[完結]ある日突然『異世界を発展させて』と頼まれました

真那月 凜

文字の大きさ
35 / 199
10.居場所

1

しおりを挟む
「レイ早く」
出かける準備を済ませた私は玄関からレイを呼ぶ

「そんなに急ぐなら転移魔法使った方がいんじゃねぇの?」
レイは呆れながら階段を降りてきた

「やだ。レイと馬で行きたいの」
「しゃぁねぇなー」
レイの腕に自分の手を絡めると呆れながらも優しい笑みが返ってくる
最近になってようやくこうして自分から触れることに抵抗がなくなった

「今日はサラサの願いを全部叶えるって約束したからな。ほら行くぞ」
レイに促されて馬に乗ると当たり前のように体を支えてくれる
最初は恥ずかしくて仕方なかった乗り方も今は嬉しくて仕方がない

この世界に来てからちょうど1年が経ったこの日を、レイは私の誕生日だと言い張った
そのプレゼントとして望みを全部聞いてくれるらしい

馬上でレイの体に身を預けるとすぐに馬が走り出す
願ったのは町でのデートという名のお買い物だ
「買物なんていつでも出来んのに物好きだよな?」
「だってレイとの日常が一番大事だから」
そう答えた私にレイは苦笑する

町に着くといつものように色んな人と話をしながら店を見て回った
当たり前のようなその時間が私にとって何よりもかけがえのないものに感じる
一度失いかけたから余計かもしれないけど…

「フランさんこれ、正方形に切ってほしいんだけど…」
様々な紙を扱う文具店で突然の依頼をする

「正方形か?ちょっと待ってな」
フランさんは快く引き受けてくれる
突然の突拍子もないこういった依頼も大半の職人が快く引き受けてくれる

私が思い付きで前世にあったものをこの世界で作る度に、商業ギルドに登録されていると知ったのは最近だ
「今度は何が始まるんだ?」
いつも楽しそうに私の手元を覗き込むレイは出来上がったものをいつの間にか登録していた
最近ではレイに頼まれ店主が登録しに行ってくれることもあるらしい

「折り紙」
「おりがみ?」
「紙から色んな形が作れるの」
そう言ってもレイは首をかしげるばかりだ

この店では以前、本に挟むしおりを作ってもらっていたので、そこからイメージしようとしているのかもしれない
だとすれば分からなくても当然だ
ちなみにしおりは本が大好きなレイの為に作ったものだったりする

「こんな感じかい?」
フランさんが正方形に裁断した紙の束を持ってきてくれる
こんなに沢山は望んでなかったけど…と思ったけど流石に口には出せなかった

「ありがと」
私は受け取ると作業台を借りて折り紙を始める
「まずは…定番の鶴かな?」
呟きながら懐かしい紙の感触を楽しみながら鶴を折る

「「は…?」」
出来上がったものを見てレイもフランさんもキョトンとしている

その表情を見て少しいたずら心が芽生えた私はだまし船を作ることにした
「ねぇレイ、この船の帆を持って」
「ここか?」
「そうそう。じゃぁ少しの間目を閉じて?」
「ああ」
レイは素直に目を閉じる
それを確認して私は少しだけ船をいじった

「もういいよ」
目を開けたレイは手元の舟を見て驚いた顔をしていた

「え?俺手離してないよな?」
レイにそう問われたフランさんはコクコクと首を縦に振るだけだった

「これ、だまし船って言ってね、そうやってだまして遊ぶの。残念ながら初めての人にしか通用しないけど」
笑いながら言う私を見てフランさんが船を手に取りまじまじと見ていた
レイとフランさんがお互いに仕掛け合ってるのを見て思わず笑ってしまう

「1枚で作ることも出来るんだけど、こうやって何枚か作って立体にすることも出来るんだよね」
そう言いながら作り出したのは6枚使った立方体と12枚使った24面体だ
たしか12枚使ったのはくす玉って呼ぶ人もいたっけ?

「あとは~子供が喜ぶのが飛行機かなぁ」
「飛行機?」
聞きなれない言葉に2人はぽかんとする
そう言えば飛行機はこの世界にはないか…

「えっと…鳥とかトンボみたいな?こうやって折ったのを飛ばし合いするの」
「飛ばし合い」
「そう。こんな感じで…遠くまで飛んだ人の勝ち」
何とか鳥に近い形に折ったものを実際に飛ばして見せる

「折り方に決まりは無いから結構楽しめるんだよね」
「…俺も折ってみる」
フランさんが食いついた
それに触発されるようにレイもあーでもないこーでもないと言いながら折っている
そして飛ばしてみた結果…
「よっしゃ。俺の勝ち!」
喜びの声を上げたのはフランさんだった

「いやーこれ楽しいな?」
「何か悔しいな…フランもう一回だ」
レイは新たに折りはじめ、2人はしばらく飛行機の飛ばし合いを楽しんでいた


しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

〈完結〉【書籍化&コミカライズ】悪妃は余暇を楽しむ

ごろごろみかん。
恋愛
「こちら、離縁届です。私と、離縁してくださいませ、陛下」 ある日、悪妃と名高いクレメンティーナが夫に渡したのは、離縁届だった。彼女はにっこりと笑って言う。 「先日、あなた方の真実の愛を拝見させていただきまして……有難いことに目が覚めましたわ。ですので、王妃、やめさせていただこうかと」 何せ、あれだけ見せつけてくれたのである。ショックついでに前世の記憶を取り戻して、千年の恋も瞬間冷凍された。 都合のいい女は本日で卒業。 今後は、余暇を楽しむとしましょう。 吹っ切れた悪妃は身辺整理を終えると早々に城を出て行ってしまった。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

ヒロインですが、舞台にも上がれなかったので田舎暮らしをします

未羊
ファンタジー
レイチェル・ウィルソンは公爵令嬢 十二歳の時に王都にある魔法学園の入学試験を受けたものの、なんと不合格になってしまう 好きなヒロインとの交流を進める恋愛ゲームのヒロインの一人なのに、なんとその舞台に上がれることもできずに退場となってしまったのだ 傷つきはしたものの、公爵の治める領地へと移り住むことになったことをきっかけに、レイチェルは前世の夢を叶えることを計画する 今日もレイチェルは、公爵領の片隅で畑を耕したり、お店をしたりと気ままに暮らすのだった

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

男爵家の厄介者は賢者と呼ばれる

暇野無学
ファンタジー
魔法もスキルも授からなかったが、他人の魔法は俺のもの。な~んちゃって。 授けの儀で授かったのは魔法やスキルじゃなかった。神父様には読めなかったが、俺には馴染みの文字だが魔法とは違う。転移した世界は優しくない世界、殺される前に授かったものを利用して逃げ出す算段をする。魔法でないものを利用して魔法を使い熟し、やがては無敵の魔法使いになる。

侯爵令嬢に転生したからには、何がなんでも生き抜きたいと思います!

珂里
ファンタジー
侯爵令嬢に生まれた私。 3歳のある日、湖で溺れて前世の記憶を思い出す。 高校に入学した翌日、川で溺れていた子供を助けようとして逆に私が溺れてしまった。 これからハッピーライフを満喫しようと思っていたのに!! 転生したからには、2度目の人生何がなんでも生き抜いて、楽しみたいと思います!!!

最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である

megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。

虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました

たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。

処理中です...