194 / 370
閑話6 周りの目(side:ルーク)
1
しおりを挟む
洞窟を確認して他に使用者がいないことを確認した僕はすぐに水着に着替えて温泉に向かった
「ふぅ~」
思わず気の抜けた声を漏らして苦笑する
旅の道中で湯に浸かれる機会はまずない
そう考えればこの温泉は特別なものだ
シアが3日留まると言った瞬間僕は喜びが溢れて来るのを感じたんだ
「やっぱ癒されるなぁ…」
手足を伸ばして湯に浸かるこの時間は至福の時だ
そんなことを考えてると賑やかな声が聞こえてきた
「人?」
辺りの様子を伺っていると冒険者だろう男が3人姿を現した
少し警戒しながらすぐに動ける体制を整える
シアもシャノンも少し休憩してから湯に浸かると言ってたからここにはいない
「あれ?先客か?」
1人がそう言いながら軽く頭を下げて来る
「他に人がいるなんて珍しいな。旅人かい?」
「…」
「あぁ、悪い。俺達はこの近くの町を拠点にしてる『剛力』ってパーティーの冒険者だ。俺はリーダーのパウロ。こいつらはバートとマーキーだ」
警戒して無言のまま見返すと、パウロはギルドカードを見せてくれた
わざわざ見せて来るなんて随分なお人好しだと思う
「ルークだ。兄弟で旅をしてる途中なんだ」
「へぇ…まだ子供だろうにたくましいんだな?」
マーキーが言った
「一応冒険者でパーティーも組んでる」
「そいつはいい。同じ冒険者仲間としてよろしくな」
バートはそう言いながら服を脱ぎだした
どうやら水着は既に身に着けてきているらしい
「兄弟で旅してる冒険者と言えば『無限』なんて有名だよな」
マーキーの言葉にドキッとした
「ああ、あれは凄い。成人したてでAランクだろ?」
「それも眉唾もんじゃね?『弾丸』の関係者だから優遇されてんだろ」
「優遇って言ってもギルドの魔道具がそんな器用な真似できるわけないだろ。実力は本物だと思うぞ」
「…確かに魔道具があったか…」
理を説明できない魔道具の判断に人間が介入することは出来ない
優遇しようにも魔道具が吐き出すカードに不正が出来ないことは暗黙の了解だ
「ルークはどう思う?」
「え?」
「若い冒険者としてはやっぱ憧れるだろ?」
「…まぁ」
流石にここで俺達のことだとは言いづらい
「だよなぁ。でも兄貴のシアだったか?あいつは大変だろうな」
「え?」
「双子の弟妹の方は名前回ってきてないけど、AランクとBランクの間にはかなりの差があるだろ?」
そう問われて確かにと納得してしまった
滅茶苦茶悔しいけど…
「Bランクまではそれなりの数いるけどAランクやSランクは確かに格がちがうよな」
「そういう俺達はBランクに上がれてさえいないんだけどな」
3人は自嘲気味に笑う
「なんにしても成人したてでAランク、そのプレッシャーは凄いだろうな。注目度も半端ないし…そんな中で弟妹のフォローもするんだろ?考えただけでもぞっとするぞ」
「…」
僕は3人の言葉に何も言い返せなかった
シアの負担が大きいことは理解してるつもりだった
でも本当につもりでしかなかったのかもしれない
「シアの場合は成人したてってこともあって他のやつより注目されてるんだろうな。なんせこんな田舎の俺達ですら簡単に情報が入るんだからよ」
「そんなに…?」
「ああ。最新の情報だと、護衛をやられた商人を助けたけど、囲い込みたかったのかバカみたいな濡れ衣かぶせられそうになったってやつだな」
あの情報がもう広がってる?
それは早すぎなんじゃないか?
