまま置いといてもらってもいい?」
「今日は使わねぇから好きにしな」
オルドさんは店の奥で何か別の作業をしているようだ
「ありがと。ちょっと出てくるね」
「おう。気を付けてな」
私はオルドさんに見送られて準備し忘れたものを思い出し別の店に向かった
「え…?」
通りを歩いていた私は一瞬見間違いかと思い改めて前を見る
「何…あれ…」
見間違いではなかった
レイが知らない女性と通りを横切っていく
しかもその女性はレイの腕に自分の腕を絡めている
女性に触れられるのを極端に嫌うレイがそれを許してる?
そう考えると背筋が寒くなる
「うそ…」
呟く声が震えていた
奥側にいる女性が楽しそうに話しているのが分かる
信じたくない気持ちに飲まれそうになりとっさに物陰に隠れた
変わった様子などなかったはずだ
いつもと変わらず穏やかな、それでいて甘い幸せな時間を過ごしていた
少なくとも私はそう思っていた
「依頼の関係かもしれない…よね」
自分に言い聞かせるようにつぶやく
でも腕を絡ませて歩くような依頼などあるのだろうか
立ち尽くした自分の足元が震えてくるのが分かった
「知り合いも多いし私もいるかもしれない町中だし…それにマフラーだってしてるし…」
自分を納得させるための情報を片っ端から引っ張り出す
プレゼントしたマフラーを喜んでいたレイが、それを身に着けたまま自分を裏切るはずがない
必死でそう思おうとした
でもこの時間、町の人通りは少ないことも知っていた
普段通り採取の依頼を受けていれば、私はまだ町にはいない
2人が向かった方向にあるのは鍛冶職人たちが集まる通りだけである
そこには色町もある
信じたいのに疑う要素が多すぎた
「そういえばオルドさんも…」
さっき気になってたけどと口走っていた
あれは何を気にしていたのだろうか…?
自然と浮き上がってくる一つの事実を必死で打ち消そうとした
その真実を確かめる勇気はない
以前とは比べられないほど私の中のレイの存在は大きい
レイに教えられ、与えられた安らぎを、レイ自身に奪われてしまったら…
その時自分がどうなってしまうのか考えたくもなかった
そして私は意図せず、この時間の記憶を消してしまいたいと望んでいたようだ
レイは相変わらず1日おきに依頼を受け、それに合わせて私も近場の採取依頼を受けるようになっていた
まだ行った事の無い場所も多く新しい発見もある
依頼の後はクラフト系のお店で時間をつぶしたり、商業ギルドに寄ってメリッサさんと話をすることもある
全ての用が済んだらカフェで本を読む
それが私とレイの日常になっていた
いつもと違うこと
それが思いもよらないことを引き寄せるのだとこの時の私は気づいていなかった
私は以前からの約束があったため珍しく依頼を受けずに町にいた
おそらく依頼を定期的に受けるようになってからはじめてのことだ
そのことに少しくすぐったさを感じながら皮製品を扱う店に入った
「オルドさんお久しぶりです」
「サラサちゃんいらっしゃい。頼まれてたのちゃんと用意できてるよ」
「本当?良かった~」
オルドさんから包みを受け取る
これは以前からオルドさんにお願いして準備してもらっていたものだ
「早速だけど、作業台借りてもいい?」
「ああいいよ」
快諾をもらいさっそく作業台で包みを開ける
「いい色」
「そりゃ良かった」
注文通りの品を用意できて良かったとオルドさんが笑みを浮かべる
4本の茶系の細長い皮は、作業台に並べると美しいグラデーションをつくり出す
頼んでおきながらここまできれいな色合いで揃えてもらえるとは思っていなかっただけに自然と顔がにやけていた
「サラサちゃん、顔がヤバいぞ」
「え?嘘?」
思わず頬を手で隠す
「そんなににやけてた?」
「ああ。レイが見たら周りから隠す程度にはな」
半分冷やかされて顔に熱が集まるのが分かった
「ちょっと気にはなってたけどその様子見て安心したよ」
「え?」
「いや。何でもない。ゆっくり作業するといい」
誤魔化すように言って背を向けたオルドさんに首をかしげながらも私の意識は作業台に向いていた
準備を整えると、しばらく黙々とその皮を編み続けた
…が、その手を突然止めた
「オルドさんごめん、ちょっとだけこのまま置いといてもらってもいい?」
「今日は使わねぇから好きにしな」
オルドさんは店の奥で何か別の作業をしているようだ
「ありがと。ちょっと出てくるね」
「おう。気を付けてな」
私はオルドさんに見送られて準備し忘れたものを思い出し別の店に向かった
「え…?」
通りを歩いていた私は一瞬見間違いかと思い改めて前を見る
「何…あれ…」
見間違いではなかった
レイが知らない女性と通りを横切っていく
しかもその女性はレイの腕に自分の腕を絡めている
女性に触れられるのを極端に嫌うレイがそれを許してる?
そう考えると背筋が寒くなる
「うそ…」
呟く声が震えていた
奥側にいる女性が楽しそうに話しているのが分かる
信じたくない気持ちに飲まれそうになりとっさに物陰に隠れた
変わった様子などなかったはずだ
いつもと変わらず穏やかな、それでいて甘い幸せな時間を過ごしていた
少なくとも私はそう思っていた
「依頼の関係かもしれない…よね」
自分に言い聞かせるようにつぶやく
でも腕を絡ませて歩くような依頼などあるのだろうか
立ち尽くした自分の足元が震えてくるのが分かった
「知り合いも多いし私もいるかもしれない町中だし…それにマフラーだってしてるし…」
自分を納得させるための情報を片っ端から引っ張り出す
プレゼントしたマフラーを喜んでいたレイが、それを身に着けたまま自分を裏切るはずがない
必死でそう思おうとした
でもこの時間、町の人通りは少ないことも知っていた
普段通り採取の依頼を受けていれば、私はまだ町にはいない
2人が向かった方向にあるのは鍛冶職人たちが集まる通りだけである
そこには色町もある
信じたいのに疑う要素が多すぎた
「そういえばオルドさんも…」
さっき気になってたけどと口走っていた
あれは何を気にしていたのだろうか…?
自然と浮き上がってくる一つの事実を必死で打ち消そうとした
その真実を確かめる勇気はない
以前とは比べられないほど私の中のレイの存在は大きい
レイに教えられ、与えられた安らぎを、レイ自身に奪われてしまったら…
その時自分がどうなってしまうのか考えたくもなかった
そして私は意図せず、この時間の記憶を消してしまいたいと望んでいたようだ
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