チートな親から生まれたのは「規格外」でした

真那月 凜

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77.一安心

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「目覚めたのか?」
テントに入ると彼女は体を起こしていた
こっちを見る目は怯えているようにも見える

「俺はシア。君の側行っても?」
大丈夫だろうかと問うと彼女は怯えながらも小さく頷いた

「安心していい。ここには俺の他には弟と妹のこいつしかいない。君を襲おうとしていたあの男たちは拘束して近くの街道に置いてきた。二度と君の前に現れることは無いはずだ」
そう言うと彼女はようやく警戒を解いた

「あの…」
「ん?」
「私は…」
そこまで言って言葉を詰まらせる
それでも意を決したように再び口を開いた

「私は…あの男たちに汚され…たの…でしょうか…?」
発狂したり取り乱したりしてもおかしくない状況にもかかわらず、震える声を必死で抑えている姿が痛々しい

「大丈夫。服を破られただけでその体はきれいなままだ」
「その服を着せたのは私だからね」
シャノンは何故か得意げに言う

「そう…ですか…」
そうささやいた彼女の目から涙が溢れ出す

「ありがと…ございました…」
最初に出てきたのがお礼だったことに驚いた
シャノンだったら絶対に泣き叫んでるだろうな…

「とにかく君が無事で良かった。もう少しで夕飯が出来るからそれまでここで休んでるといい」
「え?でも…」
「このままほり出したりしないって。シャノンは念のため側についてろ」
「分かった!」
「…で、例のものは?」
そう尋ねるとシャノンは首を横に振った

「ありがとな。じゃぁ、体調や気分が悪くなったようならすぐに呼べ」
大きく頷いたシャノンに任せて俺は肉を焼いてるルークの元に戻った

「どうだった?」
「一応大丈夫そうだけど…」
「けど?」
「心配ではあるな。色んな意味で」
なぜこんな場所に一人でいたのか
あの男たちが拘束したとは思えない
だとしたらあの男たちとはどこで出会ったのか

「何か気になる事でもあんの?」
「…拘束してた鎖」
「ん?ああ、シアが破壊してあったやつ?」
「ああ。あれな、手足と首に嵌めた枷から延びる鎖の先が繋がってたんだ」
「え?それって…奴隷?」
ルークの言葉に頷いて返す

「シャノンに確認させたけど奴隷の焼き印は無かったらしい。だとすると違法か…」
この世界では犯罪奴隷しか認められていない
焼き印を押され拘束されて、行く先は大抵が強制労働の場だ
でも彼女にその焼き印はない

「綺麗な人だし良からぬ輩に捕まえられた感じ?」
「ありえなくはないな」
「…こっちから根掘り葉掘り聞くのは…」
「やめとけ」
「だよね」
「本人が話たけりゃ勝手に話すだろ。こっちに対する悪意もないししばらく様子を見よう」
「了解。でも珍しいな」
「ん?」
「シアが女の人にやさしい」
「は?」
こいつは何が言いたいんだ?
いくら女嫌いっつってもあの状況の女を放置とかあり得ないだろ?

「シアにも彼女が出来たらいいなーってさ」
「…お前はそれしか考えることが無いのか?」
「そんなことないけどさ、可愛い女の子といたら楽しいじゃん」
「俺にはわからん」
「えーモテるくせに。シアに振られた子いっぱいいるじゃん」
「振るも何もろくにしゃべったことない奴に付き合ってくれって言われても気持ち悪いだろうが」
「何で?」
「好きですって、俺の何を知ってそう言ってる?」
「…顔と金と強さ?」
“ゴン”
思わず殴った

「痛いって…」
「痛くしてるからな。そっちの肉もう行けるか?」
「うぅ…大丈夫。食える」
小突いた頭を擦りながらルークはそう返してきた
俺は立ち上がってテントに向かった

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