チートな親から生まれたのは「規格外」でした

真那月 凜

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「あれ?シア達は今日も読書?」
そう聞いてきたのはポールだ
俺達は本部屋から本を持って出てきたところだった

「そのつもりだ。何かあったか?」
「何も。ただ、本当に本が好きだよなって思っただけ」
「今さらじゃね?」
「確かに」
ポールは頷いて笑い出す

「シア、僕も一緒に読んでいい?」
「ああ、いいぞ。今日は屋上だ。読みたい本取ってこい」
「うん」
ロニーは頷いて本部屋に入って行った

「すっかり懐いた?」
「どうだろうな。多少甘えられるようになったのは間違いないだろうけど」
本なんて1人でも読める
読みながら何かを聞いてくるわけでもなくただ同じ場所で読んでるだけだしな
それでも誰かの側にいたいと思えるのは悪い事じゃない
ロニーがそれで安心できるなら好きにすればいいと思っている

「私としてはそっくりな2人が並んで本読んでる姿を見てるのが楽しいんだけどね」
「そうかよ…」
レティの言葉に苦笑しか出ない
「レティシアナも相当シアにはまってるよな?」
「そう?」
「ああ。もっとも、それはシアも一緒なんだろうけど」
「悔しかったらポールも相手を見つけることだな」
「うるせぇ!」
バツが悪そうに言うポールを見て俺達は笑いをこらえられなかった

「くそっ…もういいからとっとと読みに行けよ。ロニー、しっかりシアに甘えとけ」
「え?」
そう言い捨てて去っていくポールにロニーは首をかしげていた
「気にしなくていい。行こうか」
2人を促して屋上に向かった

「ここにするか」
風が通る場所を選び魔道具の灯りを付ける
「明るいね」
レティが目を細めながら言う
夕食が済んでいるだけに辺りはかなり暗い
その中で灯る魔道具の灯りは確かに明るい
「ロニーも灯りの届くところで読めよ」
「うん」
頷いて俺の真横に座った
まぁいいけど
そんなロニーをレティも微笑ましそうに見てるから気にしないことにする

「ロニーは今日は何を読むの?」
「…剣の使い方」
ちょっと俯きながら発せれられる言葉は不安げだ
それでも読みだせばすぐに没頭して自分の世界に入ってしまった
俺達も同じ穴のムジナ状態で本に没頭する

「ふぅ…」
1冊読み終えて大きく伸びをすると体がミシミシ音を立てた
「やっぱじっとしてると筋肉が固まるな」
首をひねったり腕を回したりしながら軽く筋肉をほぐすと少し楽になった
こうして俺が動いてても両隣の2人、レティとロニーは本に夢中のままだ
「中々の集中力だな」
こういう時無性に悪戯したくなるのは俺だけだろうか?
2人共本気で驚きそうだからしないけどさ…
時間的にもう1冊って時間じゃないから2人が読み終わるまでのんびりすることにした



「…シア」
「ん?」
暫く星を眺めていると、パタンと本を閉じたロニーが話しかけてきた
「僕も剣、使える?」
「そりゃ使えるさ。使い方を覚えたいなら教えてやるよ」
「ほんと?」
「あぁ。俺じゃなくてもルーク達と孤児院で一緒に教えてもらうのも有か」
そう言うと大きく首を横に振った
まだこの家の関係者以外と関わるのは怖いのだろう
それでもロニーにとっては大きな1歩だ
剣は外に出ないと使えない
人が怖くて引きこもり状態だったロニーがその剣を使おうとしていること自体が大きな意味を持つ

「じゃぁうちの近くだな。次の休みにやってみるか?」
「…うん!」
大きく頷くロニーの頭をついなでていた
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