チートな親から生まれたのは「規格外」でした

真那月 凜

文字の大きさ
上 下
200 / 370
77.一安心

1

しおりを挟む
「目覚めたのか?」
テントに入ると彼女は体を起こしていた
こっちを見る目は怯えているようにも見える

「俺はシア。君の側行っても?」
大丈夫だろうかと問うと彼女は怯えながらも小さく頷いた

「安心していい。ここには俺の他には弟と妹のこいつしかいない。君を襲おうとしていたあの男たちは拘束して近くの街道に置いてきた。二度と君の前に現れることは無いはずだ」
そう言うと彼女はようやく警戒を解いた

「あの…」
「ん?」
「私は…」
そこまで言って言葉を詰まらせる
それでも意を決したように再び口を開いた

「私は…あの男たちに汚され…たの…でしょうか…?」
発狂したり取り乱したりしてもおかしくない状況にもかかわらず、震える声を必死で抑えている姿が痛々しい

「大丈夫。服を破られただけでその体はきれいなままだ」
「その服を着せたのは私だからね」
シャノンは何故か得意げに言う

「そう…ですか…」
そうささやいた彼女の目から涙が溢れ出す

「ありがと…ございました…」
最初に出てきたのがお礼だったことに驚いた
シャノンだったら絶対に泣き叫んでるだろうな…

「とにかく君が無事で良かった。もう少しで夕飯が出来るからそれまでここで休んでるといい」
「え?でも…」
「このままほり出したりしないって。シャノンは念のため側についてろ」
「分かった!」
「…で、例のものは?」
そう尋ねるとシャノンは首を横に振った

「ありがとな。じゃぁ、体調や気分が悪くなったようならすぐに呼べ」
大きく頷いたシャノンに任せて俺は肉を焼いてるルークの元に戻った

「どうだった?」
「一応大丈夫そうだけど…」
「けど?」
「心配ではあるな。色んな意味で」
なぜこんな場所に一人でいたのか
あの男たちが拘束したとは思えない
だとしたらあの男たちとはどこで出会ったのか

「何か気になる事でもあんの?」
「…拘束してた鎖」
「ん?ああ、シアが破壊してあったやつ?」
「ああ。あれな、手足と首に嵌めた枷から延びる鎖の先が繋がってたんだ」
「え?それって…奴隷?」
ルークの言葉に頷いて返す

「シャノンに確認させたけど奴隷の焼き印は無かったらしい。だとすると違法か…」
この世界では犯罪奴隷しか認められていない
焼き印を押され拘束されて、行く先は大抵が強制労働の場だ
でも彼女にその焼き印はない

「綺麗な人だし良からぬ輩に捕まえられた感じ?」
「ありえなくはないな」
「…こっちから根掘り葉掘り聞くのは…」
「やめとけ」
「だよね」
「本人が話たけりゃ勝手に話すだろ。こっちに対する悪意もないししばらく様子を見よう」
「了解。でも珍しいな」
「ん?」
「シアが女の人にやさしい」
「は?」
こいつは何が言いたいんだ?
いくら女嫌いっつってもあの状況の女を放置とかあり得ないだろ?

「シアにも彼女が出来たらいいなーってさ」
「…お前はそれしか考えることが無いのか?」
「そんなことないけどさ、可愛い女の子といたら楽しいじゃん」
「俺にはわからん」
「えーモテるくせに。シアに振られた子いっぱいいるじゃん」
「振るも何もろくにしゃべったことない奴に付き合ってくれって言われても気持ち悪いだろうが」
「何で?」
「好きですって、俺の何を知ってそう言ってる?」
「…顔と金と強さ?」
“ゴン”
思わず殴った

「痛いって…」
「痛くしてるからな。そっちの肉もう行けるか?」
「うぅ…大丈夫。食える」
小突いた頭を擦りながらルークはそう返してきた
俺は立ち上がってテントに向かった

しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

スキルが覚醒してパーティーに貢献していたつもりだったが、追放されてしまいました ~今度から新たに出来た仲間と頑張ります~

黒色の猫
ファンタジー
 孤児院出身の僕は10歳になり、教会でスキル授与の儀式を受けた。  僕が授かったスキルは『眠る』という、意味不明なスキルただ1つだけだった。  そんな僕でも、仲間にいれてくれた、幼馴染みたちとパーティーを組み僕たちは、冒険者になった。  それから、5年近くがたった。  5年の間に、覚醒したスキルを使ってパーティーに、貢献したつもりだったのだが、そんな僕に、仲間たちから言い渡されたのは、パーティーからの追放宣言だった。

