チートな親から生まれたのは「規格外」でした

真那月 凜

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134.秋といえば…

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俺達が旅から戻って4か月、11月に入り、すっかり秋になっていた
「帰ってきたときは真夏だったのにな」
「ふふ…色々ありすぎてまだ4か月なんて嘘みたい」
そうだよな
レティと付き合いだして人族辞めて、オークションや隣町でのルーシーさん達との出会いにクロムのあれこれ、リアンとの契約もあった
それにシエラの目が治ったり大量の祝福を貰ったりもした
そして何より家族が増えたのは大きいよな~
なんてこれまでを思い返してみると本当に盛沢山だった

「何となく、旅の間より疲れた気もするな」
旅の期間より短いはずなんだけど…
「流石にそれは言いすぎじゃない?」
クスクス笑いながら言うレティに苦笑だけを返す

「で、その話題の尽きないシアは今日は何をする予定?」
「どうすっかな…秋といえば…」
「ん?」
「あぁ、前の世界でよく言われてた言葉を思い出してただけだ」
「良く言われてた言葉?」
首をかしげる仕草は何度見ても飽きないな
シャノンもよくする仕草だけど、あいつの場合はワザとの時が多い
コロッと騙されるバカもいるけど俺からするとあざとさが伝わってきてあきれる方が大きい

「食欲の秋、読書の秋、実りの秋、芸術の秋、運動の秋とか?」
「前の3つは分かるけど、最後の2つは何?」
「あれ?」
今度は俺が首をかしげる番だった
そういや芸術とか運動ってあんま耳にしない気がする

「芸術の秋は絵画や彫刻、工芸なんかを楽しむってこと、運動の秋は涼しくなって運動しやすい季節になったからって感じだったと思う」
何となくのニュアンスで言ってみた
辞書でちゃんとした情報を調べてもいいけど、それを言ったところで関係ない気もするから間違ってたとしても問題ないだろう

「考えてみればこの世界自体が、芸術を楽しむ以前の問題があるんだよな」
「問題?」
「母さんが細工物とか色々広めてるけど、それまでは必要最低限の物があればいいって言うのが前提にあっただろ?」
「あ…そういうことね。玩具もだけどこの家に来て初めて見たものがすごくたくさんあるもの」
下に並べられているのを思い浮かべているのかレティはどこかワクワクした表情を見せる
「ああ。だからこの世界で芸術の秋がひろがるのはもっと先の話だろうな」
ものを作るのは魔物から身を守れる武器や防具がメイン
それが、ただのインテリアになったりモニュメントになったりするまでにどれくらいの時間がかかるのか想像もできない
その過程を見れるならそれはそれで面白そうだけど
ん?寿命を考えれば少しくらいは見れるか?
ちょっとした期待が沸き上がる

「運動の方は…こっちもこの世界では関係なさそうだな」
「どうして?」
「前世ではこの家みたいな快適な家が当たり前で、馬車ではなく車や電車っていうもっと早くて乗り心地のいい乗り物が走ってたんだ」
「乗り心地がいいのは羨ましいかも」
「だよな。流石にコーラルさんのはマシだったけど…」
馬車の乗り心地は最悪だ
王家や貴族の馬車は多少ましなんだろうけど、俺達が乗る様な馬車は辻馬車か商人の護衛で乗る馬車になる
サスペンションがあるわけでもなくシートも板そのものとなれば舗装されてない道の振動は直でケツに来る

「それに普段から自分の足で歩く方が多いだろう?洗濯だってクリーンが使えなければ井戸か魔道具で水汲んで手洗いだし、冷蔵庫があるわけじゃないから買い物も毎日行く」
「そっか…あえて動こうとしなくても日常的に動いてるってこと?」
「そういうこと。だからこの2つがこの世界で浸透することは当分考えられないな」
この世界にはこの世界ならではの良さもあるからそれでもいい気はする
何となくそう思った
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