[完結]あなた方が呪いと呼ぶそれは本当は呪いではありません

真那月 凜

文字の大きさ
上 下
79 / 80
おまけ

逆らってはならない相手(Side:ローカン)

しおりを挟む
舞踏会で師団長の娘のアンジェラが何かやらかしたらしい
そのせいでアリシャナが帝王の命でスターリング家に嫁いだというのを聞いて俺は嫌な予感がしていた

師団長は昔こそ技術だけは素晴らしい魔術師だった
でもそれは10年ほど前、師団長になるまでの話だ
自信に満ちた師団長から繰り出される魔術はかなりの威力があった
威力だけで言えば当時師団長にかなう者はいなかったし、だからこそ師団長になれたのだろうが…

「あれがピークだったんだろうな」
ぼそりと呟いた言葉に苦笑する

師団長になった途端人が変わったんだよな、あの人
権力を手にしたらダメになる人間の典型だった
それまで懸命に魔術を上達させるために励んでいたのが嘘のように、ふんぞり返るだけの人間になってしまったのだから自業自得でもあるだろう
それでもあの人が師団長でい続けられたのはアリシャナの力に他ならないと側近は皆知っている

それにスターリング家の当主は国務機関長のはず
以前から師団長を変えるべきだと進言していたのは有名な話だ
おそらくあの人は師団長が自ら仕事をしていないことに気付いているはず

「流石にアリシャナがしてるとは思ってないだろうが…」
常識的に考えてありえないことだから当然だ
アリシャナがその業務をこなせていること自体が奇跡に近い

「もし国務機関長がアリシャナに手を引かせたら…」
自らの言葉に俺は寒気がした
そんなことを考えていたからなのか突然帝王から召喚状が届いた

「大丈夫かローカン?」
「気を確かにな」
帝王からの召喚状というだけに側近の仲間が気にかけてくれる
それに背を押されるように俺は帝王の待つ部屋に訪れた

「知ってることを話せ」
「…!」
開口一番発せられた言葉に息を飲んだ

ここで誤魔化せば俺だけでなく側近全ての一族の未来は一瞬で消えるだろうと悟った
だからみんなに申し訳ないと思いながらも全てを話した
申し訳なかったと最後に謝罪を繰り返す

「黙することでアリシャナの居場所を作っていたのだろう?そなた達には感謝している」
予想外の言葉だった

「我もそれなりに調べておる。ブラックストーン家でのアリシャナへの仕打ちに下手に口を出せばさらに当りが強くなっただろうな」
「…」
「そなた達が普通では考えられないボリュームの茶菓子を用意していたのも聞いている。そんな其方に頼みたいことがある」
そう前置きして帝王が口にしたのは俺に師団長代理をしろという命だった

「書類を全て2部ずつ、ですか…そんなことをしたら他の機関も混乱しませんか?」
2部ずつ書類が回れば単純に業務量が倍になるだけじゃなくタイミングのずれた書類の精査が必要になるはず

「それは無いと我は見ている」
帝王はキッパリ言い切った

「魔術師団の者には手間をかけることになるが1か月程協力を要請する」
「1か月…ですか?」
「それだけあれば十分だ」
帝王のその言葉通り1か月もしない内に師団長の無能さは誰の目にも明らかとなった
そして異例の裁判で師団長は処罰された

俺は代理から師団長に昇進することになったが、元師団長のようにはならないと心に強く誓ったのは言うまでもない
なによりあの帝王を欺けるなどかけらも思えない
そう言う意味では元師団長は強者だったのかもしれない…
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます

綾月百花   
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。

この度、猛獣公爵の嫁になりまして~厄介払いされた令嬢は旦那様に溺愛されながら、もふもふ達と楽しくモノづくりライフを送っています~

柚木崎 史乃
ファンタジー
名門伯爵家の次女であるコーデリアは、魔力に恵まれなかったせいで双子の姉であるビクトリアと比較されて育った。 家族から疎まれ虐げられる日々に、コーデリアの心は疲弊し限界を迎えていた。 そんな時、どういうわけか縁談を持ちかけてきた貴族がいた。彼の名はジェイド。社交界では、「猛獣公爵」と呼ばれ恐れられている存在だ。 というのも、ある日を境に文字通り猛獣の姿へと変わってしまったらしいのだ。 けれど、いざ顔を合わせてみると全く怖くないどころか寧ろ優しく紳士で、その姿も動物が好きなコーデリアからすれば思わず触りたくなるほど毛並みの良い愛らしい白熊であった。 そんな彼は月に数回、人の姿に戻る。しかも、本来の姿は類まれな美青年なものだから、コーデリアはその度にたじたじになってしまう。 ジェイド曰くここ数年、公爵領では鉱山から流れてくる瘴気が原因で獣の姿になってしまう奇病が流行っているらしい。 それを知ったコーデリアは、瘴気の影響で不便な生活を強いられている領民たちのために鉱石を使って次々と便利な魔導具を発明していく。 そして、ジェイドからその才能を評価され知らず知らずのうちに溺愛されていくのであった。 一方、コーデリアを厄介払いした家族は悪事が白日のもとに晒された挙句、王家からも見放され窮地に追い込まれていくが……。 これは、虐げられていた才女が嫁ぎ先でその才能を発揮し、周囲の人々に無自覚に愛され幸せになるまでを描いた物語。 他サイトでも掲載中。

