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110.盛りだくさん
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「で、次もケインに関することなんだけど」
こっちは少し重い話なだけに言いづらい
「どうした?」
「ケインが母さんに足を治してもらわない理由」
「!」
母さんが俺を凝視する
その目が少し揺れてるのはきっと気のせいじゃない
「俺が直接聞いたわけじゃないんだ。ルーシーさんが聞いたうえで伝えてくれただけだからケインの前では知らないふりをしてやって欲しいんだけど」
そう前振りすると皆頷いてくれる
「孤児院に同じようなけがをした子がいるからみたいなんだ」
「スレイのことか。確かにあいつも馬車にはねられた時に怪我して今も足を引き摺ってるか…」
カルムさんからすぐに名前が出てきた
こういうとこはやっぱすごいな
「ケインは幼いころから私の力が特別だと分かっていたのね…」
母さんは瞬時に悟った
「ルーシーさんの前で鎮痛とか麻痺改善の効果がある薬草に異常に興味を示したらしい。その時に理由を聞いたら自分は母さんに直してもらえるけどそれじゃ嫌なんだって言ったらしい」
決して母さんを否定しているわけじゃない
でも自分だけ優遇されるのは違うとどこかで思ってる
「似たようなケガしてる人皆の症状を完治できなかったとしても緩和したい。スレイと一緒に快方に向かうならその方が嬉しいからだってさ」
それを聞いたとき俺は不覚にも泣きそうになった
弱くて守ってやらないといけないと思っていた弟が、知らない間に強く優しい心を自分の中に育てていた
それは母さんも同じみたいでその目から涙が零れ落ちた
そんな母さんを父さんが抱き寄せる
「そうか…だからこそケインは弟子入りしたいってことだな」
既に母さんの知ってることはほぼ吸収しつくしてる
でもルーシーさんはさらに沢山の知識をもっていた
そこに可能性を見いだすのは当然のことなのかもしれない
まだ10歳
でも子供だから可能性が無いわけではない
それは俺達が証明してきた
だからこそ何があっても力になってやりたいと思う
とはいっても俺が手伝えるのは素材集めくらいだろうけど…
「ケインの事は分かった。あとはお前のことか?」
「うん。まぁ」
そこまで大きなことではないはずなんだけど周りがどうとらえるかは分からない
「実は帰りに盗賊に遭遇したんだけどさ」
瞬時に空気が張り詰めた
こういうところは高ランクなんだと感じる
「人数としては30人そのうち2人が元Bランクの冒険者」
「それで?」
「とりあえず半分ぐらいは範囲攻撃で沈めて騎士と手分けして残りをって感じだったんだけど…」
うん。あれは完全に俺の思い付きだったよな
「『マーキング』で味方に俺の魔力を繋いで『広範囲反射』を試してみたら出来たみたい?」
完全なる沈黙が返ってきた
しかも恨めしそうな視線付き
「…そもそも何でそんなことを思いつくんだ?」
最初に気を取り直したのはアランさんだった
「いや、人数いたしケインもいるしでさっさと片付けたいなって」
「さっさと片付けたい…」
「そりゃ皆が思うことだろうけどだな…」
残念そうな口ぶりで続けられると居たたまれない
「スタンピードの時ずいぶん楽になりそうね」
突然呑気な発言をしたのは例にもれず母さんだ
「だってそうでしょう?近づけないって言う意味なら結界があるし、結界はそれなりに使える人もいるけど、その結界の境界を超えてくれば攻撃が反射するんでしょう?」
何となく母さんの考えが読めた
「シアを中心に魔力を繋いだ人を配置すれば反射付きの結界が完成でしょう?」
「母さん…」
皆まで聞きたくないのは俺だけだろうか
「そういうことだからシア、反射出来る範囲の拡大と持続の長期化、頑張ってね」
にっこり笑って言う母さんに返す言葉がない
「サラサ、流石にシアが可哀想だ」
「出来ればそれは最終手段にしてもらいたいもんだな」
「あらどうして?」
「息子ひとりに守られるなんて情けなすぎるだろ」
え?そっち?
