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おまけ
裁判所の前で(Side:令嬢A)
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それは突然のことだったの
帝王による裁判の宣言が行われるなんて初めてで私は凄くワクワクしてた
「そんな興味本位で見に行くものじゃない。いいから家でおとなしくしてなさい」
「いやよ。こんなの初めてだもの。見に行かなきゃ学園で仲間外れになっちゃうわ。それにお父様は裁判所内で傍聴するんでしょう?ずるいわ」
「ずるいも何も私のは仕事だ」
「仕事でもずるいものはずるいの!」
自分は聞けるからってのけ者にしようとして本当にずるいんだから!
お父様に言い返して私は馬車で裁判所に向かった
「ねぇトリノン」
御者に話しかけると何ですかと返ってくる
「どんな裁判なんだろう?」
「さぁねぇ…あっしには裁判なんぞ縁のないことなんで」
トリノンは興味なさげにそう言った
何よつまらないわね…
私はそうつぶやいて不貞腐れたように外を見る
いつもより馬車が多い
歩いてる人も同じように多い感じかしら?
やっぱりみんな裁判に興味があるのね
そう思いながら道行く人や馬車を眺めていた
「到着しましたよお嬢さん」
「ありがとう。トリノン」
「かえりはどうしやす?」
「終わる時間もわからないし辻馬車で帰るわ」
「承知しました。ではお気をつけて」
トリノンはそう言って引き上げていった
裁判所の前は驚くほど人がいた
「痛っ…」
誰かに足を踏まれたみたい
「誰よもう…」
痛いしお気に入りの靴は汚れるし最悪
そう思いながらも足を進める
「ちょっと…押さないでよ…」
せっかくおめかししてきたのにもみくちゃにされて台無しだわ
「邪魔だ」
「きゃぁ…」
年配の男性が人を押しのけるように通り過ぎていったせいで私は壁際に追いやられてしまった
「ほんとムカつく!」
思わず口にした瞬間鋭い視線を感じた
何か嫌な予感がして顔を上げると周りに居た人たちが軽蔑したようにこっちを見てた
「今の令嬢の言葉か?」
「あんな令嬢とはお近づきになりたくないな」
そんなささやき声が聞こえてきて顔が熱くなるのが分かった
「随分乱暴な女性ね」
「本当に。関わるべきじゃないわね」
「ええ。行きましょう」
3人連れの女性がそんなことを言いながら離れていった
「…失礼」
居たたまれなくなって私は俯いたままその場から逃げた
そして逃げた先で見かけた男性に目が釘付けになったの
「素敵な人…」
壁際で立ってるその男性を欲しいと思った
「お父様にお願いしたら何とかなるかしら?そのためにもお近づきになって名前を聞かないと…」
私は人ごみをかき分けて男性に近づこうとした
なのに…
「え?」
真っすぐ彼に向かって歩いてるはずなのに避けるように迂回して反対側に来てしまった
「何で?」
意味が分からない
とりあえずもう一度…
「ちょっと何でよ?」
また同じように反対側に来てしまい首を傾げる
「あの…」
声をかけても反応がない
聞こえてないのかしら?
そう思ってもう一度大きめの声で呼んでみたけど変わらない
「無視されてるのかしら?」
そう思ってると全く知らない男性が彼の真横に立った
「え…何で?そこは私が立ちたかった場所なのに…!」
悔しくなってもう一度彼の方に足を進めるけどやっぱり一定の距離から近づくことが出来ない
まるで見えない壁で覆われてるみたい
でもあの人は近づけるのよ?
どうして私は近づけないのかしら…
女性を近づけないため…とか?
でもそんな魔道具あったかしら?
一人で悶々と悩んでいると彼がどこかを見ているのに気づいた
その先から綺麗な女性が歩いてくるのが見えて胸がチリチリ痛む
これ…嫉妬?