「その情報ってどんな風に伝わるんだ?」
「ああ、大抵は商人の情報網だな。商人は魔鳥を使って手紙のやり取りをする奴が多いから」
「魔鳥…」
「1回飛ばすのに結構金がかかるらしいけどな。情報が命だってことで商会と提携してやり取りしてるんだと」
「それでこんなに早く…」
「ん?」
「あ、いや…何でもない」
慌てて誤魔化した
「とにかく冒険者の中では一番の注目株だ。いいことも悪いことも数日中には国中に広まってるんじゃないか?」
「その点弟妹は羨ましいよな。シアの恩恵受けながら自分たちは目立たないんだからよ。そのくせ負担は全部シアにいくんだもんな」
シアの恩恵…
その言葉が僕の中で重く響いた
その時…
「ふぅ~」
思わず気の抜けた声を漏らして苦笑する
旅の道中で湯に浸かれる機会はまずない
そう考えればこの温泉は特別なものだ
シアが3日留まると言った瞬間僕は喜びが溢れて来るのを感じたんだ
「やっぱ癒されるなぁ…」
手足を伸ばして湯に浸かるこの時間は至福の時だ
そんなことを考えてると賑やかな声が聞こえてきた
「人?」
辺りの様子を伺っていると冒険者だろう男が3人姿を現した
少し警戒しながらすぐに動ける体制を整える
シアもシャノンも少し休憩してから湯に浸かると言ってたからここにはいない
「あれ?先客か?」
1人がそう言いながら軽く頭を下げて来る
「他に人がいるなんて珍しいな。旅人かい?」
「…」
「あぁ、悪い。俺達はこの近くの町を拠点にしてる『剛力』ってパーティーの冒険者だ。俺はリーダーのパウロ。こいつらはバートとマーキーだ」
警戒して無言のまま見返すと、パウロはギルドカードを見せてくれた
わざわざ見せて来るなんて随分なお人好しだと思う
「ルークだ。兄弟で旅をしてる途中なんだ」
「へぇ…まだ子供だろうにたくましいんだな?」
マーキーが言った
「一応冒険者でパーティーも組んでる」
「そいつはいい。同じ冒険者仲間としてよろしくな」
バートはそう言いながら服を脱ぎだした
どうやら水着は既に身に着けてきているらしい
「兄弟で旅してる冒険者と言えば『無限』なんて有名だよな」
マーキーの言葉にドキッとした
「ああ、あれは凄い。成人したてでAランクだろ?」
「それも眉唾もんじゃね?『弾丸』の関係者だから優遇されてんだろ」
「優遇って言ってもギルドの魔道具がそんな器用な真似できるわけないだろ。実力は本物だと思うぞ」
「…確かに魔道具があったか…」
理を説明できない魔道具の判断に人間が介入することは出来ない
優遇しようにも魔道具が吐き出すカードに不正が出来ないことは暗黙の了解だ
「ルークはどう思う?」
「え?」
「若い冒険者としてはやっぱ憧れるだろ?」
「…まぁ」
流石にここで俺達のことだとは言いづらい
「だよなぁ。でも兄貴のシアだったか?あいつは大変だろうな」
「え?」
「双子の弟妹の方は名前回ってきてないけど、AランクとBランクの間にはかなりの差があるだろ?」
そう問われて確かにと納得してしまった
滅茶苦茶悔しいけど…
「Bランクまではそれなりの数いるけどAランクやSランクは確かに格がちがうよな」
「そういう俺達はBランクに上がれてさえいないんだけどな」
3人は自嘲気味に笑う
「なんにしても成人したてでAランク、そのプレッシャーは凄いだろうな。注目度も半端ないし…そんな中で弟妹のフォローもするんだろ?考えただけでもぞっとするぞ」
「…」
僕は3人の言葉に何も言い返せなかった
シアの負担が大きいことは理解してるつもりだった
でも本当につもりでしかなかったのかもしれない
「シアの場合は成人したてってこともあって他のやつより注目されてるんだろうな。なんせこんな田舎の俺達ですら簡単に情報が入るんだからよ」
「そんなに…?」
「ああ。最新の情報だと、護衛をやられた商人を助けたけど、囲い込みたかったのかバカみたいな濡れ衣かぶせられそうになったってやつだな」
あの情報がもう広がってる?
