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107.薬屋

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「ようやく薬屋だな」
ジュース以外にも途中で何か所か立ち寄ったから10分程の道のりに1時間ほどかかった
その分戦利品もあったからいいんだけどな
「開けていい?」
「ああ、いいぞ」
ケインは返事を聞いてから扉を開けた
扉の中は少し薄暗い感じがするものの清潔感があって決して居心地の悪い場所ではなかった
「こ…んにちは…」
恐る恐ると言った感じで声をかけるケインの手は俺とレティの手をぎゅっと握っていた
「おや、珍しいお客さんだね」
「どうも。冒険者ギルドで良質な薬草を扱ってる店として紹介されたんだけど見せてもらっても?」
「ギルドが?」
年配の女性、おそらく受付嬢の言っていたルーシーさんが怪訝そうな顔をした
「何か問題が?」
「ああ、そうじゃないんだよ。ギルドが家を紹介するなんて珍しいと思ってね」
「どうして?」
ケインがすかさず尋ねる
「うちはギルドと商会と取引をしている店でね、基本的に一般客には売ってないんだよ」
「じゃぁボクはダメ?」
「おやおや、そういう意味じゃないから安心おし」
「本当?」
「ああ。本当だよ。だから好きに見るといい」
泣きそうだった顔が一気に笑顔になる

「ケイン、レティと見ててくれるか?」
「うん!」
「わかったわ」
2人は頷き店の中を歩き回る

「さっきの、どういうことか聞いても?」
「かまわないよ。ギルドが紹介したってことはお前さんはそれなりの冒険者なんだろう?」
「どういう意味だ?」
「言っただろう?ギルドと商会と取引していると」
「ああ」
「つまりそれなりの質を保つ代わりに不特定多数におろさない契約をしてるのさ」
「店を構えてる以上一般客も入って来るだろ?」
実際この店にはケインが理解できるレベルの看板が掲げられていた

「契約では商品を明確にしているからね。それ以外のものは一般客に売っても問題ない。まぁこんな場所にある店にやって来る物好きは少ないけどねぇ」
物好き…
間違ってはいないか
「冒険者が使いそうなものはギルドに置いてるし、一般客が使いそうなものは商会に置いてる」
「つまり普通はそのいずれかで買うと?」
「そういうことだね。それにあの子みたいに薬ではなく薬草そのものに興味を持つ者は珍しい」
店主はそう言いながらケインを見る
そのまなざしが思いのほか優しかった

「ケインは親の影響で物心つく前から薬草に触れてたんだ」
「親の影響?同業かい?」
「いや、唯の元冒険者だ」
「それは中々の…名前を聞いてもいいかい?私はルーシーだ」
「シアだ。彼女はレティ、後俺の弟妹と一緒にパーティーを組んでるんだ」
「ちょいと待ちな…シアと言う名の冒険者…まさか『無限』かい?」
ギョッとした顔にこっちの方が驚く
「そのまさかだな」
「…そうかい。なら母親はサラサだね。それなら納得だ」
ルーシーさんはようやく腑に落ちたというように俺達への警戒を解いた

「ケインと言ったか、サラサの息子ならこっちにおいで」
ルーシーさんはそう言いながら奥にある扉に向かう
俺達はケインと共に後に続いた
「ここは?」
「普段は見せることの無い部屋だよ。この辺で手に入らないものも置いてある」
そう聞いたケインは気になったものをルーシーさんに説明してもらいながら食いつくように薬草を見て回っていた
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