父さんの言葉に別の意味で驚いた
「それにシアだけに頼ればシアの不在時にどうすることもできなくなる」
「それは…確かにそうね」
カルムさんの言葉に母さんは頷いた
「保険や切り札として持ってるならいいがな。シアもレベリングの為ならともかくそれを当たり前の手段にするのはやめとけ。シャノン達含めて他の奴がいる時は特にだ」
「分かった。そこにいるメンツでどうしようもないときだけにする」
素直に同意して今回の報告が完了した
その4日後、セシリオがジーンの家族に引き取られたとコーラルさんから連絡が来た
一目でジーンに懐いたセシリオを奥さんも義理の姉になった2人も気に入ったという
今後、魔法や剣を使える未成年の子には、希望すれば騎士団の見習いとして訓練に参加できる体制を整えることになったらしい
もちろんその対象は孤児も含まれているし訓練に参加する際の費用も発生しない
騎士団としては教えることで自分を見つめ直すこともできるというのが理由だ
この制度のおかげで訓練に参加した孤児が後に騎士団にスカウトされて大活躍することになる
こっちは少し重い話なだけに言いづらい
「どうした?」
「ケインが母さんに足を治してもらわない理由」
「!」
母さんが俺を凝視する
その目が少し揺れてるのはきっと気のせいじゃない
「俺が直接聞いたわけじゃないんだ。ルーシーさんが聞いたうえで伝えてくれただけだからケインの前では知らないふりをしてやって欲しいんだけど」
そう前振りすると皆頷いてくれる
「孤児院に同じようなけがをした子がいるからみたいなんだ」
「スレイのことか。確かにあいつも馬車にはねられた時に怪我して今も足を引き摺ってるか…」
カルムさんからすぐに名前が出てきた
こういうとこはやっぱすごいな
「ケインは幼いころから私の力が特別だと分かっていたのね…」
母さんは瞬時に悟った
「ルーシーさんの前で鎮痛とか麻痺改善の効果がある薬草に異常に興味を示したらしい。その時に理由を聞いたら自分は母さんに直してもらえるけどそれじゃ嫌なんだって言ったらしい」
決して母さんを否定しているわけじゃない
でも自分だけ優遇されるのは違うとどこかで思ってる
「似たようなケガしてる人皆の症状を完治できなかったとしても緩和したい。スレイと一緒に快方に向かうならその方が嬉しいからだってさ」
それを聞いたとき俺は不覚にも泣きそうになった
弱くて守ってやらないといけないと思っていた弟が、知らない間に強く優しい心を自分の中に育てていた
それは母さんも同じみたいでその目から涙が零れ落ちた
そんな母さんを父さんが抱き寄せる
「そうか…だからこそケインは弟子入りしたいってことだな」
既に母さんの知ってることはほぼ吸収しつくしてる
でもルーシーさんはさらに沢山の知識をもっていた
そこに可能性を見いだすのは当然のことなのかもしれない
まだ10歳
でも子供だから可能性が無いわけではない
それは俺達が証明してきた
だからこそ何があっても力になってやりたいと思う
とはいっても俺が手伝えるのは素材集めくらいだろうけど…
「ケインの事は分かった。あとはお前のことか?」
「うん。まぁ」
そこまで大きなことではないはずなんだけど周りがどうとらえるかは分からない
「実は帰りに盗賊に遭遇したんだけどさ」
瞬時に空気が張り詰めた
こういうところは高ランクなんだと感じる
「人数としては30人そのうち2人が元Bランクの冒険者」
「それで?」
「とりあえず半分ぐらいは範囲攻撃で沈めて騎士と手分けして残りをって感じだったんだけど…」
うん。あれは完全に俺の思い付きだったよな
「『マーキング』で味方に俺の魔力を繋いで『広範囲反射』を試してみたら出来たみたい?」
完全なる沈黙が返ってきた
しかも恨めしそうな視線付き
「…そもそも何でそんなことを思いつくんだ?」
最初に気を取り直したのはアランさんだった
「いや、人数いたしケインもいるしでさっさと片付けたいなって」
「さっさと片付けたい…」
「そりゃ皆が思うことだろうけどだな…」
残念そうな口ぶりで続けられると居たたまれない
「スタンピードの時ずいぶん楽になりそうね」
突然呑気な発言をしたのは例にもれず母さんだ
「だってそうでしょう?近づけないって言う意味なら結界があるし、結界はそれなりに使える人もいるけど、その結界の境界を超えてくれば攻撃が反射するんでしょう?」
何となく母さんの考えが読めた
「シアを中心に魔力を繋いだ人を配置すれば反射付きの結界が完成でしょう?」
「母さん…」
皆まで聞きたくないのは俺だけだろうか
「そういうことだからシア、反射出来る範囲の拡大と持続の長期化、頑張ってね」
にっこり笑って言う母さんに返す言葉がない
「サラサ、流石にシアが可哀想だ」
「出来ればそれは最終手段にしてもらいたいもんだな」
「あらどうして?」
「息子ひとりに守られるなんて情けなすぎるだろ」
え?そっち?
父さんの言葉に別の意味で驚いた
「それにシアだけに頼ればシアの不在時にどうすることもできなくなる」
「それは…確かにそうね」
カルムさんの言葉に母さんは頷いた
「保険や切り札として持ってるならいいがな。シアもレベリングの為ならともかくそれを当たり前の手段にするのはやめとけ。シャノン達含めて他の奴がいる時は特にだ」
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この制度のおかげで訓練に参加した孤児が後に騎士団にスカウトされて大活躍することになる
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2024/7/26 95.静かな場所へ、97.寿命 を少し修正してます
子供達の親のお話はこちら
■ある日突然『異世界を発展させて』と頼まれました(長編/ファンタジー)
この機会にご一読いただけると嬉しいです
■召喚に巻き込まれたけど元の世界に戻れないのでこの世界を楽しもうと思います
■あなた方が呪いと呼ぶそれは本当は呪いではありません
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