それは早すぎなんじゃないか?
「その情報ってどんな風に伝わるんだ?」
「ああ、大抵は商人の情報網だな。商人は魔鳥を使って手紙のやり取りをする奴が多いから」
「魔鳥…」
「1回飛ばすのに結構金がかかるらしいけどな。情報が命だってことで商会と提携してやり取りしてるんだと」
「それでこんなに早く…」
「ん?」
「あ、いや…何でもない」
慌てて誤魔化した
「とにかく冒険者の中では一番の注目株だ。いいことも悪いことも数日中には国中に広まってるんじゃないか?」
「その点弟妹は羨ましいよな。シアの恩恵受けながら自分たちは目立たないんだからよ。そのくせ負担は全部シアにいくんだもんな」
シアの恩恵…
その言葉が僕の中で重く響いた
その時…
73
2024/7/26 95.静かな場所へ、97.寿命 を少し修正してます
子供達の親のお話はこちら
■ある日突然『異世界を発展させて』と頼まれました(長編/ファンタジー)
この機会にご一読いただけると嬉しいです
■召喚に巻き込まれたけど元の世界に戻れないのでこの世界を楽しもうと思います
■あなた方が呪いと呼ぶそれは本当は呪いではありません
子供達の親のお話はこちら
■ある日突然『異世界を発展させて』と頼まれました(長編/ファンタジー)
この機会にご一読いただけると嬉しいです
■召喚に巻き込まれたけど元の世界に戻れないのでこの世界を楽しもうと思います
■あなた方が呪いと呼ぶそれは本当は呪いではありません
お気に入りに追加
656
あなたにおすすめの小説

転生したら使用人の扱いでした~冷たい家族に背を向け、魔法で未来を切り拓く~
沙羅杏樹
恋愛
前世の記憶がある16歳のエリーナ・レイヴンは、貴族の家に生まれながら、家族から冷遇され使用人同然の扱いを受けて育った。しかし、彼女の中には誰も知らない秘密が眠っていた。
ある日、森で迷い、穴に落ちてしまったエリーナは、王国騎士団所属のリュシアンに救われる。彼の助けを得て、エリーナは持って生まれた魔法の才能を開花させていく。
魔法学院への入学を果たしたエリーナだが、そこで待っていたのは、クラスメイトたちの冷たい視線だった。しかし、エリーナは決して諦めない。友人たちとの絆を深め、自らの力を信じ、着実に成長していく。
そんな中、エリーナの出生の秘密が明らかになる。その事実を知った時、エリーナの中に眠っていた真の力が目覚める。
果たしてエリーナは、リュシアンや仲間たちと共に、迫り来る脅威から王国を守り抜くことができるのか。そして、自らの出生の謎を解き明かし、本当の幸せを掴むことができるのか。
転生要素は薄いかもしれません。
最後まで執筆済み。完結は保障します。
前に書いた小説を加筆修正しながらアップしています。見落としがないようにしていますが、修正されてない箇所があるかもしれません。
長編+戦闘描写を書いたのが初めてだったため、修正がおいつきません⋯⋯拙すぎてやばいところが多々あります⋯⋯。
カクヨム様にも投稿しています。

王太子に転生したけど、国王になりたくないので全力で抗ってみた
こばやん2号
ファンタジー
とある財閥の当主だった神宮寺貞光(じんぐうじさだみつ)は、急病によりこの世を去ってしまう。
気が付くと、ある国の王太子として前世の記憶を持ったまま生まれ変わってしまうのだが、前世で自由な人生に憧れを抱いていた彼は、王太子になりたくないということでいろいろと画策を開始する。
しかし、圧倒的な才能によって周囲の人からは「次期国王はこの人しかない」と思われてしまい、ますますスローライフから遠のいてしまう。
そんな彼の自由を手に入れるための戦いが今始まる……。
※この作品はアルファポリス・小説家になろう・カクヨムで同時投稿されています。
【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。
氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。
私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。
