チートな親から生まれたのは「規格外」でした

真那月 凜

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閑話6 周りの目(side:ルーク)

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洞窟を確認して他に使用者がいないことを確認した僕はすぐに水着に着替えて温泉に向かった
「ふぅ~」
思わず気の抜けた声を漏らして苦笑する
旅の道中で湯に浸かれる機会はまずない
そう考えればこの温泉は特別なものだ
シアが3日留まると言った瞬間僕は喜びが溢れて来るのを感じたんだ

「やっぱ癒されるなぁ…」
手足を伸ばして湯に浸かるこの時間は至福の時だ
そんなことを考えてると賑やかな声が聞こえてきた

「人?」
辺りの様子を伺っていると冒険者だろう男が3人姿を現した
少し警戒しながらすぐに動ける体制を整える
シアもシャノンも少し休憩してから湯に浸かると言ってたからここにはいない

「あれ?先客か?」
1人がそう言いながら軽く頭を下げて来る

「他に人がいるなんて珍しいな。旅人かい?」
「…」
「あぁ、悪い。俺達はこの近くの町を拠点にしてる『剛力』ってパーティーの冒険者だ。俺はリーダーのパウロ。こいつらはバートとマーキーだ」
警戒して無言のまま見返すと、パウロはギルドカードを見せてくれた
わざわざ見せて来るなんて随分なお人好しだと思う

「ルークだ。兄弟で旅をしてる途中なんだ」
「へぇ…まだ子供だろうにたくましいんだな?」
マーキーが言った

「一応冒険者でパーティーも組んでる」
「そいつはいい。同じ冒険者仲間としてよろしくな」
バートはそう言いながら服を脱ぎだした
どうやら水着は既に身に着けてきているらしい

「兄弟で旅してる冒険者と言えば『無限』なんて有名だよな」
マーキーの言葉にドキッとした

「ああ、あれは凄い。成人したてでAランクだろ?」
「それも眉唾もんじゃね?『弾丸』の関係者だから優遇されてんだろ」
「優遇って言ってもギルドの魔道具がそんな器用な真似できるわけないだろ。実力は本物だと思うぞ」
「…確かに魔道具があったか…」
理を説明できない魔道具の判断に人間が介入することは出来ない
優遇しようにも魔道具が吐き出すカードに不正が出来ないことは暗黙の了解だ

「ルークはどう思う?」
「え?」
「若い冒険者としてはやっぱ憧れるだろ?」
「…まぁ」
流石にここで俺達のことだとは言いづらい

「だよなぁ。でも兄貴のシアだったか?あいつは大変だろうな」
「え?」
「双子の弟妹の方は名前回ってきてないけど、AランクとBランクの間にはかなりの差があるだろ?」
そう問われて確かにと納得してしまった
滅茶苦茶悔しいけど…

「Bランクまではそれなりの数いるけどAランクやSランクは確かに格がちがうよな」
「そういう俺達はBランクに上がれてさえいないんだけどな」
3人は自嘲気味に笑う

「なんにしても成人したてでAランク、そのプレッシャーは凄いだろうな。注目度も半端ないし…そんな中で弟妹のフォローもするんだろ?考えただけでもぞっとするぞ」
「…」
僕は3人の言葉に何も言い返せなかった
シアの負担が大きいことは理解してるつもりだった
でも本当につもりでしかなかったのかもしれない

「シアの場合は成人したてってこともあって他のやつより注目されてるんだろうな。なんせこんな田舎の俺達ですら簡単に情報が入るんだからよ」
「そんなに…?」
「ああ。最新の情報だと、護衛をやられた商人を助けたけど、囲い込みたかったのかバカみたいな濡れ衣かぶせられそうになったってやつだな」
あの情報がもう広がってる?
それは早すぎなんじゃないか?

「その情報ってどんな風に伝わるんだ?」
「ああ、大抵は商人の情報網だな。商人は魔鳥を使って手紙のやり取りをする奴が多いから」
「魔鳥…」
「1回飛ばすのに結構金がかかるらしいけどな。情報が命だってことで商会と提携してやり取りしてるんだと」
「それでこんなに早く…」
「ん?」
「あ、いや…何でもない」
慌てて誤魔化した

「とにかく冒険者の中では一番の注目株だ。いいことも悪いことも数日中には国中に広まってるんじゃないか?」
「その点弟妹は羨ましいよな。シアの恩恵受けながら自分たちは目立たないんだからよ。そのくせ負担は全部シアにいくんだもんな」
シアの恩恵…
その言葉が僕の中で重く響いた
その時…

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