チートな親から生まれたのは「規格外」でした

真那月 凜

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「何をするの?」
丁度読み終えたのかレティが話に入ってきた
「ロニーが剣を使いたいらしい。次の休みに教えてやる約束をしてたとこ」
「あら、そうなの?私も一緒に教わろうかな?」
「え?」
珍しくロニーが声を上げた

「…そういやレティが剣を使ったの見たことないな?」
「本当?」
「本当なのよね~魔法か体術ばっかりだから」
「体術?」
「殴ったり蹴ったりするやつだよ」
「え!?」
信じられないという目を向けるロニーに苦笑する
「それは…どう受け止めたらいいのかしら?」
「だ、だって、レティシアナはか弱そう…」
ロニーがタジタジになりながら言う

「ロニー、こう見えてレティは強いぞ?俺と同じAランクの冒険者だからな」
「すごい…」
「すごいよな?ただでさえ強いのに剣まで覚えられたら俺は喧嘩で勝てそうにないな…」
「ちょっとシア?」
「大丈夫」
「「?」」
何が大丈夫なのかとレティと同時にロニーを見ていた
「シアは最初からレティシアナに負けてる」
その言葉に思わず噴き出していた

「ロニー、それは大丈夫って言うのか?」
「間違った?」
真剣に悩むロニーに更に笑ってしまった
「まぁ…間違ってはいないな」
まさかロニーがそれを理解してるとは思わなかっただけだ

「ロニーは良く周りを見れてるな」
「?」
「ふっ…気にしなくていい。ただ、もっと子供でいていいんだぞ?」
「…うん?」
よくわからないまま頷いているのだろうロニーが我儘をいう日が来るのが楽しみだ

「あ、ロニーが剣に興味を持ったなら丁度いい」
俺はインベントリから刃の潰された剣を取り出した
「やるよ」
「…いいの?」
「ああ。これは俺がロニーと同じように剣の練習を始めた頃に父さんに貰った剣だ。危なくないように刃が潰してある」
ロニーは大事そうにその剣を抱きかかえるように持った
「ありがとう、シア。大事にする」
「おう」
何となく捨てられずに持ち続けてただけの剣
この様子なら本当に大事にされるんだろう
俺達は読み終えた本を持って屋上を後にした

「その剣を自由に振れる様になったら俺がロニーに合った剣を買ってやる」
ロニーから嬉しそうに剣を見せられたカルムさんはその場でそう宣言していた
「この役目は絶対に誰にも譲らないからな」
なぜか俺を睨みつけながら言う
「心配しなくても取らないって」
言いながらなんでこんなに必死なのか首をかしげていると…

「マリクとリアムの練習用の剣はレイが渡したし、最初の剣は私とサラサちゃんで用意しちゃったからね」
ナターシャさんがクスクス笑いながら言う
「それって自分の子供に剣を渡したかったってこと?」
「正解。だから次は譲ってあげてね」
「了解」
流石にカルムさんが可哀そうになった俺は絶対この約束はたがえないようにしようと決めた

「それにしてもお前あんな剣をよく残してたな?」
なんの役にも立たないだろうと言外に含ませながら父さんが言う
「残してたっていうか…残ってたの方が正しいかも?」
「あぁ、なるほど」
「インベントリは便利だけど、その分自分でも忘れてるものがたくさん入ってるものね」
「母さんも?」
「ええ。時々思い出に浸れるくらいにはね」
その思い出の内容がちょっと気になるけど聞くのは怖いな

俺たちがそんな話をしている間、カルムさんはロニーに早速剣の握り方を教えていた
「この様子じゃ俺じゃなくカルムさんが教えることになりそうだな?」
「ふふ…それもいいんじゃない?」
「そうだな。ロニーにとったら父親から教わること自体が宝物のような時間になるだろうしな」
そういう時間を積み重ねて、心の傷が少しずつでも癒えてくれればそれに越したことは無い

久々に剣を習うと聞きつけてマリクたちまで教えにやって来るようになることを
そしてそのせいでカルムさんの望みが砕かれることをこの時の俺達はまだ知らない
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