恋愛短編集

真那月 凜

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最後の願い

第3話

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「由紀子」
私は授業が終わるなり由紀子を捕まえた

「どうしたの?」
いつもと変わらない笑顔が痛かった

「…話あるんだけど」
「OK。カフェ行こ」
由紀子はそれだけ言ってカフェに向かった

「で、話って?」
「…私ずっと嘘ついてたんだ」
私は覚悟を決めていった

「彗耶君の事でしょ?」
由紀子の言葉に頷く

「やっぱりね。そうだと思ってた。でもどうして?」
「…」
「私が彗耶君好きだって言ったから?」
「…それもある。でもそれだけじゃない。ただそれが何かは今は言えないけど…」
私の言葉に暫く由紀子が沈黙していた

「彗耶君と付き合うの?」
「それは出来ないよ」
「何でよ?好きなんでしょ?」
「好きだよ。高2の時からずっと」
「だったら…」
由紀子の言葉に首を横に振る

「…いい加減にしてよね?私は好きでも付き合えないのよ?嫌味にしか聞こえないよ。私帰る」
由紀子が吐き捨てるように言って帰っていった

それでも私には何も言うことが出来なかった

「派手にやらかしたな」
顔を上げると彗耶がいた

「俺も理由を知りたいんだけどさ」
「…聞いて?」
「聴こえたんだよ。高2の時から…っていったな?」
私は頷く

「だったら何で駄目なんだよ?」
「今から説明するから」
私は立ち上がると歩き出した

「どこ行くんだよ?」
「行けばわかるよ」
私はそれ以上言わずに歩き続けた

「あら亜紗美ちゃん」
大学病院のそばを歩いていると車椅子に乗った女性が声をかけてきた

「山本さん。お散歩ですか?」
「ええ。今日はいい天気だから。そちらは彼氏?」
山本さんは彗耶を見て尋ねた

「だといいんですけどね。私に彼氏は…」
「あ…ごめんなさいね」
山本さんは事情を思い出したらしく気まずそうにする

「いいんです。気にしないで下さい」
私は笑顔を作って言う

「でも…」
「もう慣れましたから。それより、お散歩楽しんでください」
「そう?じゃぁ私はこれで」
山本さんはそう言って去って行った

その後も私は沢山の病人に話しかけられた
「ボランティアでもしてんのか?」
「ボランティア?…だったらいいんだけどね」
私は苦笑して言う

彗耶が何の疑問も解決できない状態のまま私は病院の中に入った

「亜紗美」
「圭ちゃん松葉杖になったんだ?」
「おう。やっとな。おかげであさって退院だ」
「本当に?おめでとー!」
私は思わず笑顔になった

「サンキュ。それより約束覚えてるか?」
「琵琶湖連れてってくれるんでしょ?もちろん覚えてるよ」
「…ならいいんだ」
「変な圭ちゃん。また電話するね」
「おう」
圭ちゃんは笑顔で言ったけどどこか表情が暗かった

「亜紗美ちゃん先生がお待ちかねよ」
看護婦さんが近づいてきた

「見月さんこんにちは。圭ちゃん退院なんですね?」
「そうなのよ。退院は喜ばしいんだけど目の保養がいなくなるのは淋しいわぁ」
見月さんは苦笑する

「目の保養といえば隣の彼は?」
「私の同級生です。以前1度だけ話したことあるでしょ?」
私の言葉に見月さんは暫く記憶をたどっていた

「あぁ。思い出した。例の…」
「はい。今日全部話そうと思って」
「なるほどね。幸運を祈ってるわ」
見月さんは笑顔で言った

「ありがとう。先生の所行ってきますね。彗耶こっち」
「あ、あぁ」
彗耶は相変わらずわけのわからないままついてくる

『コンコン』

「はい」
ドアをノックするとすぐに中から返事があった

「亜紗美です」
「どうぞ」
その言葉と同時にドアが開いた

「こんにちは」
「今日は顔色がいいね?安心したよ」
「ありがとうございます。彼が昨日電話でお話した霧生彗耶君」
「あ、どぉも」
彗耶はとりあえず頭を下げた


「初めまして。亜紗美ちゃんの主治医の渡辺です」


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