「でもどうせあの人も彼には近づけないはず…」
そのざまを見て笑ってやろうと思ったのにその女性は彼の前まで足を進めた
親しそうに何か言葉を交わして彼に肩を抱かれるようにして行ってしまった
悔しいけど2人を包み込む空気に勝ち目がないと思ってしまったの
この令嬢がその二人がエイドリアンとアリシャナだったのだと知るのは少し先のお話
帝王による裁判の宣言が行われるなんて初めてで私は凄くワクワクしてた
「そんな興味本位で見に行くものじゃない。いいから家でおとなしくしてなさい」
「いやよ。こんなの初めてだもの。見に行かなきゃ学園で仲間外れになっちゃうわ。それにお父様は裁判所内で傍聴するんでしょう?ずるいわ」
「ずるいも何も私のは仕事だ」
「仕事でもずるいものはずるいの!」
自分は聞けるからってのけ者にしようとして本当にずるいんだから!
お父様に言い返して私は馬車で裁判所に向かった
「ねぇトリノン」
御者に話しかけると何ですかと返ってくる
「どんな裁判なんだろう?」
「さぁねぇ…あっしには裁判なんぞ縁のないことなんで」
トリノンは興味なさげにそう言った
何よつまらないわね…
私はそうつぶやいて不貞腐れたように外を見る
いつもより馬車が多い
歩いてる人も同じように多い感じかしら?
やっぱりみんな裁判に興味があるのね
そう思いながら道行く人や馬車を眺めていた
「到着しましたよお嬢さん」
「ありがとう。トリノン」
「かえりはどうしやす?」
「終わる時間もわからないし辻馬車で帰るわ」
「承知しました。ではお気をつけて」
トリノンはそう言って引き上げていった
裁判所の前は驚くほど人がいた
「痛っ…」
誰かに足を踏まれたみたい
「誰よもう…」
痛いしお気に入りの靴は汚れるし最悪
そう思いながらも足を進める
「ちょっと…押さないでよ…」
せっかくおめかししてきたのにもみくちゃにされて台無しだわ
「邪魔だ」
「きゃぁ…」
年配の男性が人を押しのけるように通り過ぎていったせいで私は壁際に追いやられてしまった
「ほんとムカつく!」
思わず口にした瞬間鋭い視線を感じた
何か嫌な予感がして顔を上げると周りに居た人たちが軽蔑したようにこっちを見てた
「今の令嬢の言葉か?」
「あんな令嬢とはお近づきになりたくないな」
そんなささやき声が聞こえてきて顔が熱くなるのが分かった
「随分乱暴な女性ね」
「本当に。関わるべきじゃないわね」
「ええ。行きましょう」
3人連れの女性がそんなことを言いながら離れていった
「…失礼」
居たたまれなくなって私は俯いたままその場から逃げた
そして逃げた先で見かけた男性に目が釘付けになったの
「素敵な人…」
壁際で立ってるその男性を欲しいと思った
「お父様にお願いしたら何とかなるかしら?そのためにもお近づきになって名前を聞かないと…」
私は人ごみをかき分けて男性に近づこうとした
なのに…
「え?」
真っすぐ彼に向かって歩いてるはずなのに避けるように迂回して反対側に来てしまった
「何で?」
意味が分からない
とりあえずもう一度…
「ちょっと何でよ?」
また同じように反対側に来てしまい首を傾げる
「あの…」
声をかけても反応がない
聞こえてないのかしら?
そう思ってもう一度大きめの声で呼んでみたけど変わらない
「無視されてるのかしら?」
そう思ってると全く知らない男性が彼の真横に立った
「え…何で?そこは私が立ちたかった場所なのに…!」
悔しくなってもう一度彼の方に足を進めるけどやっぱり一定の距離から近づくことが出来ない
まるで見えない壁で覆われてるみたい
でもあの人は近づけるのよ?
どうして私は近づけないのかしら…
女性を近づけないため…とか?
でもそんな魔道具あったかしら?
一人で悶々と悩んでいると彼がどこかを見ているのに気づいた
その先から綺麗な女性が歩いてくるのが見えて胸がチリチリ痛む
これ…嫉妬?
「でもどうせあの人も彼には近づけないはず…」
そのざまを見て笑ってやろうと思ったのにその女性は彼の前まで足を進めた
親しそうに何か言葉を交わして彼に肩を抱かれるようにして行ってしまった
悔しいけど2人を包み込む空気に勝ち目がないと思ってしまったの
この令嬢がその二人がエイドリアンとアリシャナだったのだと知るのは少し先のお話
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