チートな親から生まれたのは「規格外」でした

真那月 凜

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112.呼びだし

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俺が妖精として人型を認識できるのは祝福をくれた風と火属性の妖精だけ
それ以外はきれいな球体の光に見えるし、その光の淡い色味で属性は何となくわかる
「闇属性の妖精か?」
『うん。貴族に捕まって痛めつけられて左足がなくなった状態で放り出されたんだ!』
『お願いシア!この子を助けて』
助けたいのは山々だが俺にはただの光のたまにしか見えない以上手が出せない
「…闇属性は俺には光の玉にしか見えないんだが…その姿を見る方法はあるか?」
そう尋ねた途端全ての妖精が俺を見た気がした
光の玉に関しては何となくでしかないけど
『シアに闇の祝福を』
『レティシアナに闇の祝福を』
綺麗な球体を保っていた闇属性の妖精が俺達のそばまでやって来てそう言った
その途端人型に見える妖精が一気に増えた
「まぁ…」
レティは初めて妖精の姿を目にしたはずだ
こんな状況じゃ無けりゃさぞ喜んだだろうが…
そう思いながら俺は元の欠けていた妖精に視線を戻した
「!!」
「酷い…」
レティから零れた言葉は大げさでも何でもない
惨いという言葉がこれほど当てはまる状況を俺は知らない
なくなった左足、右足と両腕はかろうじてつながっている状態で、片耳も…裂けてるのか?
一部だけで繋がった状態の手足と耳
それは明らかに故意に引き裂いたものだ
かろうじて意識を保って入るものの既に朦朧としてる感じもする
どんな神経を持っていたらこんなことができるんだ?
思わず沸き上がった殺気をなんとか沈めた

妖精相手に俺の魔法が聞くのかは分からない
それでもやらないという選択肢はない
「エクスキュア(完全治癒)」
なくなった左足は俺にはどうすることも出来ない
でも他は何としてでも元に戻してやりたい
そう思いながら魔法を発動した
ごっそりと魔力を持って行かれる感覚がしたけど構ってられない
淡い光が妖精を包み込み、そして霧散するように光が消えた

ロイさんに譲ってもらったノートを、俺は旅の間に何度も読み返していた
同時に練習も繰り返してスキルレベルも全て上げておいて正解だった
旅の道中にわざわざケガするわけにもいかないから発動のみだったけど…

目の前の妖精のちぎれた手足や耳は元の状態に戻ったように見える
左足はどうにもならなかったけど流れ続けていた血は落ち着いてるように見える
「うまく…いったのか?」
不安に襲われながらじっと妖精を眺める
それが一瞬だったのか長い時間だったのか、正直分からない
静まり返ったその場に次に響いたのはかすかな声だった

『ボク…?』
ゆっくりと目を開けた妖精が俺を見て、そして辺りを見回した
『よかった…!』
『左足は無くなっちゃったけど生きててくれてよかった!』
妖精達の喜びがとんでもないことになってるな…
「よかったシア…」
レティはこらえきれなくなったのか涙を流しながらそう言った

『ありがとうシア!』
『ありがとう!』
次々とそう言いながら飛びついてくる妖精達にもみくちゃにされた
そんな中さっきの妖精が俺の膝にしがみ付くように乗ってきた
「どうした?まだどこか傷むか?」
「目に見えた傷は見当たらないけど精神的なモノかしら?」
同じように貴族に傷つけられていたレティは心配そうに妖精を見る
『ボクの魔力、貴族に覚えられてる…また捕まるかもしれな…』
震えながらそう言う姿は痛々しい
全長5センチほどの妖精にとって人間はとてつもなく大きい
姿どころか光の玉として認識できる人も少ないとはいえ、その恐怖はどれほどのものだろうか…
「俺に出来ることはあるか?」
守ると言ってもどう守ればいいか正直検討が付かない
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