チートな親から生まれたのは「規格外」でした

真那月 凜

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123.杖

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人が何かを思いつくのはいつも突然だ
この日も俺は足を引きずるケインを見ながらふと思いつく
「そういや母さん」
「なに?」
「こっちで杖って見ないな」
「杖?」
「魔法の補助の杖は結構な割合で持ってるだろ?」
父さんとカルムさんが首を傾げながら言ってくる
確かにそっちの杖それなりに見かける
…と言っても魔法を使いこなす人の割合自体が低いから常に目にするわけじゃない
「その杖じゃないよ。足が悪い人とか高齢者が歩く時の補助として使う道具」
病院の中では飽きるほど見た杖だ
「そんなものがあるの?」
ケインが食いついた

「…そういえばこっちで見た覚えがないわね」
記憶をたどりながら母さんはつぶやいた
「杖があればケインも今より楽に長く歩けると思うけど?」
「そうね…どうして気付かなかったのかしら」
母さんはそう言いながらブツブツ言い始めた
「げ」
父さんが嫌そうな顔をする
何だろ?
俺が首をかしげているとカルムさんとナターシャさんが苦笑した
「多分、創造を使ってるわよ」
「え…」
ナターシャさんの言葉に再び母さんを見ると…

「こんな感じかしら」
出現したのはロフストランドクラッチ型の杖だった
「一応、木と樹脂だけで作ったの」
得意げな顔に呆れてしまうのはなぜだろうか…
この世界にある素材だけだと強調したいってこと?
以前は創造を使うたびに魔力切れで寝込んでたらしいけど、今は滅多なことではそんなことにはならない
それくらい創造を使ったと思うとちょっと引くと同時に羨ましくもある
この世界にないものをイメージで作り出せるとしたら俺は何を作るんだろう?
小さい頃はそんなことを妄想したこともある

「お母さん、これが杖?」
ケインがまじまじと眺めている
「そうよ。こうやって使うの。痛い方の足と逆の手に杖を持ってまず杖を出す。次に痛い方の足、最後に痛くない方の足。その繰り返しよ」
母さんはそう言いながら実際に使って歩いて見せる
「もう一つの方法は同じように杖を持って、痛い方の足と杖を同時に出して、次に痛くない方の足を出す。その繰り返しよ」
母さんが見せたのは三動作歩行と二動作歩行だ
「あら、痛めてる方の足の代わりに杖が支えてくれてる感じかしら?」
ナターシャさんが呟いた
「そんな感じ。ケインもやってみてごらん?」
「うん!」
ケインは杖を受け取って実際に歩いてみる

「…こう?」
最初はこわごわと、少しづつ杖に体重を掛けながら歩いて見せる
最初は三動作歩行、そして二動作歩行共に試してみたところ、二動作歩行の方がしっくり来たのか途中からは二動作歩行しかしていない
「僕これならいっぱい歩ける!」
「ケイン…」
その言葉に母さんはくしゃくしゃの顔で笑う

「お母さんこの杖登録して?」
「そうね。これは登録しましょうね」
普段登録を渋る母さんが珍しく即答だった
まぁ、ルーシーさん経由で聞いたケインの夢を知っているから否やは無いんだろう
母さんはその場で大人用のサイズと子供用サイズを1本ずつ作って俺に渡してきた
「今日町に買い物に行くんでしょう?ついでに登録してきてちょうだい」
「了解」
杖をつくケインが一緒に行けば説明する必要もないだろう
あとは木工系の職人が量産することで広まるはずだ
「やっぱりサラサさんは凄いね」
「だな。あ、登録するならケインも一緒に連れて行くぞ?」
「そうね。実際に使ってるところ見た方が話も早そうだしケインもそれでいい?」
「うん!」
大きく頷くケインの同行が決まった
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