魔境へ追放された公爵令息のチート領地開拓 〜動く屋敷でもふもふ達とスローライフ!〜

西園寺わかば🌱
ファンタジー
公爵家に生まれたエリクは転生者である。 4歳の頃、前世の記憶が戻って以降、知識無双していた彼は気づいたら不自由極まりない生活を送るようになっていた。 そんな彼はある日、追放される。 「よっし。やっと追放だ。」 自由を手に入れたぶっ飛んび少年エリクが、ドラゴンやフェンリルたちと気ままに旅先を決めるという物語。 - この話はフィクションです。 - カクヨム様でも連載しています。

半神の守護者

ぴっさま
ファンタジー
ロッドは何の力も無い少年だったが、異世界の創造神の血縁者だった。 超能力を手に入れたロッドは前世のペット、忠実な従者をお供に世界の守護者として邪神に立ち向かう。 〜概要〜 臨時パーティーにオークの群れの中に取り残されたロッドは、不思議な生き物に助けられこの世界の神と出会う。 実は神の遠い血縁者でこの世界の守護を頼まれたロッドは承諾し、通常では得られない超能力を得る。 そして魂の絆で結ばれたユニークモンスターのペット、従者のホムンクルスの少女を供にした旅が始まる。 ■注記 本作品のメインはファンタジー世界においての超能力の行使になります。 他サイトにも投稿中

悪役令息に転生したけど、静かな老後を送りたい!

えながゆうき
ファンタジー
 妹がやっていた乙女ゲームの世界に転生し、自分がゲームの中の悪役令息であり、魔王フラグ持ちであることに気がついたシリウス。しかし、乙女ゲームに興味がなかった事が仇となり、断片的にしかゲームの内容が分からない!わずかな記憶を頼りに魔王フラグをへし折って、静かな老後を送りたい!  剣と魔法のファンタジー世界で、精一杯、悪足搔きさせていただきます!

勇者パーティを追放された聖女ですが、やっと解放されてむしろ感謝します。なのにパーティの人たちが続々と私に助けを求めてくる件。

八木愛里
ファンタジー
聖女のロザリーは戦闘中でも回復魔法が使用できるが、勇者が見目麗しいソニアを新しい聖女として迎え入れた。ソニアからの入れ知恵で、勇者パーティから『役立たず』と侮辱されて、ついに追放されてしまう。 パーティの人間関係に疲れたロザリーは、ソロ冒険者になることを決意。 攻撃魔法の魔道具を求めて魔道具屋に行ったら、店主から才能を認められる。 ロザリーの実力を知らず愚かにも追放した勇者一行は、これまで攻略できたはずの中級のダンジョンでさえ失敗を繰り返し、仲間割れし破滅へ向かっていく。 一方ロザリーは上級の魔物討伐に成功したり、大魔法使いさまと協力して王女を襲ってきた魔獣を倒したり、国の英雄と呼ばれる存在になっていく。 これは真の実力者であるロザリーが、ソロ冒険者としての地位を確立していきながら、残念ながら追いかけてきた魔法使いや女剣士を「虫が良すぎるわ!」と追っ払い、入り浸っている魔道具屋の店主が実は憧れの大魔法使いさまだが、どうしても本人が気づかない話。 ※11話以降から勇者パーティの没落シーンがあります。 ※40話に鬱展開あり。苦手な方は読み飛ばし推奨します。 ※表紙はAIイラストを使用。

転生チート薬師は巻き込まれやすいのか? ~スローライフと時々騒動~ 

志位斗 茂家波
ファンタジー
異世界転生という話は聞いたことがあるが、まさかそのような事を実際に経験するとは思わなかった。 けれども、よくあるチートとかで暴れるような事よりも、自由にかつのんびりと適当に過ごしたい。 そう思っていたけれども、そうはいかないのが現実である。 ‥‥‥才能はあるのに、無駄遣いが多い、苦労人が増えやすいお話です。 「小説家になろう」でも公開中。興味があればそちらの方でもどうぞ。誤字は出来るだけ無いようにしたいですが、発見次第伝えていただければ幸いです。あと、案があればそれもある程度受け付けたいと思います。

異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜

青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ 孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。 そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。 これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。 小説家になろう様からの転載です!

異世界召喚?やっと社畜から抜け出せる!

アルテミス
ファンタジー
第13回ファンタジー大賞に応募しました。応援してもらえると嬉しいです。 ->最終選考まで残ったようですが、奨励賞止まりだったようです。応援ありがとうございました! ーーーー ヤンキーが勇者として召喚された。 社畜歴十五年のベテラン社畜の俺は、世界に巻き込まれてしまう。 巻き込まれたので女神様の加護はないし、チートもらった訳でもない。幸い召喚の担当をした公爵様が俺の生活の面倒を見てくれるらしいけどね。 そんな俺が異世界で女神様と崇められている”下級神”より上位の"創造神"から加護を与えられる話。 ほのぼのライフを目指してます。 設定も決めずに書き始めたのでブレブレです。気楽〜に読んでください。 6/20-22HOT1位、ファンタジー1位頂きました。有難うございます。

処理中です...