[完結]Believe~あなたの幸せを~

真那月 凜

文字の大きさ
上 下
9 / 9

9.その後

しおりを挟む

海莉へ

私がこの世から居なくなる事気付かない振りしてくれてありがとう。
小さい頃から海莉のサッカーする姿が大好きだった
だからどうかこれからもサッカーを続けてね?
私はずっと空の上から海莉のこと見てるから…

この先私の事は忘れて新しい恋をして温かい家庭を作って幸せになって下さい
私は最後に貰うゴールだけで充分だから
海莉のこれからの人生がサッカーと共に幸せなものでありますように…

瑞穂



部屋に残されていたこの手紙を海莉は常に持ち歩いた
そして2年後瑞穂の命日に交通事故で息を引き取るまで手放す事はなかった



「忍さん」
「律子ちゃん…」
海莉の事故にあった場所で忍はうなだれていた

「やっぱり忍さんも来てたんですね」
律子は忍の手に大きな花束が抱えられているのを見て言った

「2人…向こうで会えたかな…?」
「会えてるよ。絶対」
「忍さん?」
言い切る忍に律子は不思議そうな顔をした

「ここは海莉が逝った場所だけど…俺たち3人が出会った場所でもあるんだ」
「え…?」
「リトルに向かう俺に引っ付いてきてた瑞穂がここでこけたんだ。その時『大丈夫か?』って声をかけたのが海莉だった」
「…」
「あの時から瑞穂の目にはずっと海莉が映ってた。だから絶対瑞穂が迎えに来てるさ」
「…そうですね」
律子の声は震えていた

「瑞穂が逝ってからもずっと椎名君は手紙を持ち歩いてたんですよね?」
「あぁ。何度も読み返してぼろぼろになってもずっと…」
忍はそう言って花束を置いた

「律子ちゃん」
「はい?」
「不謹慎かもしれないけど俺は2人が早く逝ってよかったのかもしれないって思うんだ」
「忍さん?」
律子には意味が分からなかった

「瑞穂はずっと病気と闘ってた。沢山の制限を受けて沢山の事を諦めて…物心付いてからはずっと笑ってたけど小さい頃は笑うことなんて無いほど傷ついてた」
「…」
「俺はそんな瑞穂を見てるのが辛かった。だから瑞穂が逝った時どこかでほっとしたんだ。これであいつはもう苦しまなくて済むってさ…」
「忍さん…」

「でも次は瑞穂を失って苦しんでる海莉見てやり切れなくて…何であいつらが苦しまなきゃならないのか納得できなくてさ…」
「…」
「あいつがココで事故に遭って逝っちまったって分かった時これであいつらまた一緒にいれるってそう思ったんだ。もう苦しまずに2人で…」
「…私もそう思います。だって2人が一緒にいる姿は自然すぎて…本当に綺麗だったから…」
律子の目から涙がこぼれる

短い生涯を必死で生きた大切な2人がやっと落ち着いて寄り添うことが出来る
そう思うと残された2人もどこか救われた気がした

『私たちの分も幸せに生きてね』

「「え?」」
風と共に流れるように響いた『声』に2人が顔を見合わせる

「今…」
「瑞穂?」

空耳かも知れない
でもそれは常に誰かの幸せを望み続けた瑞穂の言葉だったと2人はどこかで確信していた


Fin
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

人生を共にしてほしい、そう言った最愛の人は不倫をしました。

松茸
恋愛
どうか僕と人生を共にしてほしい。 そう言われてのぼせ上った私は、侯爵令息の彼との結婚に踏み切る。 しかし結婚して一年、彼は私を愛さず、別の女性と不倫をした。

愛する貴方の心から消えた私は…

矢野りと
恋愛
愛する夫が事故に巻き込まれ隣国で行方不明となったのは一年以上前のこと。 周りが諦めの言葉を口にしても、私は決して諦めなかった。  …彼は絶対に生きている。 そう信じて待ち続けていると、願いが天に通じたのか奇跡的に彼は戻って来た。 だが彼は妻である私のことを忘れてしまっていた。 「すまない、君を愛せない」 そう言った彼の目からは私に対する愛情はなくなっていて…。 *設定はゆるいです。

拝啓、大切なあなたへ

茂栖 もす
恋愛
それはある日のこと、絶望の底にいたトゥラウム宛てに一通の手紙が届いた。 差出人はエリア。突然、別れを告げた恋人だった。 そこには、衝撃的な事実が書かれていて─── 手紙を受け取った瞬間から、トゥラウムとエリアの終わってしまったはずの恋が再び動き始めた。 これは、一通の手紙から始まる物語。【再会】をテーマにした短編で、5話で完結です。 ※以前、別PNで、小説家になろう様に投稿したものですが、今回、アルファポリス様用に加筆修正して投稿しています。

忙しい男

菅井群青
恋愛
付き合っていた彼氏に別れを告げた。忙しいという彼を信じていたけれど、私から別れを告げる前に……きっと私は半分捨てられていたんだ。 「私のことなんてもうなんとも思ってないくせに」 「お前は一体俺の何を見て言ってる──お前は、俺を知らな過ぎる」 すれ違う想いはどうしてこうも上手くいかないのか。いつだって思うことはただ一つ、愛おしいという気持ちだ。 ※ハッピーエンドです かなりやきもきさせてしまうと思います。 どうか温かい目でみてやってくださいね。 ※本編完結しました(2019/07/15) スピンオフ &番外編 【泣く背中】 菊田夫妻のストーリーを追加しました(2019/08/19) 改稿 (2020/01/01) 本編のみカクヨムさんでも公開しました。

夫は私を愛してくれない

はくまいキャベツ
恋愛
「今までお世話になりました」 「…ああ。ご苦労様」 彼はまるで長年勤めて退職する部下を労うかのように、妻である私にそう言った。いや、妻で“あった”私に。 二十数年間すれ違い続けた夫婦が別れを決めて、もう一度向き合う話。

お飾りの侯爵夫人

悠木矢彩
恋愛
今宵もあの方は帰ってきてくださらない… フリーアイコン あままつ様のを使用させて頂いています。

自信家CEOは花嫁を略奪する

朝陽ゆりね
恋愛
「あなたとは、一夜限りの関係です」 そのはずだったのに、 そう言ったはずなのに―― 私には婚約者がいて、あなたと交際することはできない。 それにあなたは特定の女とはつきあわないのでしょ? だったら、なぜ? お願いだからもうかまわないで―― 松坂和眞は特定の相手とは交際しないと宣言し、言い寄る女と一時を愉しむ男だ。 だが、経営者としての手腕は世間に広く知られている。 璃桜はそんな和眞に憧れて入社したが、親からもらった自由な時間は3年だった。 そしてその期間が来てしまった。 半年後、親が決めた相手と結婚する。 退職する前日、和眞を誘惑する決意をし、成功するが――

【完結】忘れてください

仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
愛していた。 貴方はそうでないと知りながら、私は貴方だけを愛していた。 夫の恋人に子供ができたと教えられても、私は貴方との未来を信じていたのに。 貴方から離婚届を渡されて、私の心は粉々に砕け散った。 もういいの。 私は貴方を解放する覚悟を決めた。 貴方が気づいていない小さな鼓動を守りながら、ここを離れます。 私の事は忘れてください。 ※6月26日初回完結  7月12日2回目完結しました。 お読みいただきありがとうございます。

処理中です...