[完結]ある日突然『異世界を発展させて』と頼まれました

真那月 凜

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7.レイの危機

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ミュラーリアに来て半年が過ぎ私は初めてレイと一緒に迷宮にもぐっていた
森の中での採取や狩りに慣れてきたのを見てレイが提案してくれたのだ

「そいつは水」
《ウォーターカッター》
言われた属性の魔法で魔物を倒す

「だいぶ慣れてきたな?」
「レイのおかげ。あと弾丸のみんなもだけど」
ドロップアイテムをインベントリにしまいながら返す

レイに火魔法を見せてもらい一通りのスキルをマスターしてから弾丸と一緒に何度か依頼をこなした
カルムが水と氷、ナターシャは光、トータは土、アランが風と氷の魔法をそれぞれ扱うため複製のスキルを活用するためだった
実際に見なくても複製のスキルがある為すでに習得していたことは黙っておいた

レイからは他の人がいる前では火魔法だけを使うように言われているが今はレイと2人だ
私よりもレイが楽しんでいるように見えるのは気のせいということにしておこう

「次は光」
「光?」
「アンデットはヒールなんかで倒せる」
《ヒール》
「もう一発」
《ヒール》
言われるまま魔法を放つとドロップに変わった

ドロップを拾っている背後でレイが動く
「油断すんな」
背後から襲ってきた魔物をレイが倒していた

「…ありがと」
「次がボス部屋だから今日はそこまでな。ボスは俺がやる」
「わかった」
レイがボス部屋の扉を開き私は邪魔にならないように扉のそばで待機する
自分の何倍もの大きさのボスをレイはたったの2太刀で倒してしまう

「やっぱ強いね?」
「下級だからな」
「だとしても頼もしいよ?」
「…そりゃどうも。行くぞ」
レイはそのまま背を向けて歩き出す

レイ…?
記憶にある限り初めての反応だった

「サラサ?」
「あ、すぐ行く」
気を取り直してレイを追いかける
転移装置で1階に戻って迷宮から出ると空が茜色に染まっていた

「もう夕方なんだ…レイと一緒でも1日に10階までが限界かー」
「充分だろ」
「でもレイは最下層の30階まで行けるよね?」
「職業とランク考えろ。同じペースでたどり着けたら俺の立場がねぇよ」
「…確かに」
確かにそのとおりである
私は苦笑交じりに頷いた

「とっとと帰るぞ」
レイはそう言ってさっさと歩きだしてしまった
最近レイは以前よりも距離を取るようになった
私はそれに気づいていながら深く考えるのを避けていた
でもついこの間まで隣を歩いてくれていたレイの背中を見ながら歩くのは何故か抵抗があった
迷惑ばっかりかけてるし…いい加減うっとおしくなっちゃったかな…
そう思うと同時に胸がチクリと痛む

「っサラサ!」
突然レイの必死な声がした
うわの空で歩いていたようだ

「え…?」
我に返った私の目に飛び込んできたのは倒れこむ魔物とレイの姿だった
レイは私をかばい魔物の攻撃をまともにくらいながらも倒していた

「?!」
倒れこんだレイの背中が深くえぐれ一部からは骨が見えていた
鋭い爪がレイの背中を引き裂いたのだろう
息をするたびに流れ出す血が地面を赤黒く染めていく

「レイ…!」
起こっていることに対する恐怖で身動きすら取れない自分がいた

「…ラサ…大丈夫…か…?」
「ん…ごめ…レイ…」
「…なら…いぃ……」
私が頷くのを確認してからレイは意識を手放した

「レイ!!」
《ハイヒール》
とっさに魔法をかける
それでも血は止まらない

《ハイヒール》
《ハイヒール》…
何度繰り返しても変わらなかった

これ以上血がなくなったら…
想像して背筋が凍りつく
「お願いだから止まって!」

無心で叫んだ瞬間あたりが真っ白になり気づいたらレイの体から流れる血が止まっていた
「よかった…」
おそらく創造のスキルが発動したのだろうということは分かるものの自分でも何が起こったかは分からない
今はただ血が止まったことに安堵した
呼吸の落ち着いたレイの頬に触れると温もりが伝わってきた
「生きてる…」
そのことにただ感謝した

傷がふさがったとはいえ流れた血が戻るわけではないようでレイの顔色は戻らない
何かあった時のためにと持たされていた上級ポーションをレイの口にゆっくり流し込む
「っゴホッ…」
咳と共に吐き出された

飲み込めない…?
自分の顔から血の気が引くのが分かった
何とかしないと…
どうしたら飲ませることができる?
散々考えてたどり着いた一つの答え
私はポーションを口に含みレイの口にゆっくり少しずつ流し込む

『コクッ…』
力なくではあるものの飲み込んだのが分かる
全て飲ませるまでに10分近くかかった
「よかった…」
これで最悪の事態は免れることができるだろうと思うと涙がこぼれてきた


レイの部屋へ…!
強く願った瞬間転移していた
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