チートな親から生まれたのは「規格外」でした

真那月 凜

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閑話8 暗闇に差す光(side:レティシアナ)

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「レティシアナ、一人で生活してたなら魔物は倒せるのか?」
シアはしばらく考えてからそう尋ねてきた

「さっき食べた魔物くらいは普通に」
あれはBランクだし、動きも遅いけど…

「でも…」
「?」
「足がこうなってしまったから…」
常に痛みが走る足
誰もが目をそむけたくなるだろう傷跡に自分でも嫌になる
沢山の女性の目を引くだろうシアの目に一体この傷はどう映るんだろうか…

「ああ、そっちのが先だったな」
そう言ったシアが傷口の外側に軽く触れると…

「すごい…痛みが引いていく…?」
「俺にはこれが限界か」
「限界って…痛みがなくなったのに?」
「傷痕」
そこにはまだ酷い傷痕が残っていた

「そんな…充分だわ。助けて貰った上にこんな…」
傷みが無くなったなら前みたいに狩りをしながらなんとか食いつなぐくらいは出来るもの
傷痕よりも食いつなぐことの方が大事だものね
きっと良縁に恵まれることは無いだろうけど…
そんなことを考えていたらシアが再び口を開いた

「俺達は冒険者で、セトイカまで旅をした帰りなんだ」
そう言いながらシアがギルドカードを取り出した
「俺はこの通りAランク。あの2人はBランクだ」
Aランク?
強いはずだわ…

「あ…ごめんなさい。私助けてもらったのにちゃんと挨拶もしてなかったのね」
シアのランクを見て少し動揺していた私は本来なら隠すべきインベントリの存在を自ら明かしてしまった
でもシアも使えるみたいで、普段はマジックバッグをダミーで身に着けてると話してくれた

「ダミーのバッグ…私もそうしておけばよかったのかな」
そうしておけば魔封じの枷を嵌められることもなかったのに…

「私もあの2人と同じBランク」
そう言いながらギルドカードを見せると食い入るように見られた
何も変なことは書かれてないはずなんだけど?

「種族…」
あぁ、流石に目が行くのね
普段人にカードを見せる事なんてないから、それが記載されてることすら忘れてた

「私は純粋な龍神族の最後の一人なの。だからその種族名にはもう何の重みもないわ」
最後の一人ってことはこの先純粋な血を残すことは出来ないってことだから

「血筋は残せたとしてもこの先は薄まる一方だもの。今では自慢できるのも身体能力くらいかな」
他にも特殊な力を持ってはいるけど、その力を使えば私が両親につながるものもなくしてしまうから使う気はない

「…レティシアナが落ち着けそうな町が見つかるまで一緒に来るか?」
そんな私にシアは驚くような提案をしてくれた
何処かで望んでいたとはいえ流石に申し訳なさすぎる
だって今の私には何も返すことが出来ないから
なのにシアは私の断わる道をことごとく潰してしまった
その上で悪いと思うなら狩った魔物をルークとシャノンに分けてくれって…確かに2人の食欲は普通じゃないけどあまりにも私に利がありすぎる
でもそれを断り切れるほど私は強くなかった
閉じ込められていた長い期間に失ったものも多い
1人で動いてまたあんな男たちに捕まったらと思っただけで体が震えてしまう
そんな私にとってシアは暗闇に差す光のように感じた

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