冷遇された聖女の結末

菜花
恋愛
異世界を救う聖女だと冷遇された毛利ラナ。けれど魔力慣らしの旅に出た途端に豹変する同行者達。彼らは同行者の一人のセレスティアを称えラナを貶める。知り合いもいない世界で心がすり減っていくラナ。彼女の迎える結末は――。 本編にプラスしていくつかのifルートがある長編。 カクヨムにも同じ作品を投稿しています。

久しぶりに会った婚約者は「明日、婚約破棄するから」と私に言った

五珠 izumi
恋愛
「明日、婚約破棄するから」 8年もの婚約者、マリス王子にそう言われた私は泣き出しそうになるのを堪えてその場を後にした。

遺棄令嬢いけしゃあしゃあと幸せになる☆婚約破棄されたけど私は悪くないので侯爵さまに嫁ぎます!

天田れおぽん
ファンタジー
婚約破棄されましたが私は悪くないので反省しません。いけしゃあしゃあと侯爵家に嫁いで幸せになっちゃいます。  魔法省に勤めるトレーシー・ダウジャン伯爵令嬢は、婿養子の父と義母、義妹と暮らしていたが婚約者を義妹に取られた上に家から追い出されてしまう。  でも優秀な彼女は王城に住み、個性的な人たちに囲まれて楽しく仕事に取り組む。  一方、ダウジャン伯爵家にはトレーシーの親戚が乗り込み、父たち家族は追い出されてしまう。  トレーシーは先輩であるアルバス・メイデン侯爵令息と王族から依頼された仕事をしながら仲を深める。  互いの気持ちに気付いた二人は、幸せを手に入れていく。 。oOo。.:♥:.。oOo。.:♥:.。oOo。.:♥:.。oOo。.:♥:.  他サイトにも連載中 2023/09/06 少し修正したバージョンと入れ替えながら更新を再開します。  よろしくお願いいたします。m(_ _)m

悪役令嬢に仕立て上げられたので領地に引きこもります(長編版)

下菊みこと
恋愛
ギフトを駆使して領地経営! 小説家になろう様でも投稿しています。

婚約破棄されましたが、帝国皇女なので元婚約者は投獄します

けんゆう
ファンタジー
「お前のような下級貴族の養女など、もう不要だ!」  五年間、婚約者として尽くしてきたフィリップに、冷たく告げられたソフィア。  他の貴族たちからも嘲笑と罵倒を浴び、社交界から追放されかける。 だが、彼らは知らなかった――。 ソフィアは、ただの下級貴族の養女ではない。 そんな彼女の元に届いたのは、隣国からお兄様が、貿易利権を手土産にやってくる知らせ。 「フィリップ様、あなたが何を捨てたのかーー思い知らせて差し上げますわ!」 逆襲を決意し、華麗に着飾ってパーティーに乗り込んだソフィア。 「妹を侮辱しただと? 極刑にすべきはお前たちだ!」 ブチギレるお兄様。 貴族たちは青ざめ、王国は崩壊寸前!? 「ざまぁ」どころか 国家存亡の危機 に!? 果たしてソフィアはお兄様の暴走を止め、自由な未来を手に入れられるか? 「私の未来は、私が決めます!」 皇女の誇りをかけた逆転劇、ここに開幕!

ここはあなたの家ではありません

風見ゆうみ
恋愛
「明日からミノスラード伯爵邸に住んでくれ」 婚約者にそう言われ、ミノスラード伯爵邸に行ってみたはいいものの、婚約者のケサス様は弟のランドリュー様に家督を譲渡し、子爵家の令嬢と駆け落ちしていた。 わたくしを家に呼んだのは、捨てられた令嬢として惨めな思いをさせるためだった。 実家から追い出されていたわたくしは、ランドリュー様の婚約者としてミノスラード伯爵邸で暮らし始める。 そんなある日、駆け落ちした令嬢と破局したケサス様から家に戻りたいと連絡があり―― そんな人を家に入れてあげる必要はないわよね? ※誤字脱字など見直しているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。教えていただけますと有り難いです。

処理中です...