「でも、白い結婚だったのよね……」
奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。
全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。
一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。
断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

私が産まれる前に消えた父親が、隣国の皇帝陛下だなんて聞いてない
丙 あかり
ファンタジー
ハミルトン侯爵家のアリスはレノワール王国でも有数の優秀な魔法士で、王立学園卒業後には婚約者である王太子との結婚が決まっていた。
しかし、王立学園の卒業記念パーティーの日、アリスは王太子から婚約破棄を言い渡される。
王太子が寵愛する伯爵令嬢にアリスが嫌がらせをし、さらに魔法士としては禁忌である『魔法を使用した通貨偽造』という理由で。
身に覚えがないと言うアリスの言葉に王太子は耳を貸さず、国外追放を言い渡す。
翌日、アリスは実父を頼って隣国・グランディエ帝国へ出発。
パーティーでアリスを助けてくれた帝国の貴族・エリックも何故か同行することに。
祖父のハミルトン侯爵は爵位を返上して王都から姿を消した。
アリスを追い出せたと喜ぶ王太子だが、激怒した国王に吹っ飛ばされた。
「この馬鹿息子が!お前は帝国を敵にまわすつもりか!!」
一方、帝国で仰々しく迎えられて困惑するアリスは告げられるのだった。
「さあ、貴女のお父君ーー皇帝陛下のもとへお連れ致しますよ、お姫様」と。
******
不定期更新になります。

令嬢に転生してよかった!〜婚約者を取られても強く生きます。〜
三月べに
ファンタジー
令嬢に転生してよかった〜!!!
素朴な令嬢に婚約者である王子を取られたショックで学園を飛び出したが、前世の記憶を思い出す。
少女漫画や小説大好き人間だった前世。
転生先は、魔法溢れるファンタジーな世界だった。リディーは十分すぎるほど愛されて育ったことに喜ぶも、婚約破棄の事実を知った家族の反応と、貴族内の自分の立場の危うさを恐れる。
そして家出を決意。そのまま旅をしながら、冒険者になるリディーだったのだが?
【連載再開しました! 二章 冒険編。】

悪役令息に転生したけど、静かな老後を送りたい!
えながゆうき
ファンタジー
妹がやっていた乙女ゲームの世界に転生し、自分がゲームの中の悪役令息であり、魔王フラグ持ちであることに気がついたシリウス。しかし、乙女ゲームに興味がなかった事が仇となり、断片的にしかゲームの内容が分からない!わずかな記憶を頼りに魔王フラグをへし折って、静かな老後を送りたい!
剣と魔法のファンタジー世界で、精一杯、悪足搔きさせていただきます!

どーでもいいからさっさと勘当して
水
恋愛
とある侯爵貴族、三兄妹の真ん中長女のヒルディア。優秀な兄、可憐な妹に囲まれた彼女の人生はある日をきっかけに転機を迎える。
妹に婚約者?あたしの婚約者だった人?
姉だから妹の幸せを祈って身を引け?普通逆じゃないっけ。
うん、まあどーでもいいし、それならこっちも好き勝手にするわ。
※ザマアに期待しないでください
魔境へ追放された公爵令息のチート領地開拓 〜動く屋敷でもふもふ達とスローライフ!〜
西園寺わかば🌱
ファンタジー
公爵家に生まれたエリクは転生者である。
4歳の頃、前世の記憶が戻って以降、知識無双していた彼は気づいたら不自由極まりない生活を送るようになっていた。
そんな彼はある日、追放される。
「よっし。やっと追放だ。」
自由を手に入れたぶっ飛んび少年エリクが、ドラゴンやフェンリルたちと気ままに旅先を決めるという物語。
- この話はフィクションです。
- カクヨム様でも連載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる