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「そっち座って。紅茶は飲める?」
「ええ。大丈夫」
ソファーを進めて紅茶を準備する
2人分をテーブルに置いてから俺も向かいのソファファーに座った
「…確認したいことって…」
しばらく続いた沈黙を破る様にレティシアナが口を開いた
「ああ…レティシアナはこれからどうしたいのかと思って」
「どうしたい…ですか?」
「レティシアナには奴隷の枷が嵌められていたよな?」
「!」
明らかに顔がこわばった
「勘違いしないでくれ。責めてるわけでも送り返すつもりもないから」
「…」
「悪いけど着替えさせる時にシャノンに確認させた。奴隷の焼き印はないけど左足に酷い傷跡があったと」
「…」
レティシアナは黙ったまま自分の足元に視線を落とした
そしてレギンスの裾を上にまくった
「っ…」
そこには抉られたような酷い傷跡があった
「その容姿に目を付けられて…か?その傷はレティシアナの動きを封じるためだな?」
「はい…私は…山菜を摘みに出た先で町の貴族に目を付けられました。何度も嫁に来るようにと言われて断って…それに腹を立てられたようです」
貴族という言葉に苛立ちを覚える
「あの日…10歳くらいの男の子に道を尋ねられました。目的地までの道順を説明している途中で突然その子は魔道具を取り出して…その後からしばらく記憶は有りません。気づいたら暗い部屋に閉じ込められていました」
「…」
「3日くらいして初めて部屋の扉が開いて…その貴族が入ってきたんです。逃げなければと思ったけど、何か薬を飲まされた上に飲まず食わずだった体に力は入らなくて…でも逃げようとしたのだけは伝わって足を…」
おそらくナイフを突き刺してその状態で抉った傷だ
「痛みで意識を失って、次に目が覚めた時には奴隷のように枷を嵌められていました。結婚すると言えば外してやると…でも断り続けたら鞭で打たれて気を失って…それがずっと続いて…」
レティシアナの目から涙が零れ落ちた
「5日前、その貴族が領地に行くからと馬車に乗せられて…でもその馬車が横転して私は偶々開いたドアから外に…貴族の方たちがどうなったかは分からないけど、とにかく逃げなければと山をさまよってる時にあの男たちに…」
肩を震わせながら、それでも自分の身に起こったことを説明し続ける
「あなたに助けて貰えなければ私は…」
「そこは気にしなくてもいいよ。それよりも…戻る場所はあるってことであってる?」
「それは…」
言葉を濁したレティシアナに首を傾げる
「私に家族はいません」
「つまり一人ってことか?」
「5歳の頃に両親は他界しました。それまで3人で暮らしていたので…」
「ってことは住んでた場所には戻りたくないよなぁ…」
貴族が生き延びていたらまた狙ってくるだろうし
「レティシアナ、一人で生活してたなら魔物は倒せるのか?」
「さっき食べた魔物くらいは普通に」
サラっと言ったけどあれBランクだぞ?
ひょっとしてシャノン達より強いのか?
「でも…」
「?」
「足がこうなってしまったから…」
「ああ、そっちのが先だったな」
余りにも胸糞悪い話にすっかり忘れてた
「ちょっとだけ触れるぞ」
「え?」
「回復魔法かけるから」
戸惑っているのをスルーして傷口の側に触れる
「すごい…痛みが引いていく…?」
「俺にはこれが限界か」
「限界って…痛みがなくなったのに?」
「傷痕」
そこにはまだ酷い傷跡が残っていた
母さんならもっときれいに治せるんだろうけど…
「そんな…充分だわ。助けて貰った上にこんな…」
「助けたのは人として当然のことだし気にしなくていいって。それよりここから本題」
敢えて仕切り直すとレティシアナの表情が引き締まった
「ええ。大丈夫」
ソファーを進めて紅茶を準備する
2人分をテーブルに置いてから俺も向かいのソファファーに座った
「…確認したいことって…」
しばらく続いた沈黙を破る様にレティシアナが口を開いた
「ああ…レティシアナはこれからどうしたいのかと思って」
「どうしたい…ですか?」
「レティシアナには奴隷の枷が嵌められていたよな?」
「!」
明らかに顔がこわばった
「勘違いしないでくれ。責めてるわけでも送り返すつもりもないから」
「…」
「悪いけど着替えさせる時にシャノンに確認させた。奴隷の焼き印はないけど左足に酷い傷跡があったと」
「…」
レティシアナは黙ったまま自分の足元に視線を落とした
そしてレギンスの裾を上にまくった
「っ…」
そこには抉られたような酷い傷跡があった
「その容姿に目を付けられて…か?その傷はレティシアナの動きを封じるためだな?」
「はい…私は…山菜を摘みに出た先で町の貴族に目を付けられました。何度も嫁に来るようにと言われて断って…それに腹を立てられたようです」
貴族という言葉に苛立ちを覚える
「あの日…10歳くらいの男の子に道を尋ねられました。目的地までの道順を説明している途中で突然その子は魔道具を取り出して…その後からしばらく記憶は有りません。気づいたら暗い部屋に閉じ込められていました」
「…」
「3日くらいして初めて部屋の扉が開いて…その貴族が入ってきたんです。逃げなければと思ったけど、何か薬を飲まされた上に飲まず食わずだった体に力は入らなくて…でも逃げようとしたのだけは伝わって足を…」
おそらくナイフを突き刺してその状態で抉った傷だ
「痛みで意識を失って、次に目が覚めた時には奴隷のように枷を嵌められていました。結婚すると言えば外してやると…でも断り続けたら鞭で打たれて気を失って…それがずっと続いて…」
レティシアナの目から涙が零れ落ちた
「5日前、その貴族が領地に行くからと馬車に乗せられて…でもその馬車が横転して私は偶々開いたドアから外に…貴族の方たちがどうなったかは分からないけど、とにかく逃げなければと山をさまよってる時にあの男たちに…」
肩を震わせながら、それでも自分の身に起こったことを説明し続ける
「あなたに助けて貰えなければ私は…」
「そこは気にしなくてもいいよ。それよりも…戻る場所はあるってことであってる?」
「それは…」
言葉を濁したレティシアナに首を傾げる
「私に家族はいません」
「つまり一人ってことか?」
「5歳の頃に両親は他界しました。それまで3人で暮らしていたので…」
「ってことは住んでた場所には戻りたくないよなぁ…」
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「さっき食べた魔物くらいは普通に」
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「?」
「足がこうなってしまったから…」
「ああ、そっちのが先だったな」
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「え?」
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戸惑っているのをスルーして傷口の側に触れる
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母さんならもっときれいに治せるんだろうけど…
「そんな…充分だわ。助けて貰った上にこんな…」
「助けたのは人として当然のことだし気にしなくていいって。それよりここから本題」
敢えて仕切り直すとレティシアナの表情が引き締まった
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2024/7/26 95.静かな場所へ、97.寿命 を少し修正してます
子供達の親のお話はこちら
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この機会にご一読いただけると嬉しいです
■召喚に巻き込まれたけど元の世界に戻れないのでこの世界を楽しもうと思います
■あなた方が呪いと呼ぶそれは本当は呪